第12話 ロボットアーム一号機完成

 尚子はロボットアームの関節を駆動させるモーターに、亡くなった夫の髭剃りの物をセットし丁寧にドライバーでネジ止めした。アームを支える台座や関節の大まかな動きをさせるメインモーターには、使わなくなった掃除機の物が使われた。 そして配線を整理し、壊れたテレビ、ラジオ、ファンヒーター、電話機からかき集めた部品で作った制御基盤にハンダ付けした。


「よし!出来たわ」


『尚子さん、一週間の組み立て予定を、たった4日間で完成させるなんて…凄すぎです!』


「見直した?」 尚子は得意気に微笑むと左耳に着けていたAI機器を制御基盤の横に設けた定位置に置いた。


「動かしてみて…愛くん」


 “愛”は左耳用の介助機器から光ケーブルを基盤の受光部品に差し入れると言った。

『尚子さんコンセント…』


「あはっ!コンセント入れ忘れていたわね」尚子は電源プラグをコンセントに差し込むと 「OK!良いわよ」と手でサインを出した。

 

『それでは、回します。』


 フィーン…

 メインモーターが回り始めた。


『腕を上げます。』 クラッチが切り替えられ、ギアボックスにモーターの動力が入る。

 キリキリキリ…

 ギアボックスの歯車が乾いた金属音を立て、繋がれたワイヤーを巻き上げて腕がゆっくり上がる 。


『曲げてみます。』

 ウィーン!

 シェイバーのモーター音が鳴る。 右腕の二本の指の掴み動作や手首の回転も、 このモーターが動力になる。

『成功です!尚子さん、素晴らしい出来です。』


「うん…!」

 尚子の目に光る涙が浮かんだ。来る日も来る日も、こつこつと続けた地味な作業が実を結んだ瞬間だった。今度は尚子の作ったロボットアームを使用し、“愛”が更に精密なロボットアームを作ることになる。最終的に、人と同じ動きのできる精密な身体を作り上げる為である。

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