救援
私の意図を悟ったらしい。あいつとしては珍しく、いささか慌てた様子で私に迫ってきた。だが、天敵の肉迫よりも、私の入水の方が早い。さらば、スラグマン。橋の上から、私がタクやピラニアどもに貪り食われるシーンを指をくわえて眺めているがいい。
さあ、行こう。私が殺し、私が食った連中が地獄で待っている。彼らはどんな顔をして、私を迎えてくれるだろうか?私は残された力を振るい、欄干を乗り越えざまに、蝮池に飛び込もうとした。その時、
「やめろっ、コブラガール!早まってはならん!」
精悍な声が私の行動を制した。半ば無意識的に、私は声の方向に視線を向けた。橋の入り口から、こちらに向かって走ってくる者がいた。速い。野豹級の速度だ。加えて、極めて洗練された高性能機械めいた滑らかな動き。どうやら「人間ではない」らしい。だが、キメラマンでもないようだ。いったい何者なのか?もちろん、あいつに殺されかけている今の私にわかるはずもなかった。
そいつはライダースーツ風の黒い衣装を着、両腕に銀の光沢を持つ手袋をはめ、両足に同じく銀色のブーツを履いていた。そして、頭に飛蝗形のヘルメットをかぶっていた。右手に小型の銃器が握られていた。声から察して、中身は男らしい。仮に「バッタマン」と呼ぶことにしよう。
バッタマンは私の背面を駆け抜けると、あいつに銃の先端を向けた。あいつは新たな敵の出現に驚きながらも、果敢な対応を見せた。大胆にも、自らバッタマンに近づき、射程圏に捉えた瞬間、溶解液を放射した。バッタマンは機敏に横へ飛び、溶解液の直撃を回避した。液の一部が左肩に付着して、白煙を噴き上げた。
次の瞬間、バッタマンがトリガー(引金)を引いていた。銃の先端から、稲妻めいた青白い光線が迸った。光線に胴体を貫かれたかと思うと、あいつの体が半透明になり、不気味な明滅現象を繰り返した。
「……」
気がつくと、あいつの全身が炎に包まれていた。大量の肉が同時に焼け焦げる臭いが一帯を制圧し、私の嗅覚を刺激した。天敵が燃えていた。火達磨と化したあいつは、大量の火粉と苦悶の波動を撒き散らしながら、狂乱のダンスを踊っていた。
ダンスが終わる頃、あいつの体の大半が炭化していた。バッタマンは腰のホルスターに光線銃をおさめ、近づきざまに、瀕死のあいつへ強烈な蹴りを放った。大瓦解が始まった。私の視界の中で、スラグマンは絶命した。
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