血風

「おいっ、コブラの化物。帰れと云ってるのがわからねえのか。俺を怒らせるなよ。俺を怒らせると大変なことになるぞ!」

 そう喚きながら、第一博徒は真横に構えた刀の柄を右手で掴んだ。

「へえ」

 私は口辺に冷笑を浮かべつつ、

「教えてくれ、具体的に。おまえが怒るとどう大変なのだ?」

「てめえっ。俺をなめやがると承知しねえぞ!」

「おい、ちょっと待て」

 刀を抜きざまに、私に斬りつけようとしている第一博徒を第二博徒が制止した。第二は私に視線を向けると、

「おめえ、その有様はいったい何だ?全身血まみれじゃねえか!」

 ようやく気づいたらしい。私は冷笑を苦笑に変えながら、

「この屋敷の者たちは、私のことを誤解しているようなのだ」

「なんだと?どういう意味だ」

「私は用心棒の面接試験を受けに来ただけなのに、話も聞かずに、いきなり斬りかかってくるのだ。私もまだ死にたくない。我が身を守るために、やむなく剣を抜いたというわけさ」

「てめえ、殺し屋だな。タロエモンに幾らで雇われた?」

 その言葉が合図となり、六博徒は即座に荒事の支度を整えた。さすがに要所を任されているだけのことはある。こういう展開に慣れ切っているのだ。

「玄関に蜘蛛と鼈がいた筈だ。あいつらはどうした?」

「私が殺した」

「なにっ」

「殺して、食った」

 次の瞬間、私は獰猛な旋風と化して、六博徒に襲いかかった。鞘から抜き放った大蛇丸が、陽光を浴びて、十文字にきらめいていた。斬程圏に捉えざまに、私は第一博徒の首を刎ねた。頭と胴体、二つの断面から、大量の血液が湧き出し、スコールとなって周辺に降り注いだ。

 騎虎の勢いに乗って、私は第二と第三の首を連続で刎ねた。二つの生首がほぼ同時に地面に転がった。私は腰を抜かした第四の顔面を蹴りつけると、側方から斬り込んできた第五の右腕を付け根部分から断ち落とした。

 私は苦悶の絶叫を上げ続ける第五に永遠の安らぎを与え、返す刀を第六の脳天に潜り込ませた。両断された頭部から、凄い量の血飛沫が噴き出した。私が剣を抜き取ると、第六は地響きを響かせながら、その場に崩れ落ちた。

「……」

 私はただ一人生き残った第四博徒に近づくと「立て」と命じた。その通りにした第四を橋の中程まで歩かせた。私が「池に飛び込め」と命じると、第四は激しく拒絶した。再度命じたが云うことを聞かない。私は強引に第四を蹴り落とした。

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