勧誘
「もし私がおまえなら、コブラ頭のモンスターなどに好んで関わろうとは思わぬ。妖怪、おまえの狙いは何だ?何を企んでいる?」
私のいささか意地悪な質問に、あかなめは困った表情で、
「狙いと云われてもねえ……。ただ俺は、蝮の親分が、腕の立つ用心棒を探しているという噂を耳にしていたもんで、いかにも強そうな姐さんに声をかけさせてもらったんですよ。あっ。この人なら適格だ!と直感したんでさ。俺の云ってること、どっかおかしいですか?」
私は首を横に振り、
「いや、別におかしくはない」
「良かった!じゃあ、この話、真剣に考えてはもらえませんか」
「仮に契約が成立したとして、おまえに何の利がある」
「紹介料として、親分から礼金が出ます」
「蝮の親分とはどんな人物だ」
「えっ。姐さん、御存知ないのですか?かなり名の通った親分なんだけどなあ」
「知らん。私はこの地に来てから、まだ日が浅い。地元ギャングの名前や勢力分布図までは把握し切れぬ」
「ははあ。そうでしたか。姐さんの落ち着き払った態度を見ていると、なんでも知っているように思えますけどねえ」
私は再び苦笑して、
「そんなことはない。世界は広大だ。私の持っている知識などは知識の内に入らん。おまえの知っている範囲でいい。蝮について教えてくれ」
「蝮の親分はね、姐さんと同じなんですよ」
「私と同じだと?どういう意味だ?」
大体の見当はついていたが、私はあえて、あかなめにそう尋ねた。
「親分もキメラマンなんですよ」
「蛇頭人身か」
「いえそれが、俺にはよくわからんのですが、どうもミックスマシンの調子が悪くて、当初の予定とは、かなり違う形でマシンから出てきたんですよ」
「どんな形だ」
「上半身は人間、下半身は蛇体という人魚ならぬ『人蛇』に変身しちまったんですよ」
「調子が悪いどころの騒ぎではないな。その融合機は欠陥品だ。即刻破壊した方がいい」
「ですが、親分は新しい体を大層気に入っている様子で、その後、ライバル一家を片っ端から叩き潰して、この辺りのナンバーワンに伸し上がっちまったんです。一年かそこらの間にね。今の親分に対抗できるのは、蟷螂一家ぐらいでしょうねえ」
「蝮の他に蟷螂もいるのか」
「正攻法でぶつかっても、勝ち味は薄い。だから、蟷螂の親分は凄腕の殺し屋を何人か雇い入れたそうです」
「なるほど。護衛の需要が生まれたのはそういうわけか」
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