公園
私の接近を感知したエイバイオレンスが「最後の反撃」を浴びせてきた。高い強度を誇る太い尻尾が、鉄鞭のような動きで繰り出されていた。警戒に値する凶器である。人間の頭部ぐらいなら、スイカ同然に叩き割るだろう。私は尻尾攻撃を大蛇丸で防御すると、敵の背中を右足で踏みつけた。
次の瞬間、私は大蛇丸の切っ先をエイバイオレンスの眉間部分に突き刺した。エイの肉は存外柔らかく、脳髄に達するまで、力も時も要さなかった。苦悶の波動が一帯の空気を震わせていた。
確実な死を目前に控えたエイバイオレンスは、私の足の下で、狂気にとり憑かれたかのように激しく暴れた。同時に、夥しい量の血滴が周囲に放散された。
悪夢以上に悪夢的な光景を見せつけられ、さしもの腕白どもも言葉を失っていた。全員が木になっていた。地中に根をおろしたみたいに、その場に立ち尽くしていた。
「……」
エイバイオレンスの絶命を私は悟った。左眼と右眼の中間に埋まった大蛇丸を引き抜くと、肉の裂け目から、無数の血泡が溢れ出し、やがて、地獄の噴水と化して、虚空に舞い上がった。
勝った。私の勝利を祝福する盛大な血飛沫ショーが展開していた。だが、戦いがまだ終わっていないことを私は知っていた。
私が信頼する「戦士の勘」が、新たな敵の襲来を告げていた。南の空に現れた「光の塊り」が、私に向かって、急降下攻撃を仕掛けてきた。私は咄嗟に地面に伏せた。蛇類特有の円滑な動作。
「わっ」
と、叫んだのは、頼んでもいないのに私の後を追ってきた栄螺小僧であった。光の塊りが凄い速度で空間を駆け抜けて行った。気がつくと、小僧がかぶっているサザエ形の帽子が、下半分を残して、消し飛ばされていた。
悪運の持ち主と云えた。栄螺小僧の身長がもう少し高ければ、首か胴をまともに薙ぎ払われていただろう。小柄ゆえに命を拾ったのだ。
「……」
私は体勢を立て直すと、再度の襲撃に備えた。敵の正体が「巨大トビウオ」であることを私は把握していた。蛇王の眼力を持つ私である。高速の飛行体であっても、標的の外見や特徴を見逃すことはない。
第二の刺客…トビウオバイオレンスの胸鰭は、研ぎ澄まされた大型ナイフだ。これにスピードを加えると、ギロチン級の殺傷力を発揮することが可能となる。こいつは手強い。トビウオに比べれば、ウツボやエイなど、かわいいものだ。さすがの私も勝てる自信がなかった。
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