人間の真似事 2
右腕にハリスがくっつき、左側にぴったりマロイがくっついて歩いた。先頭を歩くのはマクスウェル。みんな顔が紅潮しており、興奮していることが見て取れた。
町は、上から眺めていた時より、賑わっているように見えた。
商店がいくつか建ち並ぶだけの広場。小さいながら学校もある。
町を形成するのは主に農民なので、出荷の時期は馬車が並び賑わいを見せる。
「ハーリスー!」
遠くから声をかけられる。ハリスと同年代の少女だった。この町にはまだ人も少なく、同年代の友人は貴重だ。
「その人誰?王都の人?ちょっとかっこいーね」
気づくと、その少女だけでなく、その両親や周りの人間が悪魔達を取り囲んでいた。
「うちで働いてる人よ」
「そんな人いたのねぇ」
ハリスがあっけらかんとしているからか、マロイまでもが懐いているように見えるからか、それだけで受け入れられてしまう。
何より、マロイは町の人たちから愛されていた。学校の壁に飾られた絵も、雑貨屋の壁に飾られた絵も、すべてマロイが描いたものだった。現実そのものを描いた絵は、それでもどこか夢物語のように見えた。そんな絵を町民みんなが好んで描いてもらっていた。多くの家にはマロイが描いた家族の絵が飾られている。ある意味、マロイがこの町で一番信頼されていた。
「あの3人は性格もまちまちで大変でしょう」
なんて声をかけられる。笑い声に溢れた町。
「ここが学校よ!」
とハリスが得意げに学校を紹介してくれる。一部屋だけの小さな建物だが、大切に扱われているようだった。町には、屋敷で雇っている教師が一人定住していた。
その後も、次はマロイが綺麗な井戸があるから見てほしいと腕を引く。そうすると、マクスウェルが泳ぐ魚を見せたいと、また腕を引っ張った。
一通りまわった後には、雑貨屋に連れて行かれた。店の中は、もので溢れかえっていた。ちょっとしたキャンディなどもあれば、鍋もあれば、鋤も置いてある。まさに雑貨屋だ。
「おばちゃん、この人に合う服あるかな」
ハリスが嬉々として雑貨屋のおばちゃんに話しかける。
「……こんにちは」
ぺこっとお辞儀をすると、ニカッと笑われた。
子供達が屋敷の使用人を連れて町に来ていることはすでに周知されているらしく、もう何か聞いてくる者もいなかった。
「そうだねぇ、これと、これと……これなんかどうだい」
なんて言われ、連れて行かれた一角には、10着以上の洋服が売られていた。この町には仕立て屋はないので、服を売っているのはここだけなのだろう。
「これは!?」
ハリスが服を差し出してくる。
「似合わないと思うよ?」
と言ったそばから、次の洋服が差し出され、気づくとマロイまでもが服選びに夢中になっていた。
「…………」
結局、差し出された中の1着に袖を通し、売り物の大きめの鏡に向かっておずおずと姿を映す。
「背格好がいいから、絵になるよ」
自分でも、じっ……と見てみるが、人間の感覚というものがどうにも不可解だ。そこに映るのは、どう見てもただの自分で、いいも悪いも感じるところはない。いろいろ着てはみたが、やはりよくわからずに終わってしまった。
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