オマケにしては長いエピソード 海だ! 水着だ! イカの一夜干しだ! 魔王の妹だ! その2

 軽トラで移動すること24時間。


 俺とアリサとウロボロスと亜斗夢君で運転を交代しながら――港町についた。


 マリアはスピード狂なのでハンドルを握らせていない。


 で、車内は暇だったので――。


「止めるのですー!」


「助けてー!」


「このようなモノで手練れの手乗りウサギが……ぐわーっ!」


 フロントガラスの前面に張り付いて遊んでいた手乗りウサギ達をワイパーで蹴散らす遊びが流行った。


 10人くらいが張り付いて、全員がワイパーに弾かれていくサマは壮観だったな。


 ちなみに亜斗夢君がやった場合だけ――


「新参が何やらかしてくれとんねんっ!」


「おうおう、ナマスにされる覚悟はできとんねんなっ!」


「いてもうたれコラーっ!」


「アニキっ!? 何で俺の時だけ……ぐわーーっ!」


 と、そんな感じで亜斗夢君の命の危機があったりもしたが、無事に(?)港町に到着することができたのだ。


 今回の遠征のメンバーは……。


・俺


・ソーニャ軍


・ウロボロス


・カティア


・アリサ


・マリア


・亜斗夢君


・コーネリア


 以上となる。 

 亜斗夢君についてはコーネリアとカティアが水着持参で来るということで「どんなパシリでも完遂してみせますからお願いしますっ!」との熱意によるものだ。


 そうして俺たちはまず、港町の商業ギルドに向かった。


「で、イカの一夜干しってどういうことなんだよ?」


「この前に国王さん相手に税率やら禁制品やら卸しルートやらで、無茶苦茶な要求呑ませた訳やんか?」


「そうみたいだな」


「ともかく、ウチの商会だけが無茶苦茶な優遇ってことになっとんねんな。多分やけど、ウチの商会が普通の商品扱ってるだけでも他の商会数年で潰れるんちゃうか?」


 相当に無茶な優遇を呑ませたみたいだな。

 これ以上は詳しいことは聞かないでおこうか。


「まあ、潰れたら他の商会の人員はウチの商会が吸収するんやけどな」


「だから、一夜干しってどういうことなんだ?」


「国王さんが対外的にここまでの優遇は不味いって言いだしてな。名目上で良いから……何らかの褒美という形ってことにして欲しいって話や」


「褒美?」


「英雄に対する褒章で、優遇を与えたってことにでもせーへんとって話や」


「ああ、なるほどね。魔王の圧力に屈して、自国の商会をガタガタにするような優遇を認めるのはあまりにも対外的に不味い……と」


「そういうことや。それでもウチの呑ませた優遇案は説明つかんねんけど、それでも名目があるのとないとでは大違いってことね」


 虎の威を借るキツネ……ってのが、まさにそのまま当てはまる状況だな。

 コーネリアという暴力装置を最大限に利用して、国王を恫喝して売国レベルのことをさせたらしい。


「で、俺等は何すりゃ良いの?」


「クラーケン退治やね」


「ああ、それでイカの一夜干しか。詳細は?」


「元々ここ等は海運の要やったんやけどね。最近はクラーケンの異常発生で航路としての体を為してない訳なんや」


「まあ、大体は予想通りだな」


「後は、壊血病も原因やな。長距離航路で発生する病気やねんけど、そのせいで船乗りが中々確保しにくかったんや。ダブルパンチで海運を担っている商会は破産寸前……で、王国としても困っとるっちゅう訳」


「壊血病……?」


 これはちょっと金の臭いが漂ってきたな。


「で、わざわざコーネリアちゃんにご足労願ったのは……」


「クラーケンの一掃ってところだな」


「そういう訳や! ウチ等にとってはクラーケンなんてナンボのもんじゃいっ! ってところやろ?」


「そうだな――おい、アリサ? お前らの商会の金は、すぐにどれくらい動かせる?」


「冒険王の後決裁で良いなら……金貨1万枚ってところやね。事前決裁なら5万枚っていうか、それがウチらがキャッシュで動かせる限界や」


 工事費用で貯めている金貨が俺等のところで1万枚……。


「壊血病とクラーケンさえなければ、莫大な利益を生む航路なんだろ?」


「ああ、そうなる訳やね」


「破産寸前の商会を救うにはどれくらいの金が必要だ?」


「金貨2万枚ってところやね。商会の借金は金貨10万枚程度で、それもそのまま引き受ける形にはなるけどね」


 ビンゴだ。

 そうして俺はニヤリと頷いた。


「良し、ここの海運商会――丸ごと買い取ろう。出資はウチとお前らで半々で良い」


「どういうこっちゃ?」

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