オマケにしては長いエピソード 海だ! 水着だ! イカの一夜干しだ! 魔王の妹だ! その1
さて。
小屋の設備は大体完成して、後は水路の建設を残すばかりとなった。
これで当面の目標だった衣食住のほとんどはクリアーした訳だな。
ちなみに、マルクス商会を通じての商売は、マユが「ゼニゲバ神がいなければとっくの昔に億万長者」と言うくらいに利益が出ているらしい。
砂糖と香辛料、それに真珠みたいなもんを原価ほとんどゼロで捌いてるんだから、これで儲からないはずもない。
水路は流石に大規模建設になるので、工事費用の捻出をしているんだが、ボチボチそれも貯まりそうって感じだな。
そうなると一時的に100人規模の作業員を受け入れなくちゃならんし、仮宿みたいなもんも作らんといけない。
水路ができれば畑を広げて、香辛料と砂糖と酒用のブドウ畑も広げる予定だ。
その場合はエルフ10人の人手じゃ到底足りないので、本格的に農村って感じになってくるだろう。
酒と砂糖の製造工場も必要だし……まあ、移民の受け入れについては今後の課題だな。
「みんなで旅行に行きたいのですー♪」
で、順風満帆に物事が進んでいたんだが、ソーニャがそんなことを言い出した。
どうにも俺のスマホで勝手に遊んでいる際に、海水浴場の画像を見たらしい。
「ご主人様……私も行きたいでございますわ」
「あ! ボクもっ!」
「お前らは海に行ったことないのか?」
俺の問いかけに全員がコクコクと頷いた。
ここは結構な内陸なので、それも別におかしなことではないのかもしれない。
「うーん。そうだな……とりあえず水路が完成したらお祝いにみんなでバカンスに洒落こもうか」
と、そこで全員の表情が曇った。
「えー、もう……水着もウロボロスが作ったですのにー」
「準備早いなっ!」
宴会好きだし、基本的にコイツ等はパーティーピーポーみたいなところがある。
楽しそうなイベントを見つければ準備も早いのだろう。
「とりあえず設備充実までは旅行は辞めておこうぜ……」
「えー。タツヤはケチなのですー」
と、そこで狐耳のアリサが現れた。
「話は聞かせてもらったでっ! そういうことならみんなで海やっ!」
「お? アリサじゃん?」
アリサ右手人差し指を立てて、チッチッチと舌を鳴らした。
「今の私はタダのアリサやないで」
「どういうことなんだ?」
「マルクス商会に5人しかいない番頭の一人――若き敏腕番頭なんやで!」
番頭って言ったら商会のナンバーツーだよな。
とんでもないスピード出世……っていうか、オイオイマジかよ。
「お前……マルクスさんのところにはウチの代表の交渉役としてお前を使ってただけだぞ? 内部の人間になってどうすんだよ」
「冒険王さんはマリアにメロメロやさかいな。ほとんど身内みたいなもんやん」
「いや、そりゃあそうなんだが……」
「それにあの商会はウチ等のおかげで加速度的にデカくなっとるんやな。連中としてもウチを幹部と言う形で囲い込みしときたいっちゅう訳や」
「まあ、あんまり無茶苦茶やるなよ」
こいつはガメついからな……と、俺はため息をついた。
「ああ、もちろんや! 既にキッチリ――給料はボッタくってるでっ!」
強い目にゲンコツをおとしておいた。
「痛いっ!」
「マルクスさんからボッタくるのは許さん」
「いや、ちゃんとした適正価格や。エグいくらいに利益上がっとるしな……提示された給料から2割ほどしかボッタくってへんわ」
それくらいなら許容範囲か。
まあ、実質的には商会内ではウチの担当の責任者って感じなんだろう。
「で、どうしてみんな海になるんだ?」
「そのことやねんけどな……なあなあタツヤ兄やん?」
「ん? なんだよ?」
「前に話してくれたことあるやん? ニホンシュっていうお酒に良く合う……えーっと、足が一杯生えてる化け物の……」
「イカのこと?」
地球の中世ヨーロッパよろしく、この世界でもイカは怪物っていうか魔物扱いされているんだよな。
無論、食用ではないし、もったいないことこの上無い。
「えーっと、それでなんやったかいな……一晩干すねんな?」
「一夜干しのことか? マヨネーズをつけるとクッソ美味いんだよな」
「そうや、それやっ! ってことでみんなで――イカの一夜干しを作りにいかへんか?」
※ 分割でエピソード続きます
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