第81話 そして、スローライフは続いていく

「詫び状……か」


 高ランク冒険者やら犯罪者ギルドの連中を縄でグルグル巻きにして送り返した数日後、王都から防衛大臣とかいう奴がやってきた。


 曰く、知らぬこととは言え魔王コーネリアに喧嘩を売ったのと同義と言うことで、見ているこっちが可哀想になるほどの土下座っぷりだった。


 日を改めて、国王自らが謝罪に来ると言う事だったが「そこまでしなくても……」ということで、そこで一件落着になった。


 ちなみに、簡単に許したというか……手打ちにしたのにも理由がある。

 と、いうのも同席していたアリサが商売関係の国家的便宜を要求しまくってたんだよな。

 

 その場で契約書を何十枚もガッツリ書かせていたので、本当に俺の嫁達は恐ろしい奴らばかりだ……と、戦慄したことは言うまでもないだろう。






 で――。


 宮本はコーネリアの極大魔法の直撃を受けたわけだ。



 マリア曰く「塵になりましたわ」


 ソーニャ曰く「お星さまになったのですよー」


 マユ曰く「アレで生きてたら色々おかしい」


 ……とのことだ。


 何て言うかまあ、とにかく凄かった。


 まず、コーネリアが風の魔法でミヤモトを数キロメートル吹き飛ばして、そしてコーネリアが空に飛んだんだ。


 そうしてコーネリアが巨大な龍の姿になって――ヤサイっぽい名前の異星人たちが金髪の超人になって戦う国民的少年漫画で出てきそうなビームが口から放たれた。




 で、結果として半径1キロくらいのクレーターができた訳だな。




 聞いても無いのに神の声が「農作業耐性レベル10でも直撃を受ければそこそこダメージ受けます」と解説をしてくれた。


 そこそこで済むのかよっ!? 

 と、思ったが、やはりレベル10のスキルレベルはぶっ壊れ性能らしい。  


 ちなみに、俺としては……死体を発見していないことから、生死不明の行方不明と言う事で宮本については結論をつけようかと思っている。




 ――死んでたらさすがに後味悪いしな










 あと、亜斗夢(アトム)君については料理担当と言うことでウチへの就職が決まった。


 曰く、犯罪者ギルドに所属していたら、いつか悪事をさせられそうで困っていたらしいんだよな。

 マユと幼馴染らしくて、悪い人ではないのは保証するってことで反対する者はいなかった。


 ちなみに料理長は俺と言うことで、珍しい食材なんかが手に入ったら厨房には俺が立つことになっている。で、まあそんなこんなで――



「アニキっ! この味どうでしょうっ!?」




 そんな感じでアトム君は真面目に料理をやっているんだが……これがマジで使える。


 ムキムキマッチョの賢者適性で、更に言えば強面のギャルゲー好きのロリコンというツッコミどころ満載のキャラなのだが……。



 まあ、良く言えば、気は優しくて力持ちみたいな感じだな。




 ともかく、母子家庭で料理をやっていたということで、基礎はそこそこできている。


 俺も一人暮らしが長いのと、自作ラーメン作れる程度には料理好きなので……まあ、俺のレベルではないけど、普通に料理が美味い。


 化学調味料の使い方が分かっていて、大体の料理に70点の採点はできる感じだ。


 マユも普通に料理ができるし、宴会なんかの時は俺とマユとアトム君と、そしてウロボロスとマリアでどうにでもなりそうだな。


 正直、みんなガブガブ飲むしガブガブ食べるから大変だったんだ。




 で、夜に亜斗夢君が普通に酒を飲んでいたので注意したら――



「え? 俺は20歳ッスよ?」


「どういうことだ? 高校生なんだろ?」


 例の時間がすっ飛ぶ謎の部屋を使ったのかと思っていたが、それ以前の問題だったらしい。



「いや、恥ずかしいんであんまり言いたくなんっすけど……アニキだから言っちゃいますね。俺は高校で――ダブりをとおりこしてトリプりやっちゃってんですわ」



 ――アホだ。生粋のアホがいた。


 事情を知っているマユですらも笑いを堪えていたので、俺の腹筋は崩壊寸前だった。


 ちなみに、学費についてはバイトして、生活費もプラスで家に入れていたと言うことで、本当に良い子みたいだ。


 で、俺としては亜斗夢君が来たことで……夜の負担が減るってなもんで、かなり嬉しかった。


 エルフ10人合わせて15人が毎晩代わる代わるっていうか、複数人に襲い掛かられるので大変だったんだよな。


 手乗りウサギのソーニャや狐耳のアリサ、そしてサキュバスのマリア……発情期のある連中は誰でも良い的なところがあるので、亜斗夢君でも大丈夫だろう。



 が、1週間ほど様子を見ていたが、アトム君が住んでいる離れの掘っ立て小屋には……誰も夜に仕掛けにいかなかった。



 理由をソーニャに聞いてみると――



「みんなはタツヤが好きだから一緒に寝ているのですよー?」



 と、真顔で「何言ってんだコイツ?」風に言われてしまったのだった。



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