第79話 ミヤモト! テメエは魔王も怒らせたっ!


「前回は半殺しで済ましましたが――今回は全殺しですよ?」




「……ヒっ……ヒっ……ヒィっ!」




 そこでパシィンとウロボロスの平手打ちが宮本に炸裂した。




「あぎっ!?」




 そのままパシィンパシィンと何度も何度もウロボロスは宮本に往復ビンタを食らわせ続ける。




「あぎゅっ!」




 ――パシィン




「ぶぎっ!」




 ――パシィン




「ぐぎっ!」




 ――パシィン




「じゃっじゅっ!」




 ――パシィン




「じょっ!」




 前回と同じく、宮本の両頬が見る間に膨れていき、オタフク風邪よりも遥かに酷い状態になっていく。




 あ、前もそうだったけど今回も歯が飛んできた。




 っていうか、ミヤモトはそろそろ入れ歯が必要な感じなんじゃなかろうか。




「ゆる……ゆっ……ゆるじでぐだじゃ……ぎゃっ!」




 ――パシィン




「クソ虫の命乞いは聞こえません」




 そして再度……往復ビンタが始まった。




 ――パシィン




「あびばっ!」




 ――パシィン




「ぷぎっ!」




 と、そこで――ウロボロスではなく、マリアがミヤモトの先輩っぽい奴のところに向かって行き、これまた腕一本で掲げ上げた。




「貴方が……このゴミ虫の飼い主ですか?」




「や、や、やめてっ! やめてえええっ! か、か、か、関係ないっ! 俺は関係ないからっ!」




「ふむ。関係ないのというのであれば辞めておきましょうか……無駄に全殺しする趣味は持っていないですし……」




 意外に素直な反応のマリアに対して、マユが口を開いた。




「あっ……中島……亜斗夢(アトム)さんっ! ミヤモトと良くつるんでたっ!」




「やっぱり関係者じゃありませんかっ!」




「ゆる……ゆっ……ゆるして……辞めて……ぎゃっ!」




 ――パシィン




「ゴミ虫の命乞いは聞こえません」




 そして再度……今度はマリアの往復ビンタが始まった。




 ――パシィン




「あびばっ!」




 ――パシィン




「ぷぎっ!」




「やべ……もうやべて……ぐべらっ!」




 っていうか、魔界貴族の二人組……怖えな。




 二人ともめっちゃ笑ってるし。


 やっぱり、底抜けの笑顔だが目の奥が笑っていないのでめっちゃ怖い。




 そうして、ミヤモトと亜斗夢(アトム)の二人の顔がフランケンシュタインも裸足で逃げ出すくらいに変形したところで……まさかのコーネリアが助け舟を出した。




「ウロボロス、マリア……そこらで辞めておくのじゃ」




「え? どういうことでございますか? コーネリア様?」




「確かにこやつらは外道かもしらん。しかし……先刻……我はこやつ等からお菓子を貰ったのじゃ。そこまでやればもう十分じゃろう。ここは我の顔に免じて……命だけは助けてやってくれ」




 基本的にはコーネリアは悪い奴じゃないからな。


 っていうか、餌付けがきくっていうか情が厚いと言うか何というか。




「……そういう事情であれば仕方がありませんね」




 ってことで一件落着っぽいな。


 後は縄か何かで縛って、マルケスさんを経由して王都か何かに送り返してもらおう。




 そうしてウロボロスとマリアはなんだかんだで納得しない顔をして、宮本と亜斗夢(アトム)を放り投げた。




「あひっ……ひゃっ……あわわ……」




 解放された二人はフラフラとした足取りで仲間が倒れている所に逃げようとして……。




「あっ!」




 と、そこでコーネリア以外の全員が胸の前で十字を切った。




 と、言うのも二人は本当に足元がフラフラのおぼつかない感じだったんだ。




 で、彼らの歩く方向に……野外のカマドで昨日食べた残りの寸胴鍋のカレーが、設置されていた訳で。






 ――ドンガラガッシャンっ!






 見事、カレーの中身はぶちまけられて台無しになってしまった。




 あ……コーネリアの顔から血の気が引いてる。しかも肩がワナワナと震えている。






 ――終わったなコイツ等。前回は手乗りウサギだったが、今回はケタが違うぞ?






「さて、時に宮本よ?」




 コーネリアは凄惨とも言えるような美しく――そして恐ろしい笑みを浮かべた。




「煉獄の炎に焼かれる覚悟はできておろうな?」




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