第74話 パイセン来た!これで魔王以外だったら何だって勝てる!
サイド:宮本正志(ミヤモトマサシ)
あれから――
軽トラックに飛ばされた俺は、両足と肋骨が複雑骨折でどうしようもない状態だった。
と、まあ3日3晩……飲まず食わずの中で森を這いずり回った俺は――先輩に出会ったんだ。
で、その先輩は不良(ワル)が過ぎて鑑別所に入れられたこともある高校の人だったんだが、こっちの世界に転移してきてたらしい。
鑑別所から脱走したっていう伝説(レジェンド)を作ってて、その後は行方不明ってことだったんだが……まあ、そこの謎は解けた。
俺の時もいきなり地面に魔方陣が走って、気が付けばこっちの世界だったしな。
俺は通学途中で、先輩は鑑別所の中で同じ現象に見舞われたってことだろう。
――で、先輩だ。
先輩の不良(ワル)の列伝をあげればキリがねえ。
ナンパした女を百人斬り。
避妊もしねえから子供もできまくってたって話だが、そこで先輩は独自の拳法を産み出したんだ。
――秘技:堕胎暗黒拳(マジハラパン)
もう、無茶苦茶も良いところだ。
が、これで何とかなったって言う噂がまことしやかに囁かれている辺りが、先輩のスゲエところだ。
他にも白バイ隊員とバイクで追いかけっこしてる最中、火炎瓶を投げて火達磨にしたって話もあるな。
学校の校長をJK美人局でハニートラップでハメて、退学を取り消しにさせたこともあるって話だ。
いや、同じ不良(ワル)としちゃあ、マジで憧れちまうぜ。
そう、俺等はみんな憧れていたんだ。
――中島……亜斗夢(アトム)先輩
キラキラネームの感じも本当に最高にカッコイイぜ。
で、先輩は森の中で虫みたいに這いずり回ってた俺を拾ってくれて、回復魔法をかけてくれた。
聞けば、先輩は真面目に転移者の訓練を受けて賢者として大成したらしい。
まあ、賢者として大成して……いざ、国家の為に働けとなった瞬間にトンズラをかまして犯罪者ギルドに登録したあたりが最高にカッコいいんだけどな。
いやー、俺みたいな半端モンとは違って、先輩みたいな本当の不良(ワル)は……やっぱスゲエよ。
器が違うし、次元がちげーよ。
マジで、半端ねえよ。
利用するモンはとことんまで利用して、最強になってからトンズラだもんな。
俺なんかは中途半端にしか強くなってない段階での訓練バックレだったから、その辺りは先輩はやっぱ根性が違うんだなって。
で、「俺も先輩みたいにそうすれば良かったなー」って言ったのが運のツキで、俺は先輩に……なんだか良く分からない施設に連れていかれたんだ。
聞くと、外の時間で……2日で1年しか経過しない謎空間につながる施設らしい。
年も取らないし、短期間で強くなるには最高の場所ってなもんで……俺はそこに放り込まれた。
ちなみにその空間を利用できるのは5年間がマックスで、俺は5年間のマックスをそこで過ごした。
そりゃあもう修行した。ビックリするくらい真面目に修行した。
先輩から「最低限これができないと、この世界では強者として生きていけない」という言葉と共に、習得スキルや魔法のリストを渡されたんだから、そりゃあ俺も真剣になる。
だって、真面目にやらねーと、後で絶対に先輩に殺されるんだもんな。
――先輩の拷問レジェンドの数々は思い出しただけで身の毛もよだつもんだ
俺だって生きたままで目玉を焼かれたり、爪の中にアイスピックをねじ込まれたりはしたくない。
そして――
俺は今――特殊任務を受けて森の中を歩いている訳だ。
聞けば、王様の指示であの憎い……手乗りウサギの一味が潜伏している小屋に襲撃を仕掛けると言うことだ。
「へへ、手乗りウサギ共――俺はリニューアルして帰ってきたぜっ!」
そうして先輩がニヤリと笑って俺の肩をポンと叩いた。
「ああ、今のお前なら手乗りウサギとタイマンやっても負けはしない。そして俺もまた手乗りウサギ相手なら2匹までなら何とかなる」
俺と先輩、そして集められた剣聖や賢者たち。
国一つの決戦戦力として扱われるような大げさな戦力だ。
「そっすよね先輩? 他の連中も凄腕揃いばかりだし、今の俺たちなら何にでも勝てますよね?」
「ああ、ミヤモト。今の俺たちなら――」
そうして先輩は胸を張って誇らしげにこう言った。
「――魔王以外になら何だって勝てるっ!」
俺もまたそんな先輩を見て誇らしげに頷いた。
俺は先輩に一生ついていきます!
俺たちのヒーローである最強のワル……中島……亜斗夢アトム先輩……っ!
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