第67話 錬金術なのです
「すまんっ! 本当にスマンっ!」
カレーを食いに来たコーネリアが気まずそうに俺たちに頭を下げた。
「おいおい、どういうことなんだよ?」
「手乗りウサギ達の乱獲を……少しで良いので控えさせてくれんか?」
「っつーと?」
「前々から伝えていたとおり、帰らずの森は高ランクモンスターの住処じゃ」
「ああ、そりゃあそうだろうな」
「言い換えるのであれば、素材資源の宝庫でもあるじゃ」
「まあ、アホみたいな金額で……狩猟してきた魔物の毛皮やら骨やらが売れるみたいだからな」
「そうして、その素材資源こそが……我の小遣いなんじゃよなァ……」
「この小屋の生活の生命線でもあるよな」
まあ、酒さえ頼まなければどうとでもなるんだけど……この世界の酒は不味いんだよな。
最近ではみんなの舌が肥えてしまって、エルフやドワーフの酒を受け付けなくなってきている。
――本当に悪い傾向だ。
俺の知り合いにも100円回転寿司が大好きだったのに、宝くじが当たった瞬間に高級回転寿司しか行かなくなった家族がいた。
まあ、回らないお寿司屋さんじゃないだけ……可愛いっちゃあ可愛いんだけどさ。
ともかく、ウチの女連中がグルメになりつつあるのは間違いない。
「それで、どういうことなんだよコーネリア?」
「魔獣は大体は1年~2年で世代交代するのじゃ。しかし、こうにも一気に狩られると……」
「魔獣という名の……資源の再生産ができなくなるってことだよな?」
「うむ。このままでは数年後に絶滅種が出るのも明白じゃ」
「しかし、そうなると困ったな」
テンサイからの砂糖の売却で利益は上がっている。
それはもう上がりに上がっている。
普通に生活する分にはそれだけで全く問題が無いんだが――
――ゼニゲバ神のレートがエグい
砂糖だけでは酒はおろか、調味料の調達もできないだろう。
なんせ、レートが金貨一枚……つまりはこの世界の価値で1万円で、日本製品の価値に換算すると1円だからな。
100万円で100円なので、実際問題としてあまりにもエゲつない。
「まあ、とりあえず分かったよコーネリア」
「うむ。獲るなとは言わんが……控えるようにお願いしておくぞ」
そうして帰宅するコーネリアを見送りながら、俺は「さあ、どうしよう……」と頭を悩ませることになったのだ。
「タツヤさん? どうしたのスマホなんかイジって? 普段はこの時間は昼寝だよね?」
経理途中のマユが、昼下がりの農作業の休憩中でソファーに寝転がっていた俺にそう問いかけてきた。
「ちょっと色々あってな」
「ああ、金欠の話?」
「で、ちょっと考えてるんだが――錬金術をやろうと思う」
「ん? 錬金術? 地球でも……この世界でもマユツバって否定された学問じゃん? 化学の発展の礎としては有益だったかもだけど、実際に金なんて作れないよ?」
そうして俺はスマホの検索画面をマユに見せた。
するとマユは画面を見て、小首を傾げて……そして俺の意図を察してニヤリと笑った。
「あー。なるほど……これは確かに錬金術だね」
「だろ?」
そうして俺は小屋を拡張中のドワーフのカティアの所に向かっていったのだった。
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