第66話 女子高生はやっぱり全然嫌じゃないです

 サイド:タツヤ




 さて、今回の戦果だ。


・村人からの謝礼金 金貨200枚


・山賊団の金  金貨2000枚


・山賊団の財宝 金貨7000枚



 うん、上等な大吟醸の日本酒を一本取り寄せできるかどうかってところだな。


 ってか、ダメだな。何でもかんでも酒換算になってしまっている。


 こんなことしているから常に金欠生活なんだよ……。





 ちなみに、アリサが村人から無茶にタカろうとしていたので、強い目にゲンコツを落としておいた。


 村人たちは冒険者ギルドへの報酬として前金で金貨400枚を渡していて、成功報酬として残り400枚を準備していたらしい。


 アリサはこの400枚を根こそぎ持っていこうとしたので「せめて折半にしてやれよ……」ということで、こうなった訳だな。




 で、今回は酒の取り寄せはせずに調味料の各種補充ということにした。


 最近はやたらコーネリアがやってくるので、カレー粉を多い目に補充した感じだな。




 それで――








「ていうか、どうしてお前はそんなに計算早いんだよ」


 農作物やらの収支計算書を、暗算で作成しているマユを見ながら、俺は呆れ顔でそう呟いた。


「ソロバンやってたから……あと、商業高校だから簡単な簿記ならできるよ」


「ちなみに暗算ってどれくらいできるんだ?」


「え? ソロバン無しだと……4桁×4桁くらいまでの掛け算なら頭の中だけで……なんとかできるけど?」


 あー……。

 これ、ガチな奴だ。


 たまにソロバンやってる奴でこういう……超人級の暗算能力持ってる奴いるよな。


 しかも、その上で商業高校で経理能力もある。


「なあ、マユ?」


 そうして俺はマユの肩をポンと叩いた。


「え? 何?」


「お前……経理責任者に採用っ!」


 こうして、俺たちの経理はそれまでに比べて、異次元レベルにマシなものになったのだった。








 で、その日の夜――。


 経理責任者が決定したお祝いってことで、銭ゲバ神経由で安いウイスキーを3本ほど取り寄せた。


 後、炭酸水だな。

 節約ってことでハイボールパーティーだ。




 マユは自称20歳と言うことだが酒は飲んだことがないらしかった。

 で、試しに飲ませたら――酒豪だった。



 両親が九州出身ってことで、遺伝子的にアカン系の酒遺伝子を持っているらしい。

 そうして例の如くにみんながリビングで酔いつぶれたんだ。


 で、久しぶりにゆっくり一人で眠れるなとベッドに潜り込むと――



 ――うん。知ってた。



 マユが先にベッドにもぐりこんでいることは、薄々とは知ってた。

 でも、まさか本当にいるとは……。


「あ、タツヤしゃん……」


 お?

 どうやら、いかに酒豪遺伝子を持っていたとしても、さすがに初めての酒でロレツが回っていないようだな。


「どうしてお前がベッドにいるんだよ?」


「しょの……あの……あらし……わらし……タツヤしゃんが……」


 そうしてマユは俺の背中に両手を回してきた。


 まあ、酔った勢いでの告白ってところか。


「だから俺は女子高生は無理だって」


「あのね……わらし……20しゃいだよ?」


「いや、どう見ても見た目16歳なんだが?」


「あのね? そのね? 魔法の修行で……年をとらにゃい便利な空間があるのれす」


「ふむ?」


「外の時間れ……2日で1年。そこでわらしは4年修行したのれす。見た目の年はとらにゃいけろ……キッチリ20歳なんれす」


 えーっと……。

 確か、ヤサイっぽい名前の星人達が掌から気を放出する系の……超人バトルを繰り広げる……国民的超人気漫画にそんな効果のある部屋があったよな?


 短期間で強くなるために便利な設定で、外と中での時間の流れが違う感じの部屋だ。


 外での1日が中では1年とかで、ガッツリ修行できるみたいな……。

 

 ってか、おいおいマジかよ……。


「ら、らから、わらしは……20しゃいらよ?」


 なら、問題ないな。

 いや、でもなんか物凄い無理やり感が……。20歳って言っても……見た目16歳だもんな……。


「いや、でも……やっぱソレはな?」


「うぅ……タツヤしゃん……わらしのこと……嫌にゃの?」


 と、そこで俺は深くため息をついた。

 そうして、素直な気持ちでこう言ったんだ。



「全然嫌じゃないです」



 ――こうして、俺たちの家族がまた一人増えることになったのだった。

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