第65話 女子高校生とは不味いです

 サイド:鮎川マユ




「おじさん……強い……っ!」




 あまりにも圧倒的なワンサイドゲームだった。


 漫画とかで見るような中国拳法の達人の老師と……幼稚園児が闘ったらこんな感じになるんだろうな的な。




 ――っていうか……何なのこのオジサン?




・日本から取り寄せできるスキル持ってる


・農作物がマジでヤバい


・ヤバいくらい強い


・良い人


・周りの連中もヤバい




 何ていうかスペックが……おかしい。


 と、そこで私は……オジサンを見る目がちょっとずつ変わり始めてしまっていることに気が付いた。




 オジサンの顔は可もなく不可もなく。


 でも、ちょっとだけカッコ良く見えたり……いや、雰囲気の話だよ?


 そんでもって、29歳って話だから、そもそもオジサンってのもおかしくない?


 とか……そんなことを考え始めたりしちゃったりしてさ。




 ――これからはタツヤさんって呼ぼうかな。




 ってか……この世界に来てから生きるのに必死で、賢者様に拾われてからは周りに若い男の人もいなくって。


 で、そんな時に命を助けてくれた妙にスペックの高い……優しい人がいたら……そりゃあ……まあ……クラっとくるのも……。




 ――あ、これアカン奴や




 と、そこで私は自分の気持ちに気づいてしまった。


 うーん……今までは身持ちの固さで有名で、鉄壁のマユとか言われてたんだけどな。


 っていうか、男の人に興味を持てなかったってのが今まで誰とも付き合ったことが無い理由なんだけどね。


 よりによって……29歳のオジサンか……。

 いや、オジサンじゃなくてギリギリお兄さんで通じる年齢だけどさ。


 と、そこでタツヤさんは私の所まで歩いてきて、ポンと肩を叩いてきた。


「待て……マユ。考え直せ」


「……え?」


「俺の考え違いだったらスマンが……俺は女子高生は無理だぞ?」


「え? 考えてること……分かるの?」


「今さっき……スキル:虫の報せレベル10とか言うのが授けられると同時に発動したんだ」


「……そうなんだ」


 何でもお見通しってことみたいだね。


 っていうか、何でもアリなんだねこの人。


「ともかく、女子高生は無理なんだ」


「どうして女子高生は無理なの?」


「20歳未満は難しいんだ」


「……え? いや、ソーニャさんとか……下手すれば見た目中学生……」


「今までは種族の壁ということで……お約束展開の年齢の理屈はついたんだ。だが、お前は違う……お前は人間で、正真正銘の女子高生だ。それは不味い」


 ああ、そういうことか。

 種族の壁で20歳以上なので問題ないとかそういうコトね。

 まあ、なんだか良く分からないけど、とりあえず20歳未満だと色々と難しいってことらしいね。


「別に異世界なんだから、そんなこと気にしなくて良いと思うんだけど……」


「これは大変な問題なんだ」


「大変な問題?」


「ああ、俺とお前が良くても……社会的に、漫画的に……いや、もっと言うならスクウェア・エニックス的に不味い」


 な、何だか良くわからないけど物凄い説得力だ。

 それに、タツヤさんも物凄く深刻な表情をしているので、ここは頷いておくしかなさそうだね。


「でもね、あの……タツヤさん?」


「なんだ?」


 そこで私は今まで隠していた衝撃の事実を伝えた。


「私――20歳だよ? 見た目は変わらずに16歳のままだけどさ」


 そこでタツヤさんの耳がピクリと動いた。


「……どういうことだ?」





・メタ的な会話意味分からない人に説明

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