第59話 頭がゆるゆるなので誰も計算できません
さて、経理がぐちゃぐちゃだ。
俺は基本的に農業ばっかりやってて、その辺りはウロボロスとマリアに任せていた。
俺の中ではソーニャ以外はそれなりの教養があるということで安心してたんだが……。
ってことで、ウロボロスの数学の実力をテストしてみたんだ。
「ウロボロス? つまりはここをエックスと置いて……」
「せ、せ、せっく……そういう話は夜まで……ご勘弁願えないでしょうかご主人様」
「ウロボロス……お前ですらもそのレベルなのか……」
えーっと、つまりだな。
ウロボロスは3桁の足し算と引き算、そして2桁の掛け算しかできないことが判明した。
無論、暗算ではなく筆算だ。
マリアも同レベルでソーニャに至っては両手の指の本数以上の計算が全てできない。
っていうか、マリアは冒険者時代にSランク級の優秀な連中に教えてもらって、ウロボロスはガチのエリートコースで教養はあるらしい。
そうなのだ。
このレベルでトップクラスの教養は本当にあるらしい。
ちなみにアリサもどんぶり勘定だ。掛け算は2桁以上は無理とのことだ。
――っていうことで、野菜の在庫と金貨の枚数が全く合わない。
一応は取引履歴をつけさせたはいたんだが、そこからして無茶苦茶だ。
「さて、困った」
これは本当に困ったな。
まともに計算もできないのに経理なんてできるわけもない。
アリサ曰く、本職の商人連中はまた違う方法で帳簿をつけているので、俺の所よりは大分マシという話だが……。それでも多分、俺の感覚からすると無茶苦茶なのは想像に難くない。
「うふふー、お金なんてどうでも良いじゃないですかー♪」
まあ、お前はな。
逆に言うとソーニャが急にインテリになっても困る。
しかし、ウロボロスとマリアみたいな真面目組がそのレベルでは本当に困る。
頭を悩ませていたその時――。
「侵入者なのですー♪」
害獣対策に畑の警護を任せていた手乗りウサギが小屋の中にバタバタと走ってきた。
さて、侵入者である。
小柄な黒髪で見た目は16歳か17歳。
魔術師のマントに魔術師の杖。
そして、マントを脱げばミニスカのブレザーの学生服……。
っていうか、俺と一緒に異世界転移してきた高校生グループの一人だな。
基本的にはヤンキー漫画から出てきたみたいな金髪とかギャルとかそんな連中ばっかりの中、黒髪のこの子は妙に印象が残っている。目力があって、瞳がとても綺麗な子だ。
確かマユとか言われてた女の子だよな。
見た感じ、ヒエラルキーではかなり下の方の女の子だったはずだ。
それと、この子だけは何故だか俺には同情的だったってのも印象に残っている理由ではある。
で、この子なんだが畑の近くで血だらけの泥だらけで倒れていたんだよな。
マリアに命じて回復魔法とタオルでの湯あみをさせて綺麗になったんだが、よほどの衰弱のせいなのか数時間も目を覚まさない、
とりあえず命に別状もないということなので、リビングの脇で寝かして俺たちは晩飯を食ってたんだが……。
グウーーーっ!
という、分かりやすい腹の虫と共にマユとかいう少女は目を覚ました。
「あ……おじさん……」
寝ぼけているらしく、周囲をぼんやりと眺めて、そして――
「ヒっ! 手乗りウサギっ!」
それだけ言うと、再度……彼女は気絶してしまったのだった。
っていうか、やっぱり手乗りウサギって普通の感覚からすると……とんでもないみたいだな。
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