第48話 戦闘はいつもアッサリです。強いので。
そこで空気を読んでか読まずか、今までこちらの様子を伺っていたカイザードラゴンが大きく息を吸い込んだ。
「――ドラゴンブレス来ますっ! タツヤ様っ!」
俺はとりあえずクワを構える。
先制攻撃して出鼻を挫くか? あるいはドラゴンブレスを避けるか?
そう思っていると、神の声が頭に響いた。
【スキル:農作業耐性レベル10が発動しました】
農作業耐性? 一体何のことだ?
そうしてドラゴンブレスが吐き出されて――
――俺達の前方に巨大なバリアーっぽいのが出現した。
ドラゴンの炎はバリアーに完全にシャットアウトされて、こちらには熱風すらこない。
おいおい、これが農作業耐性ってことか?
そこで再度、俺の頭に神の声が響いた。
【農作業中の夏の強い日差しにも耐えれるスキルです】
日差しってレベルじゃねーぞっ!
完全にロボットアニメとかに出て着そうな熱バリアーになってんぞっ!?
っていうか、神の声って質問にも答えてくれることがあるんだな。
その時、逃げていた手乗りウサギ達がこちらに戻ってきて口々に騒ぎ始めた。
「凄いやないかいっ! ヤッコさんの攻撃でこっち無傷やないかいっ!」
「押せ押せムードやないかいっ!」
「いてもうたれやっ! いてもうたれやっ! おうおうおう! いてもうたれやっ!」
「今夜はカイザードラゴン鍋じゃこらっ!」
「もしかせんでもオラオラじゃコラッ!」
現金な奴らだな……。こっちの優勢を悟った瞬間に戻ってきて攻撃モードのスイッチをオンにしやがった。
カイザードラゴンもこちらの無傷で狼狽しているようで隙だらけだ。
その時、マリアが叫んだ。
「――今です! タツヤ様っ! ドラゴンの頭を――耕すチャンスですっ!」
「言われなくてもっ!」
っていうか、ドラゴンの頭を耕すって言う字面……やっぱり凄いな。
そうして俺はカイザードラゴンに飛び掛かった。
相手も無抵抗って訳じゃなく、前足の爪で応戦してきたが――。
【スキル:農作業レベル10が発動しました】
宙に浮かびながら俺は空気を蹴って、空中でジャンプの軌道を修正する。
えーっと……。
体が勝手に動いたからアレなんだけど、俺、今……空気を蹴ったよな。
それで、ジャンプ途中に無理やりに軌道修正したよな。
――スキルレベル10ってどんだけデタラメなんだよ。もう意味分かんねーよ。
そりゃあ、コーネリアも冒険王も俺を見た瞬間に一目置くわ。
と、まあ、とりあえず俺は何度か空気を蹴って、ドラゴンの頭に到達した。
「往生しやがれっ!」
気合の咆哮と共にカイザードラゴンの頭にクワを突き立てた。
「グガアアアア――――」
暴力的とも言えるような、大地を震撼させる断末魔をドラゴンが発した。
ドシ――ィンッ!
続けざま、重低音と共に地面を揺らして、ドラゴンが倒れた。
そうしてピクピクとドラゴンが痙攣してるところで、手乗りウサギ達が一斉に駆け出し始めた。
「ナマスに刻んだれやコラっ!」
「トドメッ! トドメッ! さっさとトドメッ!」
「いてもうたれやっ! いてもうたれやっ! おうおうおう! いてもうたれやっ!」
「耳の中から入って脳みそ掻きだしたれやコラっ!」
「もしかせんでもオラオラじゃコラッ!」
本当にコイツ等って調子良いよな……。
っていうか、戦闘能力が高くてズル賢くて、スイッチ入ったら馬鹿みたいに攻撃的。
うん、こんなの絶対に敵に回したくない。
と、俺はドラゴンの耳と鼻の穴の中に嬉々として突撃していく手乗りウサギ達を見て、家に帰ったらニンジン畑を拡張しようと思ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます