第46話 みんな頭もお股もゆるいけど、根はいい子たちなのですよー♪
俺達は生活物資と服飾品を買い込んで、昼過ぎに家へと戻った。
家につくと、すぐにアリサは狩猟を終えた手乗りウサギ達と一緒に川に向かった。
解体は血がたくさん出るので、作業過程の最初は川が良いんだってさ。
そんでもって家に入ると、そこは無人だった。
普段はウロボロスはほとんど家で家事をしているし、ソーニャは定位置のソファーでダラダラしている。
けれど、今日は誰もいない。
マリアは大体の場合は俺かウロボロスの補助をしているが……今はウロボロスと一緒なのかな?
で、何らかの作業を小屋周辺でやっているエルフ達とカティアの姿も見当たらない。
「どうして誰もいないんだ?」
と、小首をかしげていたところでカティアが家に入ってきた。
「みんなはどこに行ったんだ?」
「え? 教えないよ?」
本当に何なんだよ。
俺は若干の苛立ちを覚える。
「教えてくれよ。何なんだよお前ら? 昨日からちょっと変だぞ?」
「みんながどこにいるかって、それはお兄ちゃんとは関係のないことだろうに。教える義理はないね」
何なんだよその言いぐさは……。
俺は苛立ちを抑えるようにリビングのソファーで、ふて寝を開始した。
そして夕暮れ……いや、もう夜か。
「ちょっと寝すぎちまったな」
俺が上半身を起こしたところで、一人の手乗りウサギが部屋に入ってきた。
「あのですね? あのですね?」
「どうしたんだよ」
「こっちに来るですよー」
ぴょんぴょんとスキップしながら手乗りウサギは俺を外へと誘導した。
そして、カティアとエルフ達が作っていた、将来的には酒蔵になる建築途中の建物の前に到着した。
確か、内装と仕上げが終わってないだけで、今は中に何もないスケルトン状態になってたはずだな。
で、中に入ると――。
パンパンと音が鳴った。
「「誕生日おめでとうーっ!」」
建物の中には豪勢な料理が所狭しと並べられていて、内装もパーティー仕様になっている。
さっきの爆発は、手乗りウサギ達によるクラッカー代わりの超小規模爆発魔法だ。
「お前ら……?」
「今日はタツヤの誕生日なのですよー」
異世界ってことで、そんなことはとっくに忘れていた。
が、あっちとこっちの暦の関係を確認するためにマリアにそんな話をしたことが……確かにある。
おいおい、何なんだよコイツ等……このために昨日から色々とやってたのかよ?
この年になると誕生日なんて全然嬉しくないはずのに……心臓にあったかい何かが広がってくるじゃねえか。
いかん、ちょっと泣きそうになってきた。
「さあ、今日はお祝いなのですー! キャロットケーキなのですー」
「タツヤ様の大好きな七面鳥の照り焼きを用意しておりますよ」
ウロボロスがペコリと頭を下げた。
「私どもは料理の専門家ではないので恐縮なのでございますが……」
そう言って、マリアはワインの注がれたグラスを俺に差し出してきた。
「昨日からボクとエルフ達は内装工事で大変だったんだ」
「ああ、みんなありがとうな」
「ふふふー、それでプレゼントがあるんですよー」
「ん? プレゼント?」
「今日はベロベロになるまで宴会なのですー」
「ああ、そうなるだろうな」
「だから、潰れる前に色々やるですよー」
「えーっと……どういうこと?」
そこでマリアがクスリと笑った。
「プレゼントは……私達全員ですよ」
「今日は寝かさないのですー」
最後にウロボロスがメイド服の上着を脱ぎ始めた。
「つまりは、開始は今からで……終了は日の出となります。各自……酒と食事の補給は各々の判断で……ということですね」
次々とみんなが下着姿になっていき、俺は肩をすくめる。
「やれやれ、そいつはとんだプレゼントだな。少しは俺を休ませてくれよな」
俺が深くため息をつくと、全員が俺を上目遣いで見てきた。
そして、俺は言葉で質問される前に――先手を打ってこう言った。
「いや、全然嫌じゃないです」
と、そんなこんなで俺の誕生日は大変なことになったのだった。
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