第37話 ハイパー懺悔タイムだぜ! てめえ、ちょっせえからアヌビス神に土下座してこい!
「いや、それはちょっと待て」
「仰せのままに」
納得のいかない表情で引いたウロボロス。っていうか流石は魔界の貴族だな。普通に殺すと言う選択肢が出てくるらしい。
顔もマジだったし、恐らく俺がゴーサインを出せば……。
と、それはさておき宮本がキョトンとした表情を作った。
「え? ひょっとして嫌なの?」
「ええ、お断り差し上げます」
「え? どうして? こんなオッサンなんかより絶対俺の方が良いよね? 若いしイケメンだし勇者だしさ」
とりあえずイケメンってのは否定しておくぞ宮本。
若いころって不良ってだけで一部女子から妙にモテたりするから勘違いしてんだろうな。
ちなみにそういう連中は社会に出てからは、まともな女には一切相手されなくなるんだけどさ。
「良いじゃん良いじゃん。ちょっとコーヒー飲むだけだよ?」
そうして宮本はウロボロスの右手を掴んだ。
こいつ……テントの中に引きずり込むつもりか?
っていうか、いかん! ウロボロスのコメカミに青筋が何本も立っているっ!
一応止めておいたがマジで殺っちゃうかもしれんなこれは。
と、その時――。
「うふふー大漁なのですーっ♪」
ソーニャと手乗りウサギ達がドデカいイノシシを引きずってこちらにやってきた。
そして宮本はソーニャを見るや否や――。
「……こんなに可愛い子がこの世に存在して良いのか?」
言葉と同時にソーニャに向けて全力ダッシュを始めた。
そしてソーニャに開口一番こう言った。
「俺は勇者だ! 単刀直入に言うっ! 俺の女になれっ! 金も名誉も思いのままだっ!」
いやいや宮本……口説くにしても言葉ってもんがあるだろう。
そうしてソーニャは「ふふ」と笑って蹴りを一閃。
「うふふーこの人とっても気持ち悪いですー♪」
「ぷべらっ!」
物凄い勢いで宮本は吹っ飛んでいき、洞窟の壁に激突。
っていうか、壁にめっちゃメリ込んでいる。
「気持ち悪い人を蹴ったので足が汚れてしまいましたー♪ 後でちゃんと洗うのですー♪」
口調はほんわかだが、顔には猛烈な不快感が浮かんでいる。
まあ、いきなり金髪歯抜けの馬鹿っぽい奴に口説かれて、本気で気持ち悪かったんだな。心中お察しする感じではあるが……。
そして壁にメリ込んでピクピクする宮本に、ウロボロスが歩み寄る。
「……私のことは良いですが、先ほどご主人様をゴミだと愚弄しましたよね?」
宮本の胸倉を掴んで、力任せにウロボロスは壁から引きはがした。
そうして右手一本で宮本を宙吊りにして言葉を続けた。
「身辺整理は終わっていますか? 日頃から遺言書は書いていますか? それらの作業を終了していない場合は残念ですが、お諦め下さい」
どうやらウロボロス的にはソーニャの一撃で、俺のゴーサインが出た状態と認識しているらしい。
「ただし――」
そうしてウロボロスは底抜けの笑顔で冷徹に笑った。
「簡潔に二十字以内でまとめるなら、最後の言葉くらいは認めましょう」
「……」
しかし、ウロボロスの言葉に宮本は反応しない。
どうやらソーニャの一撃で気絶しているらしい。
「自分のことを最強勇者だと言っておきながら……ソーニャの一撃で気絶ですって?」
そこでパシィンとウロボロスの平手打ちが宮本に炸裂した。
「あぎっ!?」
平手打ちが気付けになったようで、宮本は目を覚まして呆然とした表情を浮かべた。
「全く最強には程遠いでございます。ご主人様やコーネリア様はおろか、私ですらも貴方を抹殺するのに五秒もあれば十分でございます」
そのままパシィンパシィンと何度も何度もウロボロスは宮本に往復ビンタを食らわせ続ける。
「あぎゅっ!」
――パシィン
「ぶぎっ!」
――パシィン
「ぐぎっ!」
――パシィン
「じゃっじゅっ!」
――パシィン
「じょっ!」
宮本の両頬が見る間に膨れていき、オタフク風邪よりも遥かに酷い状態になっていく。
おいおい、漫画表現みたいな感じになってんじゃねーか。
あ、歯飛んできた。
汚ねえなとばかりに俺は顔をそらして宮本の歯を避ける。
「ゆる……ゆっ……ゆるじでぐだじゃ……ぎゃっ!」
――パシィン
「クソ虫の命乞いは聞こえません」
そして再度……往復ビンタが始まった。
――パシィン
「あびばっ!」
――パシィン
「ぷぎっ!」
「ご主人様を侮辱したのはこの口ですか?」
「ぶぐらっ!」
「地獄の業火に焼かれるべきはこの口ですか?」
「むげらっ!」
「冥界でアヌビス神に今すぐ懺悔すべきはこの口ですか?」
「やべ……もうやべて……ぐべらっ!」
あ、今度は右ストレートが鼻っ柱に入った。
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