第34話 おや…? ボク娘ドワーフの様子が・・・?
鉱山の洞窟。
薄暗くひんやりした岩肌の道を行く。
手乗りウサギ達は夜目が効くようで、ルートを先導してくれるので使い勝手が非常に良い。
「アダマンタイト鉱石のモンスター?」
「そう。それがボク達の目標」
「それをやっつけて鉱石を採取するのか?」
フルフルとカティアは首を左右に振った。
「ボク達は特殊鉱石は掘るのではなく譲ってもらうんだ。アダマンタイトは希少で普通に鉱山を掘っても簡単に見つかるものじゃないから」
「でも、相手もタダで鉱石を分けてくれるって訳じゃないんだろう?」
「鉱石のモンスターは魔法付与された金属製品を体内に取り込む習性がある」
そういうとカティアはエルフの集落製と思われる剣を、背嚢から取り出した。
「これと交換に鉱石を譲ってもらうんだ」
「武器を取り込むって……どうしてそんなことをするんだ?」
「魔法剣に魔核に付与された魔法エネルギーを取り込む。モンスター側の用途は動力エネルギーだったり、あるいは純粋な自己の強化になったりするね」
「ふーん」
「まあ、古来からのそういう対価性の契約になっているんだよ」
魔物にも色々とあるんだな。
「それはさておき、ボチボチ夕暮れ……だな」
と、そんなこんなで俺達は洞窟の中で野営をすることにした。
「何か……凄い良い匂いがするんだけど?」
「ああ、カレーだよ。お前の分もあるから安心しろよな」
レトルトカレーって便利だよな。
今回は固形のルーじゃなくて、パックに入ったやつを熱湯で温める系の奴なんだけどさ。
「かれー?」
そこでソーニャがクスクスと笑いながらカティアに言った。
「食べると驚きますですよー」
しばらくたって、お湯に入れたレトルトパックが頃合いになったので、炊いておいた米と共に更によそってやる。
カティアは初めて見る謎の茶色い食べ物を見て小首を傾げる。
そうして彼女はスンスンと匂いを嗅いで、グーっと彼女の腹の虫が鳴った。
食べるべきかどうするべきか悩んでいる風に見えたので、苦笑しながら俺はカティアに助け舟を出してやる。
「毒は入ってないから安心しろよな」
コクリとカティアは頷いて、そしてやっぱり恐る恐ると言った風にスプーンをカレーに突き入れた。
そうして口の中に放り込んで――
――バクバクバクバクっ!
一口食べた瞬間、火が付いたかのように猛烈な勢いで食べ始めた。
見ているだけでお腹が一杯になるような猛烈な食べっぷりだ。
そうして一分も経たずに完食し、彼女は感動のあまり胸の前で十字を切りながらこう言った。
「こんな美味しいものを食べたのは始めてだよ」
大げさなんだよと笑っていると。
「そうなのですー♪」
「我々もこんな美味しいの食べたのは初めてですー♪」
「だからもっと寄こせなのですー♪」
「お前らはしょっちゅう食ってるだろっ!」
一番近くにいた手乗りウサギにゲンコツを落とすと、涙目になった。
「カティア? おかわりはいるか?」
「もちろんっ!」
そう言ってカティアは満面の笑みで愛らしく笑ったのだった。
で、飯が終わってから紅茶を飲んだ後、持参していた寝袋でそれぞれ就寝という時間になったころ。
寝床に入る前、ソーニャとウロボロスがいつものようにおやすみのキスをせがんできたんだが……。
「え? キミ達……何をしようと……?」
カティアは顔を真っ赤にしてフリーズし、そのまま自分の寝袋に一目散に向かってくるまってしまった。
いかん、見た目十二歳の子供にはちょっと刺激的な光景だったのかもしれない。
――で、翌朝。
起きたのは俺が一番早かったらしく、湯を沸かしてみんなの分の紅茶を作っているとカティアが起きてきた。
「あ、あ、あの……キミ達は……」
「ん? どうしたんだ?」
「いつもあんなことを?」
顔を真っ赤にしながらカティアはそう尋ねてきた。
「まあ、寝る前と起きる時はそうすることになっているな」
するとカティアは更に頬を朱色に染めた。
「何て言うか……進んでいるんだねキミ達は」
何故だか俺のことを直視できないようで、チラチラと俺を上目遣いで眺めてくる感じだから話しにくいったらありゃしない。
「実はボクもそういうことには興味は……ある」
「へー、そうなのか」
「ドワーフの里は少子化でね。同じ年代の男がいないんだ。後は子供か五十代以上のオジサンかお爺さんしかいない」
「まあ、お前も子供だけどな」
「だから、ボクも興味があるんだ。だが、相手がいない」
「そりゃあ残念だったな」
「……だから、キ……キ……キス……とか……ボクも興味があるんだよ。昨日の夜はドキドキして……眠れなかった。だから、ボクはキミが起きるのを一睡もせずに待っていたんだぞ?」
何か良くわからんが怒り始めたぞこいつ
「何が言いたいんだよ?」
「……ドワーフは鍛冶を天職とするんだ。本能的に武器を託すに足る強者か否かを嗅ぎ分ける力もあるし、強者に惹かれるものなんだ」
本当に何が言いたいんだこいつは?
「お姉ちゃん達もキミに惹かれている理由はそういったところなんだろうね」
「だから、お前は何が言いたいんだよ」
「だから、ボクは興味があるしドキドキして眠れなかったんだよっ! 相手も他にいないんだよっ!」
「すまん、何言ってるかサッパリ分からん」
そこで違う意味でカティアは顔を真っ赤にして――
「もーーー! キミのことなんてボクは知らないっ! ボクは寝るっ!」
そう言って彼女は寝袋にくるまってしまったのだった。
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