第29話 エルフの騎士相手なのでくっころはある その1



 まあ、なるほどと納得もいった部分もある。

 これがチビッコギャングといわれる由縁なんだろう。まあ、どうして急に関西弁なんだろう……とか、そういうところにツッコミ入れるのは無粋なんだろうな。


「っていうか、野菜大戦争……ってことなのか?」


 野菜を奪い奪われる仁義なき戦い。

 そういう……しょうもないノリだっていうのか?


「いいえ違いますよタツヤ様」


「どういうことなんだマリア?」


「ソーニャ達はそうですが、エルフは馬鹿ではありません」


「ソーニャ達がアホの子なのは確定なんだな」


「ええ、エルフは食糧貯蔵問題に敏感ですからね。そういう理由で盗賊退治の軍事行動として手乗りウサギの巣穴を強襲したのでしょう」


 まあ、こいつ等……めっちゃニンジン食うもんな。

 四六時中盗まれてたとしたらたまったもんじゃないだろう。

 そうしてエルフの女王は俺達の眼前十メートル程度の位置で立ち止まった。


「ふむ……手乗りウサギとその女王。魔界の貴族に……農具を操る謎の男か」


 弓を左手に、矢を右手に持ってエルフの女王は俺を睨みつけてきた。


「そこの謎の男? 貴様からは魔王コーネリアに匹敵する――非常識な力の波動を感じるぞ」


 そういえばコーネリアも俺相手にすれば勝てるかどうか分からんみたいなこと言ってたっけ。

 何だか良くわからんが本当に俺は転移時に謎のチートスキルを貰ってしまったらしいな。

 そうして女は諦観の表情を作って自嘲気味に笑った。


「手乗りウサギの女王と、その配下の手乗りウサギだけで我が里の戦力を結集させてようやく互角と言ったところだ。そこに魔界の貴族と貴様……勝てる道理はあるまい」


 とりあえず、強さランキング的には……コーネリアと俺が今のところの暫定で互角。

 そこから滅茶苦茶下がって、その後にソーニャとエルフの女王。

 そしてマリアとウロボロスで、そこから大分下がって手乗りウサギ……そこから更に大分下がってアリサって感じだろうな。


「だからどうした?」


「どうせ散る命だ。ならばせめて武人として死にたい。故に――貴様らの最大戦力であり総大将である貴様に一騎打ちを申し込むっ! 貴様も武人であれば我の矜持も分かるだろうっ!」

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