第26話 エルフの里にいくことになりました その2
「お? アリサか? すまねえが今日は売れそうな素材はないぜ?」
「いやいや、それは別にええんや。それよりも美味しそうな儲け話の話しとるやん」
「やっぱりこのニンジンってヤバいくらいの値段で売れるのか?」
「こっち系はウチの専門ちゃうから正確な値段は出せへんけど……回答はイエスと言うとこか。いや、正確に言うならタツヤ兄やんが作る野菜全般やな」
「っていうと?」
「この前に食べさせてもらった……試作のプチトマトあったやろ? リンゴよりも甘い奴や」
種創造のスキルで糖度をマックスまで上げたんだっけかな。
「あんなもん希少性も考えた場合、グルメの貴族やったらそれこそ等量の金と同じ値段でも交渉次第ではいけるんちゃうか?」
ふーむ。
どうやら俺の作った野菜は本当にヤバいらしいな。
「じゃあ、とりあえず次回からは人間の街に余った野菜類は流すってことで良いのかな?」
「いや、そういう訳にもいかんのや」
「っつーと?」
「魔獣やらの肉を除いた皮や牙や骨なんかの素材なんかだけでも運ぶのは一苦労やねんで? ウチは特注のドデカイ背嚢でいつも運んどるんやけどさ」
「ああ、そういえばこの森は超難易度のダンジョンの扱いになってるんだっけ?」
「そういうことや。荷車を引いて道なき道を行くことになる訳。そないなったら護衛に高ランク冒険者も雇わなあかんし……とんでもない依頼料になってまう。さすがにいくらタツヤ兄やんでも諸経費は無料って訳にはいかへんで?」
「ボッタくりしてた奴が言うんだから説得力ねーけどな」
「それは言わへん約束やないか……」
シュンとした表情を浮かべて、アリサの狐耳が垂れ下がった。
あの後聞いたんだけど、どうにもアリサには病気の母親がいるみたいだ。
ボッタクリの理由としては治療費に急場の金が必要だったとかそういうことだったんだけど……。
ってか、ちゃんと話をしてくれれば俺も協力したんだけどな。
ちなみにボッタクリされた金貨は既に返してもらっている。
っていうか、ここ最近はアリサはほとんど手数料を引いてなくて、必要経費程度しか差し引かれてはいないらしいんだよな。マリアに確認しているからそれは間違いない。
まあ、タダ働きの形で帳尻を合わせたってことだな。
いや、まあガッツリとウチでタダ飯は食わせてやってんだけどな。
「じゃあ、やっぱりコーネリアのコネ経由で魔界に流すか?」
「とはいえ半分以上の中抜きはやりすぎやで」
うーん……困ったなとばかりに俺とアリサは考え込み始めた。
と、そこでマリアがポンと掌を打った。
「エルフ族に売ると言うのはいかがでしょうか?」
そこであっとアリサが息を呑んだ。
「それやっ! 連中は菜食主義者(ルビ:ベジタリアン)やっ! タツヤ兄やんの野菜やったらアホみたいに高くて買ってくれるでっ! 魔法付与製品を高く人間に売りつけてアホみたいに儲けとるのに質実剛健で金も貯めこんどるさかいなっ!」
その言葉でウロボロスは小首を傾げた。
「エルフは排他主義者の集まりでございます。自らを森の賢人と自称して、コーネリア様とも人間とも不必要な干渉を避ける孤高なる一族です。はたして新規の交易ルートなど……受け入れるでしょうか?」
「まあ、そこはウチの交渉術でどないかするわ。野菜を一口食べてもろたらそれで解決やと思うけどな」
「おいおい、交渉術って……お前が話をつけるつもりなのか?」
「当たり前やっ! ここにおるのは世間知らずの手乗りウサギと魔界の貴族連中やろ? まともな庶民の感覚もっとるはウチだけやないか」
まあ、それは一理ある。
マリアやウロボロスは魔界の高貴な血族だし、ソーニャに至ってはニンジン以外に興味がない。
で、俺は元々こっちの世界の住民じゃねーし。
「ああ、分かったよ。それじゃあ話をつけてくれよな」
うんと満面の笑みを浮かべながらアリサは笑った。
「ただし――手数料は貰うでっ!」
「お前はも懲りない奴だな」
俺は苦笑し、アリサはおどけるように胸を叩いた。
「もうボッタクリはせーへんさかいっ! ドーンと大船に乗った気持ちでおったらええでっ!
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