仁義なきエルフの森編 ~肉・肉・ニンジン・肉・ニンジン♪~
第25話 エルフの里に行くことになりました
「巨大なニンジンタワーだ……」
ソーニャに言われてニンジンばっかり作ってたらエラいことになった。
今、畑の端には軽トラ一台分くらいのニンジンが畑の隅に積まれているのだ。
「うふふー凄いのですーっ!」
サラッサラな髪を振り乱しながらソーニャはぴょんぴょんと飛び跳ねている。
そして、お付きの手乗りウサギ達も嬉しそうに飛び跳ねている。
「やったのですー!」
「念願のニンジンタワーなのですー♪」
「タワーにダイブするです?」
「するのですー♪」
手乗りウサギ達はタワーに飛びかかっていき、恍惚の表情で山の表面でゴロゴロやっている。
「しかし、これは自家消費だけではどうにもならんな」
俺が何やら考え込んでいると、ソーニャが俺を睨みつけてきた。
「絶対に嫌なのですっ!」
「嫌って何がだよ?」
「ニンジンさんを……売るつもりなのですっ!」
正解だ。
しかし、予想通りに難色を示したな。
「おいおい、腐らせるよりはいいだろう?」
そこでーニャが涙目を作って首をフリフリと左右に振った。
「でもでもなんですー。ニンジンが少なくなっちゃうですよー」
っつっても、ウロボロス曰くこのニンジンはとんでもない値段で売れるらしいんだよな。
賽銭箱がボッタクリシステムなので、ウサギ達に頼らない定期的な収入は欲しいところだ。
さすがにこの前に言ってた等量の金と同価格っていうのは、恫喝のための嘘らしいがそれでも高値ってのは本当らしい。
「売った金でニンジンたっぷりのシチュー作ってやるから納得してくれよ。そのための投資だと思ってくれれば良い」
ホワイトシチューとニンジンって合うよな。
っていうか、カレーっぽい見た目の食べ物とは相性は抜群だ。
「ほう、ホワイトシチューとは何なのですか?」
お、食いついてきた。
瞳をランランとさせて上目遣いで俺に視線を送ってきている。
「おう、ホワイトシチューだ。ニンジンにめっちゃ合うぞ」
「それはカレーと同じくらいにニンジンと合う料理なのですかー?」
「ああ、間違いなくニンジンと合うぞ」
お、瞳がランランとした感じからハートマークに変わったぞ。
尻尾もフリフリしているし、本当にこいつは可愛らしいな。
――この種族は虐殺の食いしん坊とかの物騒な異名があるらしいが……。
と、それはさておき。
「レトルトの固形のルーは高いんだ。ここは涙を呑んでニンジンを換金させてくれ」
しばし何やら考えてソーニャはコクリと頷いた。
「余るような分だけですよー? 私達の食べる分は絶対に売っちゃいけないですよー?」
了承を得たところで、俺は小屋に帰ってウロボロスに話しかけた。
「魔王……いや、コーネリアのところのコネを使って魔界にニンジンを売ってくれ。確かこの前に魔界では高く売れるとか言ってたよな?」
「仰せのままにご主人様」
ペコリと頭を下げるウロボロス。
しかし、メイド服が本当にサマになってきたな。
「コーネリア様の館まで……夕方にでも出立しましょう」
「ああ、そうしてくれ」
その間の家事全般はマリアがやってくれるだろう。
ウロボロスが来てから、やることがなくて農作業の補佐をやってもらってたんだが、元々は家事全般はマリアの仕事だったしな。
ちなみにソーニャは何もしない。
――強いて言うなら女王として小作りが仕事らしい。
いや、そういう意味ではガッツリ仕事してんのかな? 特にバーサーカーラビット状態になったら手がつけられんし。
「しかしご主人様?」
「ん? どうした?」
「コーネリア様とご主人様は盟友ですので無料での口利きになるかとは思いますが、出入りの業者と魔界の関税はそうはなりませんよ?」
「っつーと?」
「人間界との交易には幾重にも制約があり、また、境界の関所では関係各所のあらゆる人員が目を光らせているので……」
「ふむふむ」
「中抜きで半分以上はすっぱ抜かれると覚悟はしておいてくださいませ」
「ボッタクリも良いところだな。まあ、今回はそれで良いとして……今後は人間の街にでも卸すか?」
と、そこでドンとドアが開け放たれた。
「おうっ! 話は聞かせてもらったでっ!」
関西弁の主は狐耳のアリサだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます