第24話 シャンプーやトリートメントってやっぱり女の子喜ぶよね
「す、す、すっ、凄いですーっ!」
風呂から上がってきたソーニャが、風魔法で髪を乾かし終えると同時に――超大音量で叫んだ。
「な? 凄かっただろ?」
「はいっ! はいっ! はいなんですーっ!」
そう言ってソーニャは自分の髪を触って恍惚とした表情を浮かべた。
「サラサラっ! サラサラなんですううううううっ!」
まあ、この世界では体を洗うのは水が基本で、良くて桶に張ったお湯でタオルを浸して体を拭くレベルらしい。
当然、シャンプーとリンスとトリートメントなんて使ったことなんてない訳だ。
ナチュラルヘアーでソーニャ達はサラサラヘアーなんだが、そこにトリートメントなんていう破壊兵器を与えれば――
まあ、エンジェルリングよろしくサラッサラな髪の毛になるのは間違いない。
「何なんです? これ何なんですー?」
やはり、ウサギとは言え基本は女の子だ。
美に対する執着と言うか……いや、そういう次元の問題でもないか。
そりゃあ、髪の毛が急に桁違いにサラッサラになったんだからそりゃあ驚くだろう。
「トリートメントだよ」
「とりーとめんと?」
「良く分からないですが……」との前置きと共にソーニャが俺に抱きついてきた。
「ありがとうなんですーっ! こんなの初めてなんですー! サラッサラなんですー! 髪の毛サラサラですー! 嬉しいですーっ!」
「ああ、そりゃあどういたしまして」
ってか、ボディーソープとシャンプーの甘い匂いだ。
女の風呂上りのこの匂いって反則だよな……と、俺が頭をトロけさせたところで――
――俺は背後から……痛い視線を感じた。
「タツヤ様……?」
「ご主人様……?」
マリアとウロボロスがソーニャをガン見して睨みつけている。
「私もとりーとめんと……とやらを使ってみたいでございますわ」
「そりゃあどうして?」
「――私も女ですわよ?」
ああ、失礼。
そりゃあそうだな。
そこでウロボロスがウルウルとした瞳で上目遣いをしてきた。
「ご主人様。このウロボロスにご慈悲を。私にもとりーとめんとを……お与えくださいな」
「まあ、一応聞いとくがそりゃあどうしてだ?」
「――負けられない戦いがそこにはあるのです。独占されてはたまりませぬ」
っていうか、独占って何を……あ……俺か。
と、まあ、そんなこんなで二人はソーニャからシャンプーとリンスとトリートメントとボディーソープを奪い取ると風呂へと向かった。
で、風呂から上がってきた二人はすぐに風魔法で髪を乾かした。
そしてしばしの間、鏡を眺めながら自分の髪の毛を目をパチクリしながらいじくりまわす。
ウロボロスとマリアは互いに見つめ合って――ニンマリと笑った。
そんでもって、最終的にはソーニャも併せて三人で俺のほうにチラチラと視線を向けてきた。
「……」
「……」
「……」
それはもう――チラチラチラチラと俺を見てきた。
どうにもコメントが欲しいらしい。
で、仕方ないので――
「みんなとても奇麗だよ」
そういうと、全員が照れ臭そうに頬を朱色に染めたのだった。
と、まあ、その日の晩は……。
――俺はシャンプーの甘い香りに俺の全身が染め上げられることになったのだった。
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