第19話 本当に全然関係ないですが、紙と電子書籍のコミック版は乳首出ます
――翌朝。
「大変なのですー♪」
ソーニャの言葉で俺は目を覚ました。
藁と布で作った簡易ベッドから上半身を起こす。
っていうか、いつまでもこんなベッドじゃ駄目だな、狐耳のアリサあたりに頼むか、あるいは直接街に出向いて家具類も調達せんといかん。
下手したら四人で寝ることもある訳だし……。
と、それはさておき。
「どうしたんだ?」
「魔物が農作物を荒らしているですよー♪」
何ていうか、ソーニャは基本的にいつもニコニコ顔で……のんびりマイペースな口調でもある。
短い付き合いとはいえ、真剣な表情を見たのは、昨日、コーネリアが来た時くらいだ。
「魔物に畑が荒らされてるんだろ? なんでそんなに緊張感がない口調なんだよ」
「あー。まあ、荒らされているのはニンジンの畑じゃないですからねー♪」
「はいはいそうですか」
溜息と共に、俺はベッドの脇に立てかけておいたクワを持って外に出る。
――普段は畑は手乗りウサギが警備してる。
だが、彼女達が狩りに出かけていて、留守の時には、たまに農作物が魔物や獣に荒らされたりすることはある。
で、そんな時は今回みたいに俺が出て「ちゅどーん」で終わらせているのだ。
そうして俺は畑に出た訳だが……。
「……あんた誰?」
畑を荒らしていた……いや、ちょっと違うか。
勝手に畑の農作物を収穫していたのは、身長五メートルほどの数匹のサイクロプスだった。
で、それを引き連れているのはエライべっぴんさんだ。
身長は百六十七くらい。
年齢は二十代後半ってところか。
俺より少し身長が低いくらいで、スラリとした細身でスタイルが良い。
赤色の長髪に青白い肌。紫色のルージュが良く映えている。
胸は大きくはないが、形は良い感じだな。
服装的には露出度高い目で、妖艶な感じではあるが、セクシーダイナマイトな感じのマリアともまた違う。
うーん……。影のある不健康そうな水商売系のお姉ちゃん的な色っぽさって言ったら良いのかな?
まあ、そんな感じだ。
「私はウロボロス――魔王コーネリア様の側近である」
ウロボロス……ヘビの魔物か。
コーネリアも暗黒邪龍と言う話だし、あいつの部下は爬虫類系統ってことか?
いや、でもサイクロプスも使役してるっぽいし、実際はどうなんだろうか?
「で、どうして俺の畑を荒らしてるんだよ?」
「徴税だ。手乗りウサギが認めるほどのニンジン……魔界の貴族(ルビ:グルメ)相手に売れば等量の砂金と同じだけの価値となろう」
っていうか、俺のニンジンってそんなに高く売れるの?
一本七十円くらいの感じでソーニャ達に大盤振る舞いしてんだけど……。
「徴税?」
「貴様? ここが魔王コーネリア様の領域と知っての狼藉か?」
「ああ、それは知ってるけど……」
「コーネリア様に挨拶も無しにここいらの魔獣を狩り回し、更には農作物などと不届き千番だ。故に――貴様の蓄財を全て没収する。小屋の中の金目のモノもいただいていくからな?」
おいおい、ようやくここでの生活も軌道に乗っていたっていうのにそれはねーだろ?
っつーか、あの魔王様はどうなってんだよ?
昨日、めっちゃ仲良くなったはずなのに、いきなり掌を返してエグい取り立て屋みたいなことを始めるだなんて。
「しかし貴様も運がよかったな? ここに来たのが私ではなくコーネリア様であれば……全ては龍皇の火炎で消し炭にされているところぞ? 私は無駄な殺生はこのまんが故に、寛大な処置で済ましてやるが……」
ああ、この人は魔王様と俺が仲良くなったの知らないのね。
「コーネリアなら昨日きたぞ? どうにも俺は気に入られてみたいでな。また遊びに来るとか言ってたぞ?」
その言葉でウロボロスは腹を抱えて笑い始めた。
「コーネリア様が? 人間如きを気に入ると――? バカも休み休みに言うが良いっ!」
「いや、でもさ……」
「あの方が人間を気に入るなどと――カレーを作ることのできる人間以外にはありえぬわっ!」
やっぱりカレーは重要なんだな。
っていうか、カレーが作れりゃなんでもオッケーみたいな感じっぽいな。
「いや、だからさ……」
「黙れ下郎がっ! そのような嘘――魔王を恐れぬその胆力には恐れ入るが、側近としては聞き捨てできぬぞっ!?
と、ウロボロスはサイクロプスに視線を向けた。
「当初の予定よりも手荒く乱暴にやるが良いっ! 全てを奪った後は、家を破壊し田畑も潰せっ!」
「だから待てって……」
と、その時――
「うむ。お前様よ――昨日ぶりじゃのっ!」
「あ、コーネリア。っていうか昨日の今日でお前……何しに来たの?」
「いや、カツカレーを喰いに来たのじゃが?」
「昨日の今日だぞっ!?」
おいおい、また来るとは言ってたけど……二十四時間も経過してねーぞ。
そこでコーネリアは満面の笑みを作った。
「朝カレーじゃよ、朝カレー」
マジかよ……。
胃もたれが心配になってくる。
いや、俺も十代~二十代の前半のころはそういう食生活で何も問題なかったけどさ。
と、そこでウロボロスに視線を向けると――
彼女は顔面を蒼白にして、震えながらその場で片膝をついて頭を下げていた。
「ところで、どうしてこんなところにウロボロスとサイクロプスがおるのじゃ?」
「いや、俺が聞きたいよ。突然押しかけてきて、徴税だとかいって一切合切を持っていこうとされたんだぜ? 家と田畑も潰すとか言ってたな」
その言葉でウロボロスの震えが更に強いものとなる。
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