第18話 あまり関係のないネタバレですが魔王様はゲストキャラなので嫌じゃない展開になりません。代わりの人がそうなります。
――と、その時、先ほど火にかけたカレーの匂いが漂ってきた。
「時におぬし? この匂いはひょっとして……」
「お? この匂いを知ってるのか?」
「知っておるも何も……」
そこで魔王は表情を緩めて、感慨深げに大きく深呼吸をした。
「懐かしい香りじゃ――」
「ちなみに、今日はカツカレーだ」
その言葉を聞いて、コーネリアは大きく目を見開いた。
「カっ……カツカレーとなっ!?」
お?
なんか良くわからんがめっちゃ食いついてきた。
そして、グ――っとコーネリアのお腹の鳴る音が周囲に響いた。
「まあ、とりあえず飯にするか?」
「やはりカレーは美味いなっ! めっちゃ美味いなっ!」
ニコニコ笑顔でコーネリアは俺の肩をバンバンと叩いてくる。
なんだよこいつ……めっちゃフレンドリーっていうかノリが良いじゃねえか。
「まさかお前様が日本の住人でカレーを作れるなんてのっ! 何故に先にそれを言わん? 危うく喧嘩になるところじゃったではないかっ!」
呼び方もお主からお前様に変わってるし……。
ってか、お前から先に喧嘩を売りにきた感じだったんだろうが。
「うーん……まあ、要は昔にお前も異世界転移者からカレーを食べさせてもらったことがあるってことで良いのか?」
「うむ。それ以来――我の大好物はカツカレーなのじゃっ!」
まあ、カレーはどこの世界でも大正義だろうからな。
文明のレベルの低いっぽいこの世界で……こんなもんを喰わされたら衝撃を受けるだろう。
「で、どれくらいカツカレーが好きなんだよ?」
コーネリアはしばし何やら考えて――そして大きく頷いた。
「うむっ! 我はカツカレーのためならば……世界相手でも戦うぞっ!」
「おいおい、どんだけ好きなんだよ……」
ともかく、並々ならないカツカレーに対する情熱を感じる。
と、そこで俺はコーネリアが皿の端っこにニンジンをよけているのを発見した。
「ニンジンは苦手なのか?」
「いや、野菜は全て苦手じゃ」
「……お子様かよ」
「いや、我……見た目からしてお子様じゃろ?」
お子様じゃろ? とか可愛らしく小首を傾げて尋ねられても困る。
「まあ、ともかく我とお前様は盟友じゃっ!」
そうして魔王はニッコリ笑顔で俺に握手を求めてきた。
ってか、ほっぺたにカレーがついててアホ可愛いなコイツ。
しかし、どうして俺の周囲って餌付けがきく連中ばっかりなんだ。
やれやれとばかりに俺は深くため息をついたのだった。
その日の夕方―。
「近々またカレーを食べにくるのじゃっ! その時もきちんと我の相手をするのじゃぞ?」
「ああ、構わんぞ」
お土産のカツカレー弁当を持って、コーネリアはニコニコ笑顔だ。
「絶対に、ぜーーーったいにカレーを作るのじゃぞ?」
「ああ、分かったよ。ところでお前の住んでるところってどこにあんの?」
「あっちのほうじゃっ!」
西に見える山脈――よくよく見れば、その一角に巨大な館っぽいものが見える。
「結構デカい家に住んでんだな」
「うむっ! 魔王じゃからのっ! みすぼらしい家に住んでおってはサマになりゃあせぬっ!」
まあ、そりゃそうだ。
と、そんなこんなで「それじゃあのっ!」の言葉と共にコーネリアは去っていったのだった。
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