第15話 ドラゴンのステーキなのです。みんな大満足なのです。
で、そんなこんなで帰り道。
森の中を歩いている最中にマリアがニコニコ顔でこう言ってきた。
「――さて、あの狐耳……ボッタクリのアリサをどうやってぶち殺すかという話でしたね」
「いやいや、ぶち殺すのは流石に辞めとこうぜ」
マリアはめっちゃキレてるようだ。
いや、微笑を浮かべているんだが、目の奥が笑っていないので逆にめっちゃ怖い。
「お金なんてどうでもいいじゃないですかー。ニンジンがボッタくられた訳じゃなし」
まあ、お前はニンジン以外には興味ないもんな。
「とは言え、制裁は必要ですわ」
「ふーむ……」
まあ、中抜きで半分というボッタクリを行っているのは確定した訳だ。
ぶち殺すのはアレとして、このままやりたい放題されるならこちらも考えなきゃならんな。
「とりあえずは様子見だな」
「様子見……ですか?」
「マリアは狩った魔物の売却の相場は知っているんだよな?」
「ええ、冒険者生活も長いものでございましたから」
「だったら、次に手乗りウサギが狩ってきた魔物をアリサに譲る時に、ボッタクリ価格を提示してきたら取引停止の上で処分を検討する。そして適正価格を言ってきたら……何か理由があってのことだろうから、前回のボッタの理由を聞いた上でやっぱり処分を検討しよう」
「ふーむ……まあ、分かりました」
☆★☆★☆★
さて、ドラゴン肉である。
何を隠そう……俺は今、ドラゴンの肉の調理をしているのだ。
そうなのだ。
遂に念願のドラゴン肉なのだ。
解体屋にブロックで切ってもらったドラゴン肉をマジマジと眺める。
うん、粉雪のように綺麗なサシが入っているな。
端っこの方を軽く切って食ってみると……
「ああ、これ特上の和牛系だ」
A5ランクとか言うのが和牛の最高級という話だが、明らかに俺が今まで食ったどんな和牛よりも美味い。
っていうか、マジで半端ない。
さて……と、そこで俺は熟考に入った。
例えば焼肉のタレでは味がキツ過ぎて素材が死んでしまうだろう。
はてさて、この極上の素材をどうするか……。
――そしてその日の夕方。
「うんめえですー♪」
「マジでパないですよー!」
「うまうまですー♪」
「鼻にツーンと来ましたですー!」
「半生っぽいのがワイルドです?」
物凄い勢いで手乗りウサギ達がドラゴン肉を平らげていく。
「しかしタツヤ様? この調味料は凄いでございますね」
涙目になりながらマリアが言った。
「ああ、ワサビ醤油だ」
極上の素材ならシンプルな味付けが良いとの判断で、ミディアムレアの焼き加減でのワサビ醤油だ。
ドラゴン肉を口に運んで、モグモグと咀嚼してみる。
口の中に甘みと旨味がたっぷり詰まったジュースが溢れて、顔が思わずトロけてしまう。
そして、脂っぽすぎるところをワサビが打ち消して――
「美味いっ!」
思わず手を叩いて唸ってしまった。
塩コショウだけで行こうとも思ったが、かなり脂っぽいのでそれだけではクドくなりすぎるんだよな。
そういう意味ではワサビが本当に良い仕事をしてくれる。
で、今日は肉だけじゃなくて……赤ワインもあるのだ。
口に残った脂を赤ワインで流し込んで――
「最高だっ!」
一気にワインを飲み干すと、マリアがお酌をしてくれた。
で、再度……ドラゴン肉を口に放り込む。そして再度の赤ワイン。
いかん……止まらん。
肉と赤ワインが止まらん。
肉を口に放り込む。
噛む。
笑みがこぼれる。
そして――赤ワイン。
――無限ループって怖いよな。
そんな感じで酒と肉がマジで止まらん。
美味い。いや、美味すぎる。
それはソーニャとマリアも同じようで、みんなが黙々と酒と肉を口に運んでいた。
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