第14話 解体屋さんは芸人さん並みのお約束のリアクションを取ってくれました
ギルドの帰り道の道すがら――。
俺達は素材解体屋に立ち寄っていた。
と、言うのもアークドラゴンはデカ過ぎてアイテムボックス無しでは運ぶのも一苦労という話だったからだ。
本来は代金を受け取ってからの素材の扱いはギルドが全て行うことになっている。
冒険者に負担をかけないということもあるし、持ち逃げの危険もあるからだ。
まあ、そこは俺の親切心と、マルクスさんが保証するとの一言で……素材の解体屋までの運搬を請け負った訳だ。
当然のことながら、小遣い程度だが手数料分の報酬も貰う形なんだがな。
で、解体屋はかなり大きな建物で、受付兼作業場という場所に入り口から直通となっている。
ピンセットのような器具から、到底一人で扱うことを前提とされていない五メートルと超えるような大きなノコギリ。
――おお……日本で普通に生活してたんじゃこんな道具は絶対見られねえな。
そんな感じで物珍し気にキョロキョロしていると、作業場の奥から白髭を蓄えた筋骨隆々な初老の男が出てきた。
「おう坊主っ! そんなに解体屋が珍しいか?」
「ええ、初めてなので……興味深いです」
昔から俺はホームセンターで大工道具とかを意味もなく見て回る派だったんだよな。
どんな用途に使うかとか想像しながら器具を見るのは本当に楽しい。
「ああ、なるほど。ルーキーが運搬手数料をケチってギルドに懇願して自分で素材を持ってきた……って感じだな?」
いや違うんだけど……まあ、ここで否定しても話がややこしくなるだけだ。
「そんなところです。代金は既にギルドから頂いているので、後はのことは解体屋さんとギルドで手続きをお任せします」
「ちょっと待ってろ」
「……え?」
そうして解体屋は奥に引っ込んで、三人分の茶菓子と紅茶を持ってきた。
「腹減ってるだろ? 俺も駆け出しのころは苦労したもんだ。まあ、大したものは出せないが世話好きのジジイの道楽に付き合ってくれや」
ああ、この人良い人なんだな。
見る限り、裕福と言った感じではないけど……うん、本当に良い人なんだろう。
「ありがたく頂きますよ」
「お菓子ですー♪」
「中々の香りのお紅茶でございますわね」
そうして三人で茶菓子とお茶を頂いてから、コホンと俺は切り出した。
「それじゃあ解体素材を出しますね」
アイテムボックスを取り出すと、解体屋は「ほう……」と息を呑んだ。
「レアスキル持ちか。これは要らん世話だったかもな。駆け出しとはいえ重宝がられて金には困ってねえだろう」
「まあ……お金には困ってはいませんね」
「で、素材はなんだ?」
「デスホークです」
俺は作業台に取り出したデスホークを差し置いた。
「お前らが狩ったのか?」
「ええ、そうなりますね」
そこで解体屋は大きく目を見開いた。
「こりゃあ本当に……要らん世話だったようだな」
目を白黒させながら、解体屋は取り出したデスホークの検分を始める。
「確かにデスホークだ。しかし、若いのに大したもんだな。こんな大物は二週間に一度程度でな。高級素材ってなもんで俺も肩に力が入るってなもんよ」
「もう二体あります」
作業台にデスホークを更に二体差し置く。
「……マジかよ。こりゃあとんでもねえ連中だな。これは俺も気合を入れて仕掛かからないと――」
「それで最後にアークドラゴン」
アークドラゴンの首がアイテムボックスから出たところで――
――解体屋は口をパクパクさせながらフリーズしていた。
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