第11話 街に向かうついでのハイキングでドラゴン殺しになりました



 昼飯を食って、わいわいみんなで騒ぎながら遠足気分……ってか、ハイキングのノリだな。

 そんな感じで俺達は森を歩いた。



 で、その途中、ソーニャが森の中で発見したデスホークを二体狩った。

 手乗りウサギも相当ヤバいらしいが、クイーンのソーニャも相当なんもんだった。

 何しろ、裏拳一発で、高ランク級のモンスターとされるデスホークを狩っちゃったんだからな。


 そんでもって森の中を歩くこと都合三時間。

 街への道のりの半分程度を過ぎたころ――。


「あっ! あれは――とんでもないものを見つけたのですーっ!」


 ソーニャが発見したのは体高十メートル級のドラゴンだった。

 が、ソーニャとマリアが協力して、数十秒の戦闘の後に……ドラゴンは死体となった。

 いや、本当にドラゴンはあっさりと倒されちゃったんだよな。

 軽く地形破壊も起こっているし、周囲は黒焦げだし、どんな激戦が行われたんだよ的な跡地ではあるんだが……。

 まあ、詳しく説明しようか。

 二人はドラゴンの初撃であるブレスを避けて、間合いを詰めたんだよな。

 で、マリアがドラゴンの前足を掴んで一本背負いからの、空中を舞うドラゴンの顔面へのソーニャのソバットで全てが決着した。

 気絶したドラゴンを後は二人でタコ殴りで、数十秒でのスピード決着だ。


 ――っていうかコイツ等……クソ強え。


 ちなみに、このドラゴンの名前はアークドラゴンと言うらしい。


「まあ、私はサキュバス族の公爵家出身ですから。魔界では失脚してしまいましたが、タツヤ様のお情けを毎夜かけていただいてるおかげで魔力は万全ですわ」


「うふふー。ドラゴンは美味しいのですよー?」


 もちろん、肉は俺達が持ち帰る。

 で、骨や皮や牙なんかの素材は街で売りさばくつもりだ。

 そもそもが、デスホークについては相場が本当に千五百枚なのかどうかを確かめるなので、まあ……ついでの用事って奴だな。


 ちなみに、デスホークはダチョウサイズだ。

 アークドラゴンについては、十メートル級となる。

 正直、デスホークの時点で収納場所には困ったのだが――

 ピロリロリン♪


【スキル:アイテムボックスレベル10が発動しました】


 と、神の声が聞こえたんだよな。

 まあ、アイテムボックスってのは説明不要のあのスキルのことだろう。

 ちなみに、スキルレベルが限界突破なので空き容量を気にしなくても良いくらいにとんでもないことになっている。

 更に言うと、一トンまでという数量制限はあるが、時間停止の保存空間も使用できるらしい。 

 まあ、それは良しとして。


 ――ドラゴンの肉って一度食ってみたかったんだよな。


 まあ、ファンタジー好きなら全員がそれには賛同してくれるだろう。




 と、そんなこんなで俺達は街へと到着した。

 ちなみに街は中世ファンタジー世界そのまんま……と言った感じだった。

 串焼きの屋台なんかもあったので、腹も減っていたので購入してみる。


「うふふ。不味いのですよ。とてもとても不味いのですよー」


「確かに不味いでございますわね。もうほとんどゴミ同然でございますわ」


 で、俺も実食したんだが、デスホークの肉に比べると……不味くて食えたもんじゃなかった。

 腐りかけの肉を無理やり焼いてごまかした的な感じだな。

 女性二人は俺に食いかけの串焼きを押し付けて、結局俺が三本もクソ不味い肉を食うことになった。

 捨てれば良かったんだろうが、それはウチの母親の教育の賜物だろう。


 そして俺たちは冒険者ギルドに辿り着いた。

 入室と同時に色々と観察してみたんだが、これまたファンタジー世界の冒険者ギルドのイメージそのまんまの場所だった。

 で、エルフの受付嬢がいて、俺達は迷わずカウンターへと向かう。


「素材の買取をお願いしたいんだが……」


「素材の買取? 何をでしょうか?」


 俺はアイテムボックスを呼び出した。

 ちなみに、縦×横×高さ一メートル五十センチで、これに入るものなら何でも入るし、出すことも当然に可能だ。

 俺はデスホークを取り出してカウンターの上によっこいしょと差し出した。


「……デ……デスホークですか?」


 驚いたように大口を開いて、受付嬢は目を白黒とさせる。


「ちなみに肉は持ち帰りたい」


「でしたら、金貨千五百枚……オリハルコン通貨十五枚での買取になりますね。ああ、解体料金は手数料で差し引きますが。しかし、こんなSランクモンスターを狩るなんて……人は見かけによらないのですね」


 うーん。

 これでどうやら狐耳の獣人のアリサのボッタクリの手数料が確定した。

 あいつはデスホークの代金として手数料を差し引いてって話で、金貨七百五十枚分の代金しか俺に渡さなかった。 

 まあ、あいつのことは後で考えるとして、今は買い取りだ。


「それと、デスホークをもう二つ……」


「……えっ? いや、お客様は冗談がご上手ですね。超高ランク冒険者でもデスホークを複数狩るなんて……って……ええっ!?」


 取り出された追加のデスホーク二体を見て、エルフの受付嬢の顔色が真っ青になっていく。


「ギルドの金庫にオリハルコン通貨四十五枚なんて……今……あるのかしら?」


「後、アークドラゴンを追加で一体だ」


 そこで、引きつった表情でエルフの受付嬢はこう言った。


「冗談はほどほどにしてください。いくらなんでもデスホークに併せて、更に高ランクのアークドラゴンなどと……どこの英雄一行の冒険からの凱旋なんですか……? そもそもアイテムボックスにあんな巨大なものが入る訳が……」


 そうして俺はアイテムボックスから、アークドラゴンの頭部だけを取り出した。

 まあ、実際には取り出した訳ではなく、呼び出したといった方が近いんだが。

 ともかく、俺の持っているアイテムボックスから、頭だけで長さ一メートル近くある巨大な龍の……ドラゴンヘッドが登場した訳だ。


「……」


 受付嬢はフリーズしていた。

 パクパクパク……と受付嬢は口を開閉し、しばらく過呼吸状態に陥る。

 同時に、ギルド内の冒険者達がドラゴンヘッドを指さして、ざわざわとし始めた。

 そうして、しばらくの後に、ギルド嬢は少しだけ平静を取り戻して、蚊の鳴いたような声でこう言った。


「……そんな……馬鹿な……ことが……?」


 ギルド嬢がめっちゃ驚いている。

 サクっと二人が倒したからアレだったんだが、アークドラゴンってのはやはりめっちゃヤバい系なのかもしれない。

 っていうか、それをサクっと殺っちゃう二人は更にヤバいってことになるんだが……。


「……アークドラゴンが金貨一万枚、デスホークが一体千五百枚で、合計金貨一万四千五百枚になります」

 日本円で一億四千五百万か……これまたとんでもないな。

 でも、賽銭箱を使えば一万四千五百円だからな。ゼニゲバ神のせいでイマイチそれほど大した感じはしない。

 ――とりあえず、戻ったら賽銭箱で缶ビールの五百ミリ缶を一ケース買おう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る