第9話 淫魔:サキュバスがやってきた。もちろんそういう展開になった

「念願のニンニク……採れたどーっ!」


 連日の発情ウサギ……ソーニャの相手で俺はもう本当に限界に達しかけている。

 頬もコケてきたような気もするし、せめてスタミナのつくものを喰わないと本当にアウトだな。

 と、いうことで今日はガーリックステーキだ。

 手乗りウサギ達にはニンジンのつけ合わせを特盛で盛っておいた。

 ちなみに、ソーニャの分はガーリックは無しだ。これ以上元気になられると色々ヤバいからな。

 と、その時――コンコンとノックの音の後にドアが開いた。


「あんた……誰?」


 えらい別嬪さんが小屋のドアをそこにいた。

 胸の大きさはGカップくらいありそうな感じで、見た目は二十代後半だ。

 ヤケに露出度の高いビキニアーマーみたいな服で、肩までの絹の桃色の髪が艶やかだ。

 っていうか、物凄い色っぽい。

 ソーニャは見た目は中学生でも高校生でも通用する感じで、幼い系だ。

 だが、この人は妖艶という言葉が似あうほどに大人の色香が半端ない。


「美味しそうな香りがしたもので……私は魔界を追放された淫魔サキュバス――マリアと申します。追放された際に力を奪われてしまい、お腹がペコペコなのでございますわ」


 聞いてもないのに身の上話を始めたぞこの人。

 ってか、サキュバスっていうならこの色気も納得だな。

 淫乱ピンクという言葉がこれほど似合う人もいないだろう。


「まあ、腹が減ってるなら食っていくか?」


 仕方ねーなと、俺はガーリックステーキを差し出してやる。

 そして一口食べると――マリアは大きく目を見開いた。


「ありえない味でございますわ……魔界のシェフでもこのような神の偉業としか思えぬ味は……出せないですわっ!」


 そうしてマリアは物凄い勢いでガーリックステーキを平らげていく。


「そんなに急いで食べると喉詰まらせるぞ?」


 一気に肉を口の中に押し込み、モゴモゴとさせながらマリアは言った。


「肉とニンニクの力……っ! みなぎって……きましたわっ!」


「消化早すぎだろっ!?」


 驚きながら言うと、マリアは小さく首を振った。


「ニンニクとは精力の象徴です。そしてサキュバスの魔力的エネルギー源でもあるのですよ。物理的な消化活動とは……また別のエネルギー摂取の形となります。具体的に言えば口に入れれば魔力は補充されます。まあ、当然のことながら栄養としての消火活動も後に行われますが‥…」


「なるほど」


 と、そこでマリアは俺に……なんだか色っぽい視線を向けてきた。


「久しぶりにニンニクを摂取して……疼うずいて参りました。そしてまた、夜の営みもサキュバスの魔力回復で重要なのです」


「……はい?」


「奪われた私の魔力は一日二日では回復せぬのですよ」


「……つまり?」


「あの……その……しばらく……色々と厄介になりたいのですが……嫌……なのですか?」


 そこで俺は素直な気持ちでこう言った。

「いや、全然嫌じゃないです」

 こうして、同居人が一人増えることになった。



 ――ちなみに、サキュバスは伝承上のソレよりも遥かに物凄かった。






 そして三日後の朝の農作業中――。


「今日は私と一緒に寝室に入るですーっ!」


 ソーニャが俺の右腕にまとわりついてくる。


「あら? 小娘が何をおっしゃっているのかしら?」


 で、マリアが左腕に絡みついてくる。

 とりあえず、農作業ができんので勘弁してくれ……と思っていたところで、二人がとんでもないことを言い始めた。


「じゃあ、今日は三人で……ということに」


「うんっ! それで手打ちにするですーっ!」


 ゴファっと、俺は大きく咳き込んだ。


「おいおいお前ら……それは無茶じゃねーか?」


 その言葉で、二人は目をウルウルさせて上目遣いでこう言った。


「……嫌ですか?」「……嫌なのですか?」


 そこで俺は、素直な気持ちでこう言った。



「全然嫌じゃないです」



 うん、本当に嫌じゃない。

 でも……もう俺はヘロヘロなんだよ……と俺は思う。

 本格的に体がもたない。精力つけるために肉とニンニクを喰いまくっているが全然追いつかない。

 このままじゃ不味いなと思っていた時、頭の中に神の声が響いた。

 ピロリロリン♪


【スキル:夜の帝王レベル10を授与します】


「もう何でもありだなっ!?」


 いや、本当にありがたいんだけどさ……。

 で、その日の晩は色々あったんだが――


 ――結論から言うと、今後は彼女達がヘロヘロになる番のようだ。

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