第8話 カラアゲパーリ―ナイト その2

 ――パチパチパチパチパチ。

 油の軽快な音が鳴り響き、カラアゲの香ばしい匂いが小屋中に充満している。


「はい、お待ちどうさん」


 俺は大皿をテーブルに差し置いて、急いで第二陣を作るために調理場へと戻る。

 ちなみに手乗りウサギ用にカラアゲだけではなくニンジンの素揚げも用意している。


「ニンジン♪ニンジン♪」


「うんめえですー」


「肉・肉・ニンジン・肉・ニンジン~♪」


「カラアゲ大好きですー」


「マジで半端ねえです」


「肉・肉・ニンジン・肉・ニンジン~♪」


 よしよし、手乗りウサギ達にも大好評みたいだな。

 っていうかコイツ等、小さい体のどこに入るんだっていうくらいに食いっぷりが良い。


「もっとですー!」


「もっとなのですー!」


「食べたいのれすー!」


 そこでアリサがカラアゲを一つ口に放り込んだ。

 すると彼女は大きく目を見開き――


「うわァ……なんやこれ……っ!」


 瞼を閉じて、何度も何度も噛みしめて、そうしてアリサはゴクリとカラアゲを飲み込んだ。

 次に満面の笑みを浮かべて、右手の親指をこちらに向けてグッと立たせてきた。


「おい兄ちゃん!? 何やコレ? めっちゃ美味いなコレっ! こんな美味いモン食うたのは生まれて初めてやっ!」


「兄ちゃんじゃなくて達也だよ。名前があるんだからそれで呼べ」


「ああ、こりゃまた失礼。じゃあ今後はタツヤ兄やんで……。しかし、何で手乗りウサギがこんなに懐いてるのか……ようやく分かったで」


「っていうと?」


「ニンジンが半端ないし、料理も半端ない。虐殺の食いしん坊との異名を持つ……手乗りウサギからしたらここはパラダイスみたいなもんや」


「虐殺の食いしん坊って……」


 思わずちょっと笑ってしまった。

 と、そんなこんなでカラアゲの第一陣はあっという間に大皿からなくなってしまった。

 そうしてしばらくしてから、俺はカラアゲの第二陣を大皿に盛りつけてテーブルに差し置いた。

 が、やはりすぐさまに猛烈な勢いでカラアゲが消えていく。


「おいおいお前等……俺の喰う分も残しておいてくれよな」


「美味しすぎるからですよー♪」


 ソーニャがニコニコ笑顔を浮かべてカラアゲを頬張っている。

 まあ、みんなが嬉しいなら何よりなんだけどさ。

 第三陣、そして第四陣……第五陣のから揚げを作っている途中で、ようやくみんなのフォークも止まり始めた。


「……ここらで良いかな」


 最後の揚げたてのカラアゲと共に、俺はようやくテーブルの椅子に座ることができた。


「いただきます」


 作っている最中に味見すらしてないんだが、はたしてデスホークとやらの肉はどんな味なのだろうか。

 高級食材って話だし、みんなの評判も上々のようだ。これは期待が高まらざるを得ないだろう。

 アツアツのカラアゲをフォークにさして、口の中に入れてみる。

 歯ごたえのある肉質で、旨味が凝縮されたジュースが溢れてくる。

 何度も何度もアリサが咀嚼していたのはこういうことか……なんせ、噛めば噛むほど極上の肉汁が溢れてくるんだもんな。


「ふはっ!」


 思わず、笑みがこぼれてしまった。


 ――う、うっ……うんめえーっ!


 二個目三個目と続けて口に放り込む。

 いやあ、これはマジで美味い。

 って……熱っ! 急いで頬張ったもんだから火傷しそうになっちまったぜ。


 ――しかし、こうなってくると米が恋しくなるな。


 なんだかんだって、オカズって米があってこそなんだよなー。

 米があればこの究極のカラアゲを更に何倍も美味しく感じられるんだろうに。

 ……とりあえず米は植えたんだが、あの感じだと一~二か月もかかるんだよな。

 それか、米の代わりに酒でもあれば……このオカズを百パーセント美味しく味わうこともできるんだろうけどさ。


「ごちそうさまでした」


「美味しかったのですー」


「タツヤ兄やん。今後も晩飯……食べさせてもらえるんやったらウチはめっちゃ嬉しいわァ」


 と、まあ、そんなこんなでカラアゲの晩餐会は大盛況と共に終了したのだった。

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