第7話 難易度Sランクの鳥の魔物狩ったのでカラアゲパーリーナイト その1


 サイド:アリサ



 街への道のり、ヘトヘトのいつもと違って足取りは軽い。

 背中に一杯荷物を背負っとるけど、これほど足取りの軽い街への帰還は初めてのコトやで。

 はっきり言うて、金鉱脈を発見したようなもんやからな。


 ――なんせ討伐難度Aランク級デビルボアの毛皮と牙と骨や。


 冒険者ギルドに買い取らせて金貨八百枚……武器屋やら防具屋に直接売りつけたら金貨千枚は固い。

 っていうか、手乗りウサギを手懐けとるんやったら、ドラゴン系の素材が手に入る可能性すらもあるで。これはもう、手数料を一割貰うだけで……ウチもウハウハや

 しかし、手乗りウサギか……。

 あの兄ちゃん、本当にとんでもないもんを手懐けとるな……。


 ――アレは、帰らずの森に生息する最悪の戦闘集団や。


 かつて、手乗りウサギが巣穴の近くで保管してたニンジンを鷹狩り中に間違えて踏み潰してしまった辺境の王様がおったんやが……血みどろの総力戦が起きたことは記憶に新しい。

 たった二百匹の手乗りウサギと、国一つが戦争をして、戦火は周辺各国にまで飛び火してエラいことになったっちゅう話や。

 大国が仲裁のために、どんなニンジンを持って行っても『帰らずの森のニンジン以外は不味いのですー』の一言で一蹴されたっちゅう話で、並のニンジンでは連中は見向きもしないはずやのに……。

 まあ、ともかく、これはウチにとってはこれ以上のない幸運やっ!

 軽い足取りで、息を切らせてウチは街への帰り道を小走りで駆け抜けていく。


「とんでもない兄ちゃんとお近づきにさせてもらったもんやでっ! 神様に感謝やなっ!」



 ☆★☆★☆★



 手乗りウサギが鳥を捕まえてきた。

 ダチョウみたいな大きさで、姿形もそんな感じだ。

 顔つきは凛々しいというか何というか、鷹っぽい感じだな。

 で、決定的にダチョウとは違うのは大きな翼が生えていることで、多分コレは空を飛べる系だ。


「しかしお前ら、どうやって鳥なんて狩ってきたんだ?」


 手乗りウサギは狩猟民族らしいんだが、空を飛んでいるのは今の所見たことはない。


「木と木の間に網を張るですよー♪」


「いっぱいいっぱい網を張るですー♪」


「鳥さん追い立てるですー♪」


「網にかかったところでタコ殴りなのですー♪」


 罠としての網を張ってるところに鳥を誘導するってことなんだろう。

 前から思ってたんだけど、馬鹿っぽい感じだがこいつらの知能は高いんだろうな。

 金属製品も加工できるし。

 まあ、そんな感じで俺はダチョウっぽい鳥の解体を始めた。

 内臓を取り出して、部位ごとに肉を切り分けていく。

 鴨っぽい感じの肉感で、脂がのっててスゲエ美味そうだ。

 と、そこで――狐耳のアリサが現れた。


「おう兄ちゃんっ! この前の代金もってきたで……って……え?」


 パクパクパクと何度も口を開閉させて、目を白黒させながらダチョウっぽい鳥を指さした。


「それ……デスホークやないかいっ!」


「デスホーク?」


「超高ランク級冒険者でようやく仕留められるようなSランク級の魔物やっ! 肉も爪もクチバシも……アホみたな値段で取引されるねんでっ!?」


「ああ、そうなの? 手乗りウサギが狩ってきたから良くわかんねーな」


「ホンマにエゲつないモンを飼い慣らしとんな……無茶苦茶やで」


 アリサは呆れ顔で……っていうか、若干引きながらそう言った。

 っていうか、そんなのを狩ってくる手乗りウサギって、結構ヤバい種族なのもしれないな。


「で、何の用だよ?」


 そうしてアリサはこちらに小袋を指しだしてきた。


「この前のデビルボアの売却代金や。ウチの手数料を差し引いて……しめて金貨六百枚」


 ちなみにこの前アリサに聞いたところによると、街の衛兵の初任給で金貨二十枚くらいらしい。

 日本での価値とすると、金貨一枚で大体一万円ってところだな。

 っていうか、あのイノシシすげえ高く売れるんだな。そりゃあこの前、アリサは嬉しそうにしてた訳だ。


「っていうか、金貨六百枚って、こんな小袋に入るもんなのか?」


「ああ、オリハルコン通貨や。一枚で金貨百枚分……それが六枚となっとる」


「オリハルコン通貨?」


 袋の口を解いてみると、そこには虹色に輝く小さいプレートが六枚入っていた。


 ――オリハルコンか……なんていうか物凄いファンタジーっぽい 


 うん、やっぱりちょっとした感動を覚えるな。

 ってか、お賽銭箱に入れたら六百円か……。

 前にアリサから受け取った金と、焼肉のタレを取り寄せた時の残金を併せて七百円くらいだ。


「せっかくだし、アリサも晩飯食ってけよ。倉庫で良ければ泊っていっても良いから」


 ボチボチ夕方の時刻だし、女の子を一人で魔物ひしめく森林に野営させるっていうのも気が引ける。


「そりゃあまあ、ありがたい申し出やけど……晩飯って?」


 そうして俺は「ああ」と頷いた。


「今夜はカラアゲだ」


 と、まあ、そんな感じで俺は神棚を拝んで、サラダ油とカラアゲ粉を取り寄せた。

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