第4話 ウサギの獣人に股間のニンジン食べられたった その2

 さて、手乗りウサギである。


 基本的にはこの生物は盗みもしないし悪さもしない。

 ニンジンさえ与えていれば獣も取ってきてくれるし、雑用事もやってくれる。

 で、俺にも時間ができるようになった。


 肉の心配がなくなったってのが一番大きいかな。

 元々、そろそろ洞窟暮らしもアレってなもんで、白骨体が住んでいたであろう朽ちた小屋を修繕しようかと思っていたところだ。

 小麦と米は既に植えているが収穫までは一~二か月ってところだろう。

 この辺りを収穫し終えた上で、人里を見つけるための探索を本格的にやろうと思っている。


 が、やはり数か月もこの場所で過ごすのだから、ジメジメとした洞窟というのは頂けない。




 とりあえず、クワで材木を切って組み立てていく。

 っていうか、このクワ……ヤバい。

 農具取り扱いのスキルの影響なんだろうが、刃物としても頭おかしいレベルで、サクっと木が切れる。

 とはいえ本来の用途とは違うので板の成形にはかなり難儀した。

 釘がないので困ったが、手乗りウサギ達が釘を作ってくれた。

 彼女達は人間の冒険者の死体のことを鉱山と呼んでいて、防具や武器から金属製品を加工するらしい。

 ウサギだけあって歯が硬くて鋭いのと、火を扱う技術もあるので簡単な金属加工ならお手のものとのことだ。


 で、釘を提供してくれただけじゃなくて家屋作成以外でも、木材をくりぬいて作成する皿やコップの作成も手伝ってくれた。

 体が小さいから細かい作業なんかは人間よりもできるし、かなり器用なようだ。

 それでいて、お手伝いしてくれた時にはニンジンを一本あげていれば大喜びしてくれる。


 まあ、率直な感想としては――


 ――こいつら便利だなということだ。




 と、そんな感じで丸一日で掘っ立て小屋と倉庫ができあがった。

 小屋の広さはワンルームマンションくらいで、先人の残した食器や鍋なんかも綺麗に洗ったり修繕したりで、調理や食事をする分にはかなり充実しつつある。

 一気に文明の進歩も進んで、色々と感慨深い。


 ちなみに、倉庫なんだが、ネズミなんかの泥棒対策で手乗りウサギの精鋭1名が交代制で見張りをしてくれるというセキュリティー付きのものとなっている。

 ってか、やっぱりコイツ等便利だな。

 で、しばらく過ごした洞窟からの引っ越しも終えて、その日の晩は俺は最後のカレーの固形ルーを使って御馳走を作った。


 まあ、引っ越し祝いって奴で、イノシシの肉と、大量のニンジンを投入した特製カレースープだ。


「とっても美味しいのですよー♪」


「っていうかカレーニンジン……マジでヤバくね?」


「おいしーよねー」


「大きい人は神ですかー?」


「っていうか神じゃね?」


「間違いなく神なのですー♪」


 猛烈な勢いでカレーが無くなっていき、気が付けば俺は一口も食べないままに完食されてしまった。

 食欲を満たした手乗りウサギ達はすぐにその場で眠りだしていき、その内の一人が俺の膝の上に乗ってきた。

 そうして、クタリと俺の膝の上で眠りに入ろうとする。

 こいつらが俺に懐いているのは犬猫の餌付けに近いものがあるんだろう。

 だから、やはり俺も犬猫を扱うように首筋や背中の辺りをマッサージしてやった。

 首回りとか耳とか尻尾とか……モフモフ部分もあるし、触り心地も良い。

 と、尻尾の先端辺りを触ると、手乗りウサギはビクンと体を震わせた。


「んっ……!」


「どうしたんだ?」


 頬を朱色に染めて、手乗りウサギはトロンとした表情でこちらを見てくる。


「……もっとなのですぅ」


 言葉通りに、再度、尻尾の先端辺りを触ってやる。


「あっ……」


 湿った吐息と共に、そのまま手乗りウサギはクタっと俺の膝の上に頬をこすり付けてきた。

 面白くなってきたので、クリクリクリっと更に尻尾の先端辺りを弄ってやる。

 すると再度ビクリと手乗りウサギは体を震わせた。

 そうして、彼女は――


「す、す、す……凄いテクニックなの……です……」


 それだけ言うと、疲れ果てたかのように膝の上で寝てしまった。




 で、翌日――。

 朝、起きると手乗りウサギ達が見当たらない。

 倉庫を見ても、やはり警備中の手乗りウサギがいない。

 これはどういうことだ……? と、そこらを探し回ってもいない。

 まさか……と思ってニンジンの貯蔵箱と畑を見るが、盗まれた訳でもない。


「本当にどういうことなんだよ……」


 流浪の種族とかそういうことなのか? 別れも告げずに去っていったとか……そういう感じなのかな。

 まあ、いなくなった連中を探してもどうしようもないので、俺はその日は農作業とイノシシの解体・燻製作業に勤しんだ。

 ぶっちゃけると、かなり俺的には寂しかったんだが、それを言っても仕方ない。



 そしてその日の夜――。


「ウチの子達がお世話になりましたですー♪」


 えらい美少女が、手乗りウサギを三十人引き連れてやってきた。

 いや……手乗りウサギを人間の大きさにした感じ……っていうかそのままの兎人だ。

 見た目は十五歳前後くらいで、日本で言えば中学生か高校生くらいだろうか。

 胸は小さいが、形は良さそうな感じだな。

 言うまでもないが、とんでもなく可愛い。


「貴方は?」


「うふふ。私の名前はソーニャです。こうみえても小兎人族の女王さまなんですよ。で、群れの中で王さまだけが……この大きさってワケなんです」


「で、どうして……今日はここに?」


「巣穴の引っ越しなんですよ」


「引っ越し?」


「とんでもないニンジンの生産地を発見して、そこの住む者とも友好関係を築けそう……っていう話をお聞きしましたですよ♪」


 ああ、なるほど、そういうことか。

 ってか、本当にニンジン好きなんだなコイツ等。


「俺としても肉を提供してくれるなら、ニンジンのお代で良いなら文句はねえけどさ」


 そうして、ソーニャはニヤリと笑った。


「後、この子から……聞いたのですけれどね?」


 ソーニャは昨日、俺の膝の上で寝ていた手乗りウサギを指さした。


「……凄いテクニックを持っているです?」


 舌なめずりしながら、ソーニャは妖艶な目つきで俺の足元から頭までに、舐めつけるような視線を送ってきた。


「……え?」


「是非とも一度……試してみたいですが」


「あ、いや……」


「ん? どうしたです?」


「ソーニャはちょっと……見た目的に問題が……」


 まあ、見た目中学生で、良いところ高校生くらいだもんな。

 色々と問題があるのは間違いない。


「うふふ。兎族は長命なんです。つまり私は――二十二歳なんですっ!」


「え? マジ!?」


「はいなのです! 私のこと……嫌なのですか?」


「――全然嫌じゃないです」


 と、そうして――その日の夜、色々あった。

 ちなみに、ウサギさんは年中発情中で動物界でも屈指の性欲らしい。


 で、結論から言うと――


 ――噂通りにウサギさんは絶倫でした。

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