ハートに火をつけろ!
渋谷かな
第1話 ハートに火をつけろ!
イースとシンディは日本の孤児院で育てられた。おまけにフレッドも。
イースとフレッドは剣士見習い。
「僕は騎士になる! 日本国の国家騎士になって、公務員になって、シンディと結婚する!」
「何を!? シンディと結婚するのは俺だ! 俺だ! 俺だ! 倍率10000倍の国家騎士になるのは、この俺だ!」
イースとフレッドの夢は日本国の国家騎士、公務員になって安定した収入を確保して、シンディと結婚することだった。
「微妙に現代社会を異世界ファンタジーにくっつけないでよね。それに私には結婚する相手を選択する自由があるんですから。アハッ!」
シンディはシンディで逞しく育っていた。
「シンディお姉ちゃん! 遊ぼう!」
「はいはい。洗濯物を干し終わったらね。アハッ!」
「やったー!」
シンディの屈託のない明るい笑顔は孤児院の年下の子供たちのお母さん替わりであり、みんなから好かれていた。
「いいな、シンディ。」
「ああ、実にいい。」
イースとフレッドはシンディに憧れるように恋していた。
つづく。
「こら! おまえたち! 剣術の稽古はしているのか!」
「ゲゲゲッ!? ミッキー神父!?」
「アハッ! ミッキーだよ!」
現れたのは孤児院のミッキー神父だった。
「シンディを眺めている暇があるなら、少しでも剣の稽古をして強くなれ! おまえたちが国家騎士になれれば、我が孤児院に多額の寄付が入ってくるからな!」
「金の亡者!」
「神父様! 最低!」
「なんとでも言え! 子供たちの生活が懸かっているのだ!」
ミッキー神父は孤児院の運営を考えて資金問題に頭を抱えていた。
「今の孤児院があるのは孤児院の先輩方からの寄付があるからだ!」
「分かったよ。絶対に俺たちも国家騎士になってやる!」
「僕も剣術をがんばる!」
イースとフレッドは剣術の稽古をすることにした。
「えい!」
「やあ!」
そして1時間後。
「はあ、いい汗をかいたな。」
イースとフレッドの剣術のレベルが上がった。
「なんか、お料理番組みたいだな。」
割愛。一時間の剣術稽古の素振りや掛け声だけで1時間も描ける訳がないのだ。
「そういうな。おまえたちが二人で切磋琢磨して剣術を努力すれば、友情や絆も芽生え、きっと勝利につながるはずだ。」
「はい! 頑張ろうな! フレッド!」
「おお! 俺たちは二人で一人前だ!」
若いイースとフレッドは夢と希望が溢れていた。
「そうだ。おまえたちに温かい気持ちがあれば、きっとおまえたちの心にも神の御加護があるだろう。」
ミッキー神父は二人を温かく見守るのであった。
つづく。
「今日はおまえたちに孤児院周辺の魔物を倒してもらう。」
「はい! やります!」
「おお! 俺に任せろ!」
ミッキー神父はイースとフレッドにクエストを与える。
「ていうか、マジ、チュートリアルって感じ。」
「それは言わない約束でしょ。」
いきなり魔王とは戦えない。何事も最初があるのだ。
「イース! フレッド! がんばって!」
「はい! がんばる! 行ってきます!」
「シンディ! 俺の活躍を見ていてくれよな!」
好きな女の子に弱いのが男子である。
「あいつら単純だな。アハッ!」
「本当に男の子って扱いやすい。アハッ!」
ミッキー神父とシンディは仲良く微笑むのであった。
「神の御加護がありますように。」
ミッキー神父とシンディはイースとフレッドの無事を祈るのだった。
「でや!」
「どや!」
イースとフレッドは次々とモンスターを倒していく。モンスターと言ってもスライムとかゴブリンや野良犬などの弱い魔物ばかりだが。
「剣技! 二連斬り!」
「剣技! 強振!」
次々と雑魚モンスターを倒していくイースとフレッド。二人はこれまでの剣術の稽古のおかげで強くなっていた。
「この調子なら直ぐにモンスターを追い払えそうだね。」
「楽勝だな。自分の強さを疑うわ。ワッハッハー!」
しかし倒されていく雑魚モンスターの様子が少し変だった。
「倒した雑魚モンスターたちが一つに集まっていく!?」
「これは!? ハート!? いや、魂が惹かれあっているんだ!?」
一つに集合した雑魚モンスターのキメラが誕生する。
「気持ち悪い・・・・・・。」
「闇鍋かよ!?」
キメラは見たこともない異様で面白い姿をしている。
「雑魚はどれだけ集まっても雑魚だ!」
「イース! やるぞ! 俺たちで! こいつを倒すんだ!」
「おお!」
イースとフレッドと雑魚モンスターの集合体との戦いが始まる。
つづく。
「くらえ! 剣技! 二連斬り!」
「俺の得意技を受けてみろ! 強振!」
イースとフレッドと雑魚モンスターの集合体のキメラとの戦いが始まった。
「ガオー!」
しかし雑魚キメラは意外と平然としていた。
「攻撃が効かないのか!?」
「いや、効いていない訳じゃない!? こいつらのHPが高すぎるんだ!?」
HPはヒットポイント、体力。要するにスライム1匹は一撃で倒せても、雑魚10体が合体すればHPは100になるという単純な話。
「ガオー!」
雑魚キメラの攻撃。
「ウワアアアアア!?」
雑魚キメラの攻撃にイースとフレッドは吹き飛ばされる。
「いたたたたたたたた!? なんなんだ!?」
「こいつ!? 攻撃力も10倍になってやがるんだ!?」
「10倍返し!? そんなのありか!?」
ありなんです。アハッ!
「ガオー!」
強くなって調子に乗り始めた雑魚キメラ。
「や、やばい!? 逃げないと殺されるぞ!?」
「だ、ダメだ!? さっきの攻撃で足が動かない!?」
瀕死の重傷のイースとフレッド。
「ガオー!」
雑魚キメラが動けない二人に襲い掛かる。
「ダメだ!? 殺される!? 何とかしてフレンドだけでも逃がさないと!?」
「クソッ! 俺の命はどうなってもいい! イースだけは助けるんだ!」
イースとフレッドはお互いを大切に思いあった。
「ま、眩しい!? なんだ!? この光は!?」
「心に温かいものが生まれてくる!?」
窮地の二人に神の御加護がある。
「友を助けようという強い気持ち! 僕の心に友情が宿る!」
イースは友情のハートを手に入れた。
「どんな時でも仲間は見捨てない! 俺の心に絆が宿る!」
フレッドは絆のハートを手に入れた。
「神父様。ハートって何?」
「ハートは神の御加護によって人間に与えられる心だ。与えられる人間の背をっている宿命のようなものだ。」
孤児院でミッキー神父とシンディがハートについて話している。
「へえ、そうなんだ。私にもあるのかしら? ハート。」
「シンディは既に持っているよ。」
「え?」
「慈愛の心。慈しむハートだ。」
誰の心にも信念はある。それがハートとして、心が覚醒するのだ。
「私は慈愛のハートを持っているんだ。アハッ!」
自分もハートを持っていると知って嬉しいシンディ。
つづく。
「心から力が漲ってくる!?」
「これなら勝てるかもしれない!?」
イースとフレッドは心から力が湧いてきて体が動くようになった。
「いくぞ! フレッド! 僕たち二人なら、あのデカブツも倒せるはずだ!」
「おお! イース! 俺たちの心の強さを見せてやろうぜ!」
二人のお互いを信じる心がエネルギーを与えてくれる。心と心が友を信じている。信じる心が二人を強くする。二人のハートが、心が燃えているのだ。
「ガオー!」
二人の変化を感じることなく雑魚キメラは向かってくる。
「孤児院流剣技ってダサいな。」
「我流でいいんじゃねえ。」
「そうしよう。ミッキー神父じゃ剣は教えられない。」
「だな。」
二人の剣術は互いに切磋琢磨して剣術稽古で会得した剣技である。
「友を守るために! 燃えろ! 僕の友情のハート! 我流剣技! 三連斬り!」
誰もが心に宿しているハート。ハートが燃えるといつも以上の力が発揮できるのだ。
「友との約束を守るために! 吠えろ! 俺の絆のハート! 我流剣技! 大強振!」
心と心が共鳴すれば、より大きなパワーを発揮する。イースとフレッドの友情と絆、そして日々の剣術の稽古の努力の結果が出される。
「うおおおおおー!」
「でやああああー!」
二人の必殺技が雑魚キメラを消滅させていく。ハートを燃やすことで今まで以上の強い攻撃を繰り出せた。
「やったー! デカブツを倒したぞ!」
「俺たち、また強くなった感じじゃん!」
イースとフレッドは強敵を倒し自分たちが強くなったことを実感した。
「疲れた・・・・・・。」
「もう立てない・・・・・・。」
敵を倒しハートが燃え尽きたイースとフレッドはその場で倒れ込んだ。
「エヘッ。」
「アハッ。」
体力を使い果たした体は動かないが二人の顔には充実感から笑顔があった。
「zzz。」
そして、そのまま二人は眠りについた。
つづく。
「神の御加護だ! アハッ!」
ミッキー神父はイースとフレッドの話を聞いて、天にいる神は孤児院を見捨てなかったと感謝した。
「痛い!? 痛い!? もっと優しく手当てしてくれ!?」
「うるさい! フレッド! 私に手当てしてもらえるだけありがたく思いなさい!」
意外に不器用なシンディはフレッドの傷の手当てをしていた。
「イースを見習いなさい! 大人しくしてるでしょ!」
「あれは!? 痛すぎて気絶した瀕死状態では!?」
イースは先にシンディの治療を受けて、生死の境を彷徨っていた。
「雑魚キメラを倒せる剣士見習いなどおらん! おまえたち二人を国家に差し出して国に貢献させれば、孤児院に二人分の寄付がもらえる! おまえたちを育てて本当に良かった! 倍返しだ! アハッ!」
「金の亡者かよ!?」
国のために戦える兵士を育てるのは国民の義務でもあった。その分、優秀な国家騎士を育てれば育ての親に寄付金が入るという、この世界のお金儲けの方法であった。
「私も新しいフライパンが欲しかったのよね。」
「金のかかる女かよ!?」
「アハッ!」
ミッキー神父に育てられたからか、シンディと神父の性格や笑い方は似ている。
「よし! 決めた!」
ミッキー神父が何かを閃いた。
「今度の日曜礼拝はサボって、おまえたち二人を日曜剣術教室に連れていこう!」
「日曜剣術教室?」
「ダサい。」
日曜教室やカルチャー教室など若者には面白くなかった。
「何を言うか!? 現役の国家騎士様が剣術を教えてくれるのだぞ!」
「国家騎士様!」
「スゴイ! 行きたい!」
「会ってみたい! 国家騎士様に!」
しかし二人の憧れの国家騎士会えるとなると話は別で、二人の目はときめいて輝いていた。
「それなら早く傷を治さないとね。アハッ!」
「え?」
「私が慈愛の心で治療してあげるわ! 感謝しなさい! アハッ!」
「殺される!? ギャアアアアー!?」
「ほ、骨が折れる!? 骨が溶かされる!? 助けて!? 神様!?」
こうしてイースとフレッドの傷は悪化した。
つづく。
「飛天御剣流でどうだろうか?」
「俺たちにそんな大そうな剣術を教えてくれる師匠がいない。」
「北斗流とか、南斗流でいいんじゃないか? 我流よりカッコイイぞ。」
「いや、僕たち剣士見習いだし。」
「なかなか良いネーミングってないんだな。」
「だね。」
イースとフレッドはベッドの上で自分たちの剣術の流派を考えていた。
「あんたたち、いつまで寝てるのよ?」
そこにシンディが現れる。
「おまえが俺たちの骨を折りまくったんじゃねえかよ!」
「なんですって!? 私は優しく包帯を巻いてあげただけじゃない!?」
「ギャアアアアー!?」
その結果、ミイラ男が二人できてしまった。
「怖くて何も言えん・・・・・・。」
イースは生命の危機を感じるので大人しくしている。
「あ、忘れてた!? 二人ともご飯ができたわよ! アハッ!」
実はシンディは病床の二人にご飯を食べさせに来たのだった。
「ごはん!?」
イースとフレッドは顔を見合わせて恐怖する。
「シンディお得意の冷蔵庫の残り物で作りました料理! ドンドン! ピュピュ! パフパフ!」
食卓を明るく振る舞うシンディ料理長。
「ゲゲゲッ!? スライムの欠片!? ウルフの骨!? ゴブリンの脳みそ!?」
「雑魚キメラ料理じゃん・・・・・・。」
闇鍋を超える闇鍋。それがシンディの料理であった。
「さあ! とくと召し上がれ! お代わりもあるわよ! アハッ!」
「死にたくない・・・・・・。」
「シンディ、おまえ毒見はしたんだろうな?」
「大丈夫よ。毒消し草も入れてあるから。アハッ!」
隠し味は毒消し草であった。
「マジか!? って、毒消し草が入ってなかったら、口から血を吐いて死ぬレベルってことか!?」
「まあまあ、百聞は一見に如かずよ。食べてみなさいよ。美味しいから。アハッ!」
「ギャアアアアー!?」
こうしてイースとフレッドは重症化していくのであった。
つづく。
「やったー! 遂に本物の国家騎士に会える!」
「憧れの国家騎士様だ!」
イースとフレッドは国家騎士の日曜剣術教室にやって来た。
「こら! おまえら! はしゃぐな! 子供か!?」
「子供ですが、何か?」
イースとフレッドは孤児院の子供であった。
「来たぞ! 国家騎士様だ!」
そこに一人の国家騎士が現れる。
「私は国家騎士のアスガル。今日はみんなに剣術を教えに来たよ。」
「わ~い! やったー!」
子供たちは大喜び。それだけ国家騎士の人気は高いのであった。
「なんだか弱そうな国家騎士様だな。」
「きっと雑用の国家騎士様なんだよ。だから日曜剣術教室なんかに回されてるんだぜ。」
アルガスのニタニタ笑顔を振りまいている感じが、二人の強い国家騎士のイメージと合わなかった。
「それでは上段の構えから。」
「はい。」
国家騎士の指導の元、剣術の稽古が始まる。
「えい! やあ!」
イースとフレッドも剣を振って稽古に参加した。
「いいよ! いいよ! みんな将来は国家騎士になって、世界の平和のために戦おうね!」
「はい!」
国家騎士アルガスは子供たちにも大人気の優しい性格だった。
「ガオー!」
その時だった。突然モンスターの群れが現れる。
「モンスターだ!?」
「どうして魔物が!?」
「キャアー! 怖い!?」
子供たちはモンスターに恐怖した。
「みんな! 逃げるんだ! ここは私が引き受ける!」
国家騎士のアルガスは子供たちを守るために自分が魔物と戦うと覚悟を決めた。
「さすが国家騎士様だ。」
「だな。俺たちもつきあおうぜ。」
イースとフレッドも、その場に残ってモンスターたちと戦うことにした。
「んん? 何をやっている。子供は早く逃げなさい。」
「大丈夫です。僕たちは強いので。」
「そうそう。俺たち強いので。」
「はあ? 君たち、どうなっても知らないよ?」
イースとフレッドに困惑しながらもモンスターの群れを迎え撃つアルガスであった。
「くるぞ!」
「おお!」
そして戦いが始まった。
つづく。
「我流剣技! 三連斬り!」
「我流剣技! 大強振!」
イースとフレッドは次々とモンスターたちを倒していく。
「なんなんだ!? この子供たちは!? 強い!? 強いぞ!?」
国家騎士アルガスはイースとフレッドの戦いなれしている活躍に驚いた。
「僕たちは小さい頃から孤児院を守るためにモンスターと戦ってきましたから。」
「そうそう。俺たちの様な辺境の村なんて国家騎士様は守りに来てくれないからね。」
国家騎士は王都や主要都市を守っているので田舎までは守っていられなかった。
「もしかしたら私なんかよりも君たちの方が強いんじゃないか?」
思わずアルガスは子供たちの活躍にお世辞を言った。
「やったー! 国家騎士様に褒められた!」
「無駄口を叩いてないで、モンスターを退治しよぜ!」
「おお!」
再びイースとフレッドはモンスターに突撃する。
「なんて逞しい少年たちなんだ!? この子たちは将来、国家騎士になれるかもしれない!?」
アルガスは二人の少年のわんぱくさに心がときめいていた。
「くるぞ! 合体タイムだ!」
「気を抜くなよ!」
倒されたモンスターたちが一つに集合していく。この世界には不思議なことがあり、どんなモンスターでも合体できてしまう恐ろしい世界なのだ。
「ガオー!」
雑魚キメラ2が現れた。
「出たな! デカブツ!」
「また闇鍋かよ・・・・・・オエー。」
イースとフレッドは何度見ても雑魚キメラを気持ち悪がる。
「君たちは!? 雑魚キメラを知っているのかい!? こいつはモンスターを一定数以上倒さないと現れないんだが!?」
「前に、こいつも倒しましたよ。」
「ハートに火をつけてね。」
「え!? 子供が雑魚キメラを倒しただって!?」
アルガスは驚いた。雑魚キメラは無念に敗れたモンスターの魂の集合体。少年二人がかりで倒せるようなレベルの敵ではなかった。
「なんなんだ!? この子供たちは!? なんで雑魚キメラを前にして、こんなに余裕で楽しそうな表情ができるんだ!?」
国家騎士でも倒すのが一苦労な雑魚キメラ。それと戦うのが楽しくて仕方がないイースとフレッド。
「いくぞ! フレッド!」
「やっちゃえ! イース!」
雑魚キメラ2との戦いが始まった。
つづく。
「くらえ! デカブツ! これが僕の三連斬りだ!」
「粉々に砕け散れ! 我流剣技! 大強振!」
「ガオー!」
イースとフレッドは雑魚キメラに襲い掛かる。
「少しはこいつも強くなっているのかな?」
「キメラの組み合わせ次第だろうな。」
「組み合わせ?」
「前の雑魚キメラ1はスライムとウルフとゴブリンの集合体だった。今回はリスや猿、葉っぱとかの雑魚キメラ2。性能的には変わらないだろう。」
「雑魚は雑魚って奴ね。」
イースとフレッドは自身の強さに油断していた。
「この調子で狩りまくれば倒せるはずだ!」
「一気に決めるぞ! イース! ハートを燃やせ!」
「おお!」
イースとフレッドは心に火を着火した。
「うおおおおおー! 燃えろ! 僕の心よ!」
「でやああああー! 吠えろ! 俺のハートよ!」
戦うやる気の炎が二人のハートに点火した。
「なに!? この子たちは、まだ少年だというのにハートに火をつけることができるというのか!? バカな!? あり得ん!? 子供がハートを使いこなすなど!?」
国家騎士アルガスはイースとフレッドのハートの強さに衝撃を受けた。
「ガオー!」
そうとは知らずに雑魚キメラ2が突進してくる。
「友を守るために! 燃えろ! 僕の友情のハート! 我流剣技! 三連斬り!」
「友との約束を守るために! 吠えろ! 俺の絆のハート! 我流剣技! 大強振!」
二人はハートに火をつけて雑魚キメラ2に攻撃を加える。
「ガオー!?」
雑魚キメラ2は断末魔の叫びをあげる。
「やったー! 僕たちの勝利だ!」
「見てくれましたか? 国家騎士様!」
イースとフレッドは全力を使い切ったが雑魚キメラ2を倒した。
「まだだ!」
しかしアルガスは二人を褒めなかった。
「え?」
その時だった。
「ギャアアアアー!?」
二人に向けて灼熱の炎が放たれる。
つづく。
「大丈夫か!?」
アルガスが瞬時に二人を炎の中から救出する。
「国家騎士様!?」
「もう少しで焼き人間になる所でした。助けてくれて、ありがとうございます。」
二人は小火傷で済んだ。
「お礼はあいつを倒してからだ。二人はゆっくり休んでいろ。」
ヘラヘラ優しく笑っているアルガスが初めて国家騎士らしい顔をする。
「見せてやろう。私の、国家騎士の実力を。」
アルガスは二人の元から離れていく。
「国家騎士様の雰囲気が違う!?」
「頼りないと思っていたのに、今は頼もしく思える!?」
二人は初めて国家騎士の戦いを目にする。
「雑魚キメラが、本当のキメラになって炎を吐いたか。」
「ガオー!」
国家騎士アルガスはキメラと対峙する。
「ボオー!」
キメラが炎を放つ。
「弱気者を守るために。世界の平和を守るために。そのために戦う覚悟はある!」
アルガスが静かにハートに火をつける。国家騎士にもなると弱火で直ぐに着火できるのだ。だからイースとフレッドのように全てのエネルギーを使い果たさない。
「炎斬り!」
アルガスの剣がキメラの放った炎を切り裂いた。
「炎を斬った!?」
「すごい!? これが国家騎士様の実力か!?」
少年二人は国家騎士の強さを初めて見た瞬間であった。
「私は全ての悪を斬る! それが私のハートだ! キメラ斬り!」
アルガスの剣がキメラを一撃で真っ二つにする。
「ガオー!?」
キメラは今度こそ倒された。
「強い! この人、本当は強かったんだ!?」
「カッコイイ! 俺、アルガスみたいな国家騎士になる!」
イースとフレッドは国家騎士アルガスに憧れた。
つづく。
「国家騎士様みたいな国家騎士になります!」
「アルガスが小隊長になったら、隊員になってやってもいいぜ!」
イースとフレッドは国家騎士アルガスの活躍に感動していた。
「あはははは・・・・・・それはどうもありがとう。君たちが国家騎士になる日を楽しみにしているよ。じゃあね。」
握手を交わしてアルガスは去って行った。
「こらー! おまえたち! 国家騎士様を呼び捨てにするとは何事だ!」
「あ、逃げた神父様だ。」
「最低。子供の俺たちでも戦ったのに。」
「私は子供たちを逃がしていたのだ!」
「そうしとこう。」
「お腹も空いたから帰るべ。」
「シンディにお土産を買って帰らないと殺される!?」
「ギャアアアアー!? 死にたくないよ!?」
こうしてイースたちも孤児院に帰って行った。
「何? キメラが倒されただと?」
ここは魔界。魔王ダーロが使い魔から報告を受けている。
「はい。恐らく国家騎士にやられたものと思われます。」
「クククククッ!? 国家騎士め!? 許せん! 許さんぞ!」
魔王ダーロの怒りが頂点に達する。
「世界征服だ! 人間を皆殺しにしてやる! 人間界を第二の魔界に変えてやるのだ!」
魔王の世界征服宣言。
「手始めに日本の姫をさらってやる! そして魔王の妃にしてやるのだ! ワッハッハー!」
そういえば国の名前は現代だった。魔王の野望が動き始める。
「魔王様! 万歳! 万歳! 万々歳!」
手下の魔物たちは大喜び。
「ニコニコ。」
王都に戻ってきた国家騎士アルガスが気持ち悪く楽しそうに一人で笑っている。
「あの一人で笑われていても気持ち悪いんですが・・・・・・。」
「隊長、何か楽しいことでもあったんですか?」
そこら辺の騎士が尋ねてみた。
「おまえたち、初めて雑魚キメラを倒したのはいつだ?」
「え? 雑魚キメラ? そうですね。国家騎士に受かってからですか?」
「同じく。国家騎士になってハートの燃やし方を勉強してからです。」
これが太平の世の甘え切った国家騎士の実態だった。
「今日、私は子供二人がハートを燃やし雑魚キメラを倒すのを見たんだ! ワッハッハー!」
これがアルガスが機嫌が良かった理由である。
「子供が雑魚キメラを倒した!? また~冗談を。」
「そうですよ。親衛隊長が老眼ですか?」
「違うわい!?」
子供が雑魚キメラを倒した話を誰も信じなかった。
「あの子たちの将来が楽しみだ。」
アルガスはイースとフレッドが国家騎士になる日を楽しみにしていた。
終わる。
ハートに火をつけろ! 渋谷かな @yahoogle
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