第2話

 うららかな春の日差しがさす今日、俺六辺香真白は高校生になりました。


 もちろん志望校としてた高校には余裕で合格。あとはあの時にあった彼女と再会を果たすだけとなった。


 いったい彼女は合格しているだろうか?もしもこことは別の高校に合格していたらどうしよう。そうなると俺の高校生活は一気に灰色の高校生活へと変わってしまう。どうか彼女がこの学校にいますように。全力で神に祈った。なんなら初詣の参拝では自分の合格よりも先に祈った。


 昇降口にて自分のクラスを確認し、教室に入る。このクラスには彼女の名前はなかったから、他のクラスにいるのかもしれない。今日の予定が終わったらクラス表をしっかりと確認しなくてわ。


 新入生が体育館に集まり入学式が始まった。



「続きまして、新入生挨拶。新入生代表風花天花」



 名前が呼ばれた時、息を飲んだ。あの時の女の子が壇上に立つ。ああ、あの時と変わらないきれいな顔と髪、思い出の中の彼女よりも少しだけ大人っぽくなっただろうか。でも、確かに彼女はこの高校に入学していた。それだけで高校受験を頑張った甲斐があった。彼女は俺のことを覚えているだろうか。


 入学式の後のホームルームは全く頭に入ってこなかった。ずっと彼女のことを考えていた。どうやって声をかけようか。連絡先も聞かなきゃ。そんなことを考えていたらいつの間にか終わっていた。


 教室の前が嫌に騒がしい。なにかあったのだろうか。いけないけない、俺はあの子に会いに行かなくては!


 教室のドアが開かれた音がした。


 まるで去年の学校説明会を再現しているかのような光景だった。肩まで伸びた綺麗な黒髪、ぱっちりとした二重、小さな鼻に薄い唇。小柄な体格にメリハリのとれたスタイル。風花天花が間違いなくそこに立っていた。


 天花はキョロキョロと辺りを見回して、俺と目が合うと一直線にこっちに向かってくる。途中何人かの男に声をかけられても、まるで何事もなかったかのように無視してこちらに歩いている。俺の机の前に立つと、彼女はにっこりと笑ってこう言った。



「久しぶり!あの時以来だね!改めて自己紹介させてもらうね。私の名前は風花天花。これからよろしくね!」



 ああ、彼女は俺のことを覚えてくれていたんだ。あまりの嬉しさに叫び出しそうだ。どうかこれが夢ではありませんように。そう思いながら俺は笑顔で彼女に答えた。



「久しぶり!俺は六辺香真白。こちらこそこれからよろしく!」



 初詣に行った神社の神様。俺はあんたのことこれから一生拝み続けるぜ。



「真白、合格したら伝えたいことがあったんだ。聞いてくれないかな?」


「え、そんなに大事なことなの?」


「///うん、とっても大事なこと。でもここだと言いにくいから場所を変えてもいいかな?」



教室にいる生徒がザワザワと騒ぎ出す。そりゃあ入学初日にいい感じの雰囲気を醸し出す2人組がいるのだ。当然だ。まして、そのうちの1人は学年主席で新入生挨拶をした美少女だ。騒がない方がおかしいだろう。



「分かった。今日はもう終わりだし、どこか話しやすいところで話そう。」 


「うん、ありがとう!じゃあ早速行こう!!」



 そう言って天花は俺の手を取って教室を抜け出す。そのまま迷いなくどんどんと進んでいって、学校の屋上へと続く扉の前までたどり着いた。どうやら、ここで話すことに決めたらしい。



「真白、さっきもいったけどこれから3年間よろしくね?」


「いや、こちらこそだろ。それよりも俺のこと覚えててくれたんだ」


「当たり前だよ。だって、あの時あんなに優しくしてくれたんだもん。だから、入学できたら絶対に真白に伝えたいことがあったんだ。聞いてもらってもいいかな?」


「もちろん!」


「ありがとう。」

「真白、あの時真白に一目惚れしました。困ってた私に親切にしてくれて、あの時本当に嬉しかった。だから私と付き合ってください!」



 そう告げた彼女は頬を真っ赤にして不安そうにしながら俺のことを見つめていた。ああ、まさかこんなことがあるなんて。今日俺は死ぬのだろうか?俺のことを覚えてくれていただけでなく、告白までしてもらえた。こんなに幸せなことがあっていいのか?返事なんて考えるまでもない。



「天花、こちらこそよろしくお願いします!!」



 高校生活初日。俺の青春はキラキラコース一直線が決定した。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る