第11話≪届いた手紙≫

 ふと目が覚め、ユンヌはゆっくりとベッドから体を起こした。

 目にかかっている髪を横に流すと、眩しさに一瞬目を細めた。

 窓からは光が差し込み、外は明るくなっている。

 ユンヌは、昨晩ベッドに倒れ込んでから朝になるまで、ぐっすりと眠ってしまったことに気付いた。

 時計を見ると、朝の六時三十分を示していた。

 いつもエリナが起こしに来てくれる時間の七時まで、まだ時間に余裕がある。

 朝には弱く、いつもならこの時間に起きることは無い。 

 しかし、昨日は夕食も食べずに眠ってしまう程疲れていて、その分早く就寝できたから、こんなにも早く起きれたのだろう、とユンヌは思った。


 とりあえず、ユンヌは身支度を済ませることにした。

 シャワーを浴び、髪を乾かし、寝癖を直した。

 そして、部屋着から制服へと着替え、姿見で全身を確認した。

 

 (……うん!大丈夫)


 着替え終わった後は、簡単にベッドメイキングを済ませた。

 そして、壁に貼ってある時間割を確認しながら、教科書や道具を準備し、鞄に入れた。

 しばらくするとトントン、と部屋の扉を叩く音が聞こえた。


「はーい」


 ユンヌは、声を出して扉を開ける。

 扉の前には、隣室のエリナが立っていた。


「おはようユンヌ!起こしに……と思ったけど、もう起きてたんだね。珍しいじゃん」

「おはようエリナ、少し前に目が覚めたの」

「そうなんだ。私、まだ準備できてないや……。すぐに準備してくるから、いつもの時間にここで待ち合わせ!」

「わかった、また後でね」


 エリナが隣の部屋に戻ると、ユンヌも扉を閉めた。

 ほとんど身支度は済んでいたため、窓を開けて部屋の空気を入れ換えることにした。

 朝日を浴びながら、腕を真上に挙げ体を伸ばす。


「んー!今日も良いお天気な気がする」


 そう思っていた時、こちらに向かって何か飛んでくる物が見えた。


 (何、あれ。)


 注意深く見ると、それは白い小鳥だった。

 小鳥は、迷うことなくユンヌのの部屋の窓際に止まり、ユンヌを見つめた。

 ユンヌは、その小鳥に手を差し出した。

 小鳥は、差し出された手に乗ると、次の瞬間、その姿を白い封筒の手紙に変えた。

 少し驚いたが、ユンヌはその手紙を手に取る。

 裏面の宛名には、“ユンヌ・エスプリット様”と書かれていた。


 (私宛の手紙?)


 表も確認してみたが、差出人は書かれていなかった。

 少し不安だったものの、ユンヌは封を開けることにした。

 封筒の中には、二つ折りの便箋が一枚だけ入っていた。


『ユンヌ・エスプリット様

本日昼休み、食堂横の温室にてお待ちしております』


 と、だけ書かれていた。


 (イタズラかな……?)


 例えそうだとしても、かなり手が込んでいるとユンヌは思った。

 何故なら、指定された人に直接、しかも小鳥の姿に変えて届けるという、高度な魔術まで使われているからである。


 手紙は、一般的に人の手によって届けられる。

 しかし、中にはこのように手紙の姿を変えて届けたい相手に直接飛ばす人もいると言う。

 指定した相手に届けるというのは、並大抵のことではない、と以前祖母に教えてもらったことがある。


 (それに、これ何だろう?)


 封筒には封蝋が施されており、何かの模様が刻まれていた。

 手紙の中にも同じ模様があった。

 その封蝋を見ていると、再び扉をノックする音が聞こえた。


「ユンヌ、お待たせ!準備できたから、朝食食べに行こうよ!」


 部屋の外から、エリナの呼ぶ声が聞こえた。


 (エリナに聞けば、何かわかるかも)


 そう思ったユンヌは、窓を閉めるとその手紙を鞄に折れないようにしまい、鞄を手にして部屋を後にした。

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