第8話≪選ばれた理由≫
「君が精霊術士であることはわかった。話してくれてありがとう」
そう言い、ルイスは改めて話を再開した。
「話を戻そうか。君をここに連れてきたのは、私が君を|Ⅰ(エース)として任命したからだ。いや、正しくは任命しようと考えていると言った方が良いだろう。それについては理解しているだろうか」
「えっと……はい。そう、言われたのは覚えていますが……、どうして、私なのですか?」
「自然な問いだね。勿論、君が精霊術士という希少な存在であるということも理由の1つではある。」
「そうね、精霊術を使える生徒はこの学園でも少ないもの。さっき司会をやっていたセツカもその一人なのよ?」
あの黒髪の女子生徒のことだろうか。
ステージ上に上がってからというもの、こちらをずっと見ていたため、怖い人という印象がある。
「先程も聞いたとは思うが、我々|生徒会役員(ナンバーズ)は、成績優秀の者、ある能力に秀でた者、稀有な能力を持つ者等、様々な力を持った者達で構成されている。無論、君を選んだのはその資格があると思ったからで、その──」
「ま、待ってください!」
ユンヌは、ルイスの話を切った。
「確かに、私は精霊術が使えますし、それは珍しいことなのかもしれません。でも、私は入学したばかりですし、成績が良い訳でもありません……」
(だって、まだ入学したばかりだよ?なのに、学園トップの人達の仲間入りだなんて、何かの間違いにしか思えないよ。それに、私は……。)
「だが、君は──」
ルイスが何かを言いかけた時、「セツカ・アマナ、入室の許可をお願い致します。」と、扉の外から声が聞こえた。
「セツカか、入ってくれ」
ルイスが許可を出すと扉が開いた。そして、黒髪の女子生徒、セツカ・アマナが部屋に入ってきた。
「失礼致します。|ⅩⅢ(キング)、先程のホールでの件について、お話を伺いたく。……どうしてあなたがここにいるのですか?ここは、あなたが入室して良い部屋ではないはずですが。」
セツカは、ユンヌの方を見ながら、やや強めに言った。
「ぁ……、すみません……」
その鋭い視線、氷のような冷たい眼差しに身がすくんだ。
(怖い……)
「ユンヌ、あなたは|Ⅰ(エース)なんだからこの部屋にいて良いのよ?セツカ、そんな言い方無いんじゃない?」
「そうだ、堂々としてればいいんだぜ」
ミラとジュンは、ユンヌへのセツカの対応にフォローをいれた。
「お二人とも何を仰っているのですか?この子は、まだ正式に|Ⅰ(エース)と認められた訳ではありません。ですから、この部屋に入ることは禁忌なのですよ」
セツカは剣幕を強くして言った。
「あなたも、いつまでここにいるつもりですか?早く出ていきなさい」
邪魔だと言わんばかりの視線を、再度ユンヌに向けた。そして、言い放たれた言葉は、氷柱のように鋭く体に刺さる様な感じがした。
その感覚と場の空気、視線に耐えられなくなったユンヌは立ち上がり、逃げ出すかの様に|王の部屋(シークレットルーム)から飛び出した。
セツカを一度見ると、ユンヌの後をレムもまた追い掛けていった。
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