第7話≪召喚と精霊②≫
ユンヌの左横に現れた狼の姿をした精霊は、そのままユンヌの足元に移動し、すり寄って甘える仕草をした。
「ふふふ、レムったら……」
そう言いつつ、ユンヌはその場にしゃがみ、レムの頭を軽く撫でた。
「それが、ユンヌの精霊なの?」
ミラがユンヌに聞いた。
「はい。この子はレムと言います」
ユンヌは、足元に控えるレムを見ながら説明した。
「俺、初めて間近で精霊見た……」
「僕も初めて見たよ」
「犬……いや、狼みたいだな」
「それが見た目に一番近いわね。精霊って動物の姿なのね。知らなかったわ」と、三人は口々に感想を言った。
「必ずしもそうとは限りませんが、この子は動物に近い姿の精霊ですね。レム、この人達は、私の先輩達だよ」
そう言うと、レムはユンヌ以外の三人を見渡し、頭を軽く下げ会釈をした。
「この子、今よろしくってしたわ!賢いのね~!ねぇ、触っても大丈夫かしら?」
ユンヌとレムを交互に見ながらミラが聞いてきた。
「レム、良いかな?」
ユンヌはレムに確認する。
レムは軽く頷き、ミラに向かって少し近づいた。
「良いの?ありがとう!初めまして、私はミラって言うの。あなたはレムって言うのよね?よろしくね」
ミラはレムの頭を撫でながら挨拶をした。
レムもミラは大丈夫だと判断したのか、気持ち良さそうに撫でられている。
「この子、とっても良い子だわ~。ふふ、可愛い。それに綺麗な毛並みだし、もふもふね……」
ミラは、レムとしばらく戯れることにしたようで、「もふもふだわ……最高ね」と呟いている。
もふもふが好きなのだろうか?
ミラがレムと戯れている間、ルイスはユンヌに話しかける。
「君の質問に対し、精霊は頷きを返していた。ということは、人の言葉を理解できているんだね。話すことはできるのかな?」
「レムは、人の言葉を理解することはできますが、話すことはできません。でも、中には人の言葉を話す精霊もいますよ」
「なるほど。では、人の言葉を話していないのに、君はどうして精霊の言いたいことがわかるんだい?」
「そうですね……。確かに人の言葉は話しませんが、考えていることは何となくわかるんです。だから、こうしたいのかな?というのを感じ取って会話している、のだと思います」
そう言うと、ルイスは、興味深いと感心しながらレムの方を見た。
丁度その時ジュンは、ミラに習い、レムを撫でようとしていたが、そっぽを向かれていた。
「俺はダメなのかよ……」
「すみません、あまり人に馴れていないからだと思います。きっと何回か会えばレムも馴れると思います。……だから、気を悪くしないでください……」
「あぁ、フォローありがとな。そうだな、これから少しずつ関係を築けば良いことだよな!」
ジュンは前向きに考えることにしたようだ。
そして、その間ずっと戯れていたミラは満足したのか、「ありがとう」と一言レムにお礼を言い、ソファに座り直した。
レムは私の所に戻り、足元で丸くなった。
「ごめんなさいね、ルイス。話を切ってしまって」
「いや、構わないよ。確認することの1つだったからね」
(確認すること……?)
何を確認されるのか……少し不安になった。そういえば、何故自分が|Ⅰ(エース)に選ばれたのか、その理由を聞いていない。
話を再開するにあたり、レムを精霊界に戻そうかと悩んだ。
しかし、レムが側にいてくれることで心強いのもある。
だから、戻すのはもう少し後にしようと思った。
(レム、もう少しだけ付き合ってね)
ユンヌは、心の中でレムにお願いした。
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