第4話 曖昧な景色

彼女からのメッセージは大概夕方になると送られて来る。

返信するとあっと言う間に既読が付くのは昔からだ。仕事終わりに電車の中でスマホをいじっているのだろう。みんな同じなんだなと思う。

僕だってそうだ。

電車に乗ってまずする事。それはスマホを開く事。


『明日会えない?』


彼女からのメッセージを受け取って、僕はアプリを起動した。

タスク管理帳に入れたスケジュールを確認して返信する。


『明日ならOK、20時くらいに家にいてよ』


すぐさま既読が付いて返事が来た。


『大事な話があるから、家じゃなくてマノンにしようよ』


マノンと言うのは二人の馴染みの喫茶店で、そこのクロックムッシュは絶品だ。だけど最近は全く行っていない。

僕が了解すると、彼女からは『ありがとう』の文字だけが送られて来た。スタンプも顔文字もなくて、ちょっとした違和感に僕は困惑した。


終電の満員電車。

いつも通りの曖昧な景色が僕の前を通り過ぎて行く。掌のスマホをポケットにしまい込んで、僕は目を閉じた。

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