第3話:冒険者アイアンハート
「本当に申し訳ないです、お陰で助かりました。
本来なら全財産を差し出してお詫びすべきなのですが、それでは僕達も生きていけなくなってしまいます。
今日一日荷物持ちをさせていただきますので、それで勘弁してください」
私達が助けた冒険者パーティー、アイアンハートのリーダー、アルフィが平身低頭で謝ってきます。
思っていた以上に善良な子達のようです。
まだ冒険者になって一年の、十四歳前後の子供達です。
少しでも早く稼げるようになりたくて、つい焦ってしまったのでしょう。
こういう子達なら、同じ過ちを繰り返す事はないでしょう。
「分かりました、今回はギルドにも報告しないであげます。
その代わり、貴男たちから申し出たように私達が斃した獲物を運んでもらいます。
メルスリア、モンスターを魔法袋に入れてみてください」
私の言葉を聞いて、アイアンハートのメンバーが驚いています。
魔法袋が使える魔力持ちは非常に少なくて、とても貴重な存在なのです。
普通魔法袋が使える冒険者は、どれほど未熟で幼くても、トップや中堅の冒険者パーティーに好待遇で迎えられます。
私達のような、弱小に見えるパーティーに、魔法袋使いがいる事はありません。
魔法袋が使えるのなら、商家というもっと安全な就職先があるから、そもそも冒険者になる魔法袋使いが極端に少ないのです。
「すげぇええ、あんな沢山の魔狗が全部入っちまったよ」
「羨ましいよな、俺達の中に魔法袋使いがいればなぁぁ」
「馬鹿言わないでよ、もし私が魔法袋使いなら、そもそも商家に就職しているわ」
「そうよ、冒険者になるとしても、トップパーティーに入っているわよ」
「それもそうか……」
アイアンハートのメンバーが、メルスリアの魔法袋の容量にとても驚いています。
メルスリアは聖女ですから、その魔力量は膨大で、それに応じて魔法袋の容量も膨大なのです。
まあ、私の方がメルスリアよりも魔力量が多いのですけどね。
下手に全力を明かしてしまったら、多くの冒険者パーティーからの勧誘が鬱陶しいので、メルスリアに戦闘力がつくまでは、適当な量に見せかけています。
「次はメルスリアが風弾を使ってモンスターを斃してください。
私が防御魔法で結界を創りますから、モンスターの攻撃は心配いりません。
一撃目はじっくりと後頭部を狙って、余計な傷をつけないようにしてください。
一撃で斃せなかった時は、傷を気にせず当てやすく柔らかい腹を狙ってください。
まずはレベルを上げて、能力を向上させていきましょう」
「はい、エリーゼ御姉様」
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