破竹の勢いで!
2セット目が始まり、現在のスコアは8-0。
俺が7連続でサービスエースを取ったのが最初の7点。次の1点ではサービスエースこそ決めることはできなかったが、雀宮先輩のスパイクを高松がレシーブして、それを大川が高めのトスに変えた。
そのトスを打ったのは高松ではなく俺。俺のセンターラインギリギリからの跳躍から打たれたバックアタックは虎町先輩を吹き飛ばして俺たちの得点へとなった。
セット間で大川は高松の速攻を多く使うと言っていたけど、まだその時では無かったようだ。
そうして俺の8連続得点で体育館は熱狂していた。
それには相手チームも堪えるようで、徐々に焦りが見えてくる。
そして今大川のトスが放たれた。
相手のブロッカーたちは慌てて俺の前へと立ちはばかろうとするが、時すでに遅し。
大川のトスは今までのそれとは違って高さも低く、弾速もかなり速い。
「小鳥遊! 頼んだぞ!」
大川がそう叫ぶのが聞こえた。
だけどお前の狙いはそうじゃないんだろ?
俺の方へと向かって放たれたトスはフルスイングしてスパイクを打とうとする俺の手の平。
その少し前を過ぎていった。
「うし、キタァ!」
俺の先を飛んでいったトスは、スピードを緩めることもなくその弾道の先へと跳躍をしていた高松の元へと飛んでいった。
そして高松のバックアタックは誰にも。それは相手のチームだけでなく体育館の誰にも警戒されることがなく、体育館の床へと突き刺さった。
「ナイスキー高松」
「サンキューな小鳥遊。良すぎる囮だったぞ」
「本当にそうだな。トスを上げた俺自身も小鳥遊が打つんじゃないかと思ったよ」
これで9点連続得点。相手コートでは焦りが先程よりも色強く出ているように思える。
俺たち6人は軽く言葉を交わしてからポジションに着いた。
そして俺には2セット目で10回目となるサーブという仕事がある。
本来ならホイッスルからサーブトスまでの時間をセットの中で少しづつ早くしていくというのが俺の戦い方なんだが……
(今はそれも必要なさそうだな)
何度も言うことになるが、相手の焦りはコートの反対側にいる俺にも分かるくらいには出ていた。
その状況なら少しでもサーブまでの時間を相手に与えて焦りを更に大きいものにしていくべきだろう。
そして5,6秒くらいが経ったのを見計らった俺は思い切りスパイクサーブを打った。
10本目となれば、どんなに良い回転を掛けていようが簡単にレシーブされる。
そして惜しくもレシーブされてしまった俺のサーブはそのままスパイクまで繋げられて行って……
「こんの生意気な後輩共が!」
そう自分の不満を表す雀宮先輩のスパイクで終結を迎えた。
これでも得点は10-1。俺達2-Cに余裕があることには変わりはない。
1セット目で惨敗したからには2セット目では大きく差をつけて勝ちたいところである。
そうすれば最終セットとなる3セット目では、こちら側に気分的に余裕を持って臨むことができるからだ。
「さてさて。生意気な後輩たちには随分舐められたもんだし…… 次は俺たちの番だろ!?」
雀宮先輩は2階に向ってそう言った。
そうすると2階にいた3年生からは雀宮先輩に同調するような声援が聞こえてきた。
1年間俺達よりも長い時間を過ごしてきたからなのか。そしてバレー部が活躍するごとに3ん遠征を中心に応援に行っていたおかげなのか、そこには1,2年生が知ることもなかった団結が感じられた。
3年生の元バレー部員だろうか。そのような風貌、分かりやすく言ってしまえば身長が高く体も大きめの生徒たちが中心になって声援を送っている。
だけど俺達も負けていないらしい。
「……ふぅ。さあお前ら! 勝つのは俺達だろー!?」
既にこのチームのムードメーカーとなっていた高松がそういう。
そしてそれに大川も反応を返す。
「よっしゃ! お前ら、絶対に勝つぞ!!」
そういえば2階からは2年生のグループ複数から3年生と同様に声援が聞こえてくる。
2年生の場合はそれを率先しているのは1回戦目での対戦相手だった相田であった。
そんなことはどうでも良いのだが、相互の応援合戦は試合が進むにつれて激しさを増していった。
今や2,3年生は1年生を応援に取り入れるための戦いをしているようにも見える。
そうこうしている内に2セット目も終盤を迎えようとしていた。
得点は23-8。断然俺たち2-Cが有利だ。
だけど体力はかなり使っており、俺もかなり疲れている。
それでも決勝戦は続いていく……
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