2人のウラで!
◇千秋 奈々◇
(……これってマジなの!?)
私は今。めっちゃ驚いている。どうしてかと言うと今開いている雑誌とインターネットのページからあり推理が完成したからだ。
『中学最強アタッカー「小鳥遊翔」』
私が定期購入しているバレーボールの月刊誌。その一昨年の11月の記事にはそう書かれている。
その時期は私たちが中学3年生だった時のもので、記事には今の小鳥遊君ととても良く似た人物がドアップで写っていた。こうやって見ると小鳥遊君って結構イケメンなんだ……
私は昨日家に帰ってからこの雑誌を読み返していた。普段読み返そうなんて思うことは無いから部屋中ひっくり返しての捜索となったけどついに見つけることができた。そうやって見つけた記事を信じるのだとしたら、小鳥遊君は全日本中学選抜のキャプテン、エースを務めていたことになり、それは確かに私が昨日の昼休み小鳥遊君を尾行して彼と琴乃葉ちゃんが話していた内容と一致するものでもあった。
それから3か月後の同じ雑誌の記事。見出しから一語一句逃すことなく読んだけどその記事——全日本中学選抜の試合結果の記事には小鳥遊君の名前は一切載っていなかった。
それがどうしてなのかはこの雑誌には載っていなさそうだから後で探すとして、次は小鳥遊君と琴葉ちゃんの関係かな……って私は思ったから早速調べ始めることにした。
そんなの見つかるわけないよね……って思っていたのに、2人の関係性を示唆するものは簡単に見つかった。
『美園学園中学、全日本チャンピオン』
私がついさっき見つけた小鳥遊君の特集の記事からさかのぼること2か月。こんな記事を見つけた。それは一見大したことも書かれていない記事で、この記事の掲載された当時の全日本中学の決勝で勝った中学校、美園学園中学校についての特集が組まれている物だった。
聖園学園中学校というのはバレーをやっている者なら誰だって知っていると言っても過言ではないほどの無類の強さを誇るバレーボール部を持っている学校だ。
そんな学校の記事に小鳥遊君と琴葉ちゃんがチーム全体の集合写真と思われるものに一緒に写っていた。
調べてみると、この学校には確かに2人とも在籍していたのがインターネット上からも調べることができた。
ということは、2人が中学時代からの先輩後輩の関係であるということで昼休みにいつも一緒にいても何らおかしくない証拠となった。
それでも「どうして2人が県外の学校に?」とか「小鳥遊君はどうして最終的な代表メンバーになっていないのか?」という疑問は残る。
まぁ一番気になっていた2人の関係性という疑問が解消されたから、それについては追々ゆっくりと調べていくことにしよう。
(まぁ、小鳥遊君が全日本中学選抜でめちゃくちゃ大暴れをしていたのは百歩譲って分かるとして……今の彼にはそんな雰囲気が微塵も感じれないんだけど!?)
私の目線の先には授業が退屈だったのか、余裕で机に突っ伏している小鳥遊君の姿があった。
今まではどうしてあの授業態度で学年の上位20名には必ず張り出されていたのか理解に苦しんだけど、彼が『美園学園』の出身だと知った今はそう疑問にも感じない。
「……千秋。さっきからどうしたんだ?」
私が小鳥遊君を探るように見つめていたら、それを不審に思ったらしい隣の席に座る大川が話しかけてきた。まったく。授業中なんだから集中してよね。え、お前が言うなって? 私は特別よ。いつもは集中しているし。
「大川。このクラスにバレーの日本代表がいるとしたらどうする?」
「間違いなくスポーツ大会で頑張ってもらうよなぁ……」
大川は代表としてスポーツ大会のチーム分けをしたこともあって優勝を狙っているそうだ。ちなみに私のクラスでバレー部は合計で3人いる。とは言っても私はカウントしないから実質2人しかいない。
そんな状況でも勝ちに行きたいと大川は本気で思っているらしい。
とは言いつつも、理想と現実はまったくの別物。正直に言って、今回のスポーツ大会のメンバーはバレーで勝てる要素が1つもない。もしかしたら小鳥遊君がとは私も思ったけど、彼にそれを求めるのは自分勝手すぎるようにも思える。
(結局、大川は大川自身の実力で頑張らなきゃいけないのだよね……)
「なぁ千秋」
「ん? どしたん?」
「俺全然勝てる気がしないんだけど……」
「まぁ、何とか頑張ってみれば?」
大川は私の言葉を聞いて数秒置いてからこう続けて言った。
「それ、助言になっているようで全くなっていないんだよなぁ……」
大川はその後に「今日からみんなを練習に誘うつもりだから、手伝ってくれないか?」とも言ってきた。
私はそれに承諾して、もしかしたら小鳥遊君のプレーが見れるかもとも期待してしまった。
その後も少し話を続けていたら、先生に怒られてしまい私たちの密談は終わることとなった。
(小鳥遊君の過去に一体何があったというんだろう……)
◇小鳥遊 翔◇
(……めっちゃ目線を感じるんだけど……)
古典の授業の最中のことだった。俺は誰かに凝視されているような気がして、とても授業には集中できるような気がしなかった。まぁ、集中していないのはいつものことなんだけどね。
目線を感じた俺はそれから逃れるように机に突っ伏して、オペレーション『寝ているフリ』を実行した。これは俺が2年間で習得した特技の1つで、その内容は言葉の通り寝ているフリをすることだ。こうすることでリラックスをすることができ、周りからの目線や悪口にも耐えれるようになるという代物だ。欠点があるとすれば、寝ているフリをしている内に本当に寝てしまうこと。
俺はこの授業の大半で目線を感じていたたまれなくなったので、その時間を寝たフリをしてやり過ごした。
チャイムの音と同時に起きたフリをして、トイレにでも逃げようかと思ったその矢先。
「小鳥遊ちょっといいか?」
俺の目の前には大川が立っていた。大川は比較的高身長な俺ともほとんど同じ目線で、その手足は無駄のない筋肉で占められていた。
そして、奴は陽キャだ。絶対に許さん。許さない理由は奴が陽キャだから。それだけで充分。
それにしても大川が俺に何の用だろうかと気になり「何の用だ?」と聞いてみると。
「今日の昼休むさ。スポーツ大会のバレーメンバーで練習しないか?」
「いやです」
「まぁまぁ、そうとは言わずに」
大川のまさか過ぎる誘いがあった。いやホントにいきなり過ぎるんだよ……
「っていうか俺、体育着持ってないし」
「ここにウェアがあります」
「体育館用のシューズも持ってないし」
「お古だけどここに俺のバレーシューズがあります」
え? なんなのこれ? 俺の退路が完全に潰されているんだけど……
「……ワカリマシタ」
「マジか!? サンキューな!」
なんて白々しい。そうも思ったけど、これで久しぶりに誰かとバレーをやるなと内心ワクワクしてしまった。公園のガキどもはノーカンだ。
(取り敢えず、琴乃葉にはこのこと伝えておくか……)
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先程まで前話と同じものを投稿していたようです。
本当に申し訳ありませんでした…… 今後はこのような事の無いように気を付けていきたいと思います。
まさぽんたさん、いつも応援やフォローありがとうございます。今回は本当に助かりました……
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