季節の番外編 ハッピーハロウィン

「ハロウィンって知ってる?」



 こっちの世界には季節はないんだけど、一日は二十四時間で、三十日間で十二の月が巡る。

 十回目の月末の、なんとなくハロウィンを思い出した私は少し切なくなった。

 私が死んだのは九月の半ばくらいだったから。


 コロナで大変なのは変わらなかっただろうから、きっとひっそりとしたハロウィンになったのではないかと思う。

 私は別に仮装したりはしなかったけど、ソシャゲでハロウィンイベントが来たりとか、ハロウィンのモチーフは結構好きだった。


 私はみんなにハロウィンの説明をしながら、パプンカボチャっぽいやつに目と口を彫る。

 それからみんなを見回して、笑って言った。



「食べたことない食べ物くれないとイタズラしちゃうぞー!」


「ほら、見たことない草」


「雑か! 食べるけど! もしゃもしゃ!」


「えっ、草でいいの!?」


「もうダメ! 他の人の真似しないで!」


「えー! でもフローリア様、もう王都で食べられる物はだいたい食べたでしょ?」


「まぁね」


「無理じゃないか! イタズラは嫌だよ!」


「ははは! さぁ、食べたことない食べ物くれないとイタズラしちゃうぞー!」


『フローリア、これは食べたことある?』



 はんぎょさんを嵌めてからコーリリアが差し出して来たのは、高級素材のカムリの根だった。

 私は嬉々として泥を洗い流し、ぼりぼりと齧る。

 うぉぉぇぇ……ゴボウよりめっちゃくちゃ渋い!



「これは食べ物じゃないね……でもありがとう! 貴重な素材を!」


『どういたしまして!』


「あ、待ってオレ、これ、自分の腕を差し出すべきか?」


「ダメであります! 腕を差し出すのはボクであります!」


「なんでここにいるの!? あとホックくんの腕はいらないよ!?」


「オレの腕はいるみたいな言い方やめて!!!!」


「フローリア様が楽しそうなことをしていらっしゃる時は、必ず見守らせていただいているであります!」



 このレベルアップしまくりストーカーはどうしたらいいのかな!??!!?



「コーリリア、お菓子を買いに行こう」


『それがいいね』



 そろそろ私は学ぶべきである。

 滅多なことは言うもんじゃないと。



 ハッピーハロウィン!

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