珈琲中毒

もこぐらし

珈琲中毒

毒にあたった。


不慮の事故ではなく、確実に避けることができる事故だった。どうして同じ後悔ばかりを繰り返しているのだろう。

頭の奥から鳴り響く不協和音。腹の底から込み上げる悪心。

見慣れたはずの駅のホームなのに、妙に光のコントラストが激しくて不自然に感じる。


「珈琲飲めないんです。」

たった11文字。この一言がどうしても言えない。


相手を傷つけないための嘘なのか、

自分を守るための嘘なのか、

それも分からない。

どちらにしても不毛な命題だ。


ただ私はこの先も何の罪もない珈琲豆を憎み続けるのだろう。


晩蝉が鳴いている。

冬の気配が、すぐそこまで迫っていた。

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珈琲中毒 もこぐらし @mokogurashi

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