第45話 音を立てて、動き出す②
一通り練習を終える頃には、ポーションはすっかり良い頃合いだ。
魔石の実験の間大人しくこっそり見守っていてくれた精霊さんも、ようやくポーションの方へ手をつけようとしている僕を見てそわそわしている。
「かんてい?たべる?」
「お外呼んできます?」
「そわそわ」
「そわそわそわ」
冷めるのを現場で待つ隊の精霊さんが、外で待つ隊の精霊さんを呼びに行った。
ビュン、とすごい速さで飛んで行ったので、余程待ちくたびれていたようだ。
その間に作ったものを鑑定してしまう。
体力回復ポーション
品質 C
普通に体力が回復するポーション
フルーツサンド味
体力回復ポーション
品質 C
普通に体力が回復するポーション
豆腐とほうれん草のお味噌汁味
魔力回復ポーション
品質 C
普通に魔力が回復するポーション
たっぷり!桃ゼリー味
魔力回復ポーション
品質 C
普通に魔力が回復するポーション
さわやか林檎ゼリー味
うん、ちゃんと出来てる。
後は一応、試飲だ。
まずはフルーツサンド味から。
これは耳を切った食パンに生クリームとフルーツを挟んだだけのものだ。あるもので作ったから、入れたものはイチゴ、桃、バナナというちょっと変わり種だけど、甘さ控えめな生クリームの量が多めだから、良い感じだ。
もうすぐシャインマスカットが出来るって言っていたから今度はそれを挟んでもいいし、イチゴだけにしてイチゴサンドにするのも良いかもしれない。
フルーツサンドには使わなかったパンの耳は、砂糖をまぶして揚げて、別途おやつとして食べた。あれ、単純だけどすごく美味しいよね。
次は豆腐とほうれん草のお味噌汁味。
大根と人参のお味噌汁に続く第二弾だ。温かくて、実にほっとする味。
飲みやすいし、お味噌汁はやっぱり良いな。
たっぷり!桃ゼリー味と、さわやか林檎ゼリー味は言わずもがな。精霊さんが丹精込めて育てたものをふんだんに使っているのだから、とても美味しい。
桃ゼリーの方は大きめに切った桃が、林檎ゼリーの方には小さく切った林檎を多めに入れて、ゼリーを固めて作ったものだ。だから味は勿論のこと、食感も楽しめるはず。
「完成したとききましてー!」
「たべたいよお」
「まちきれないのがまんした」
「くーふくなのよ」
「たべたぁい!」
ちょうど、精霊さんが戻ってきた。ノヴァ様も一緒だ。
「お待たせしました。四種類ありますけど、どれにします?」
精霊さんの分はすぐに足りなくなるので、小さいコップにさくさく注いでいく。どれも減るから、まあいいのだ。
ノヴァ様は聞いてから注がないと、コップの数が少ないしね。
「オレはまずは味噌汁だな。お前たちも好きに食べると良い」
「わーい!」
「どれにするかなやましー」
「ぼくももー」
「ももがいい」
「さんど、さんど」
「りんごのやつー」
「精霊王さまとおんなじー」
「迷うよう」
「りんごー」
ノヴァ様のお味噌汁味をコップに注いで渡す。
それから精霊さんの分を再びどんどん注いでいく。精霊さんはみんな同じコップだからね。各々好きな味を持っていっている。
同じ味を何回もおかわりする精霊さんもいれば、次々違う味にいく精霊さんがいたり、噛みしめるように一つの味をじっくり味わう精霊さんがいたりと、本当に個性豊かだ。
「そういえば〜」
「またお礼入れてたよ!」
「もらってね」
精霊さんが指差した方を見ると、薬草を入れていたカゴがまた山盛りになっていた。
品質Aのポーションを少し前に作った時に結構使ったんだけど、また随分持ってきてくれたようだ。
「ありがとう、精霊さん」
「こちらこそなのー」
「いつもありがとう」
「いつもおいしいの!」
「またもってくるね」
これはまた、美味しいポーションを頑張って作らないとなあ。
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