第44話 音を立てて、動き出す①
魔石に関する情報は、あまりない。
というのも、鑑定をしても『ゴブリンの魔石』とか、『魔猪の魔石』とか、それしか出てこないのだ。
同じゴブリンから出てきた魔石でも大きさはばらつきがあるし、色は大体は似た感じだけど濃淡はやっぱりバラバラ。そのどれを鑑定しても、『ゴブリンの魔石』としか出てこない。
以前魔石を売っているお店で鑑定をした時は、ゴブリンの魔石のようにどこから出てきた魔石かの他に、何の魔法が入っているのか鑑定で出てきたものもあった。
だからこのとれたての魔石は色や形はバラバラでも、すべて空の状態なんじゃないかと思う。
それにしてもどの魔法が入るのかとか、どのくらい入るのかとか、そういう情報はとにかく出てこない。やっぱり実験してみないことには、何ともならないなあ。
ということを、すっかりルーティーン化したポーション作りをしながら考えていた。
精霊さんが作ってくれた果物が美味しすぎて、昨夜や今朝にゼリーやらフルーツサンドやらを作って。その勢いのまま、それらをポーション化している。その他のものもついでに。
やっぱり好きな時にぱっと食べたいしね。それに領主様邸にも毎月結構な数を納品するから、作っておいて損はない。
それにしても、ものすごく良い匂いがする。
精霊さんには最初に、魔石に魔法を入れる練習をするからポーションはその間に自然に冷ますよー、と伝えてある。
その為、冷めるのを現場で待つ隊と、匂いに我慢が出来ないから外で待つ隊にわかれたようだった。
ちなみにノヴァ様は後者で、庭で果物を食べながらのんびり待つらしい。ノヴァ様に関しては朝も普通にフルーツサンドとかを食べていたけど、相変わらずよく食べる。
さてと。ポーション作りはあと冷めるのを待つだけだし、魔石の方の実験をしよう。
色々不安な部分は多いけど、安価で手に入ったようなものだ。遠慮なくやろう。
昨日水魔法で魔石を作った時は、水色の魔石だった。それを鑑定した時は、
月立壱弦の魔石
水魔法
と、これだけの情報しかなかった。
ただ作った時点でもう魔石に魔法は入っている、ということはわかった。水球を作って凝縮したものだけど、中に入っている魔法は水魔法、というざっくりした表記になっている。好きな時に好きな分、水を出せるという地味に便利な魔法入りの魔石だった。
そして僕の魔力と魔法で作ったからか、何故か名前入り。これに関しては恥ずかしいから、誰にも鑑定されないことを願っている。
これを踏まえて。水魔法が水っぽい色の魔石になるのなら、似た色の魔石の方が相性は良さそうだ。
手元に多くあるゴブリンの魔石は、緑色や茶色が多い。ほとんどはくすんだ緑色のような色合いで、その中に茶色がかったものもある、といった感じ。色だけで考えるなら、風とか土系統の魔法と相性が良いだろうか。
まずは実験がてら、緑色の魔石に水魔法を入れようとしてみる。
魔石を手のひらに乗せて、そこに水球の魔法を入れるイメージ。自分の体内にある魔力が、動いているのがわかる。
結果、魔石は割れた。見事に、真っ二つに。
元々小さな魔石だったから、これはもう使い物にならないんじゃないかな。鑑定すると『ゴブリンの魔石』とは出てくるけど。
試しにこの割れた魔石の中に、風魔法を入れるイメージをしてみる。けれど今度はすぐに粉々になった。
なんてことだ……。
次は先ほど粉々になった魔石と同じような色合いの緑色の魔石に、風魔法をイメージしてみる。
乾燥させるような、風を出すイメージ。いつも薬草を乾燥させる時に使っているものと同じだから、扱いは慣れたものだ。
すると、くすんでいた魔石の色が少しだけ鮮やかになったように見える。
これはいけたのでは?
鑑定をしてみる。
ゴブリンの魔石
風魔法
入ってる。
ちゃんと魔石に、魔法を入れることが出来ている。
…………ちなみに、ちなみになんだけど、もっと魔法を注いだらどうなるのかな?
正直魔力も全然減った感じがしないし、ちょっとしか魔法が入っていないだろうから、この魔石の魔法は使ったらすぐになくなってしまいそうな気がする。
もっと長く使えるように、更に魔法を入れようとしてみる。
またもや見事な真っ二つだった。
割れた魔石は『ゴブリンの魔石』という内容だけに戻り、色も元のくすんだ緑に。
その割れた魔石に魔法を入れようとすると、やっぱり粉々になった。
案の定、それぞれの魔石によって魔法が入る容量が違うようだし、その魔石と魔法の相性も大切。
いやまあ魔石のお店を見た時にそうかなあとは思ったけど。でも実際にやってみないことにはね。
それにしても、これで魔法は僕でも魔石に入れることが出来るとはわかったけど、問題は結界魔法と相性の良い魔石と、それの容量だ。
結界魔法は光魔法だから、魔石なら無色透明、白、淡い黄色、とそんな感じだろうか。
手元にある魔石は緑や茶色、黒に赤……それに魔石のお店にも、無色透明と白と淡い黄色系統の魔石はあまりなかったと思う。
「やっぱり、入手をどうするかだよねー……」
とりあえず他の魔石で、色や大きさでどのくらいの魔法が入るのか、練習しておこう。
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