第42話 冒険に行こう⑤
魔物よけの香をママさんが焚いてくれて、広い場所でお昼休憩をとる。
パパさんママさんは携帯食とポーションで済ませるつもりのようだったから、朝家で作ってきたサンドイッチとおにぎりと味付きポーション、それからデザートにフルーツを出した。
ものすごく喜ばれて、僕も嬉しくなる。
おにぎりとかはほかほかだから、出先で食べると美味しいね。天気も良いし。
休憩ついでに、魔物から出てきた魔石をいくつか出して見てみる。
弱い魔物ということもあって、どれも小さくて色もあまり良くない。魔法が入る容量も少なそうなイメージだ。
ちゃんと鑑定をしたらわかるのかもしれないけど、一度鑑定をはじめたら気になって止まらなくなりそうだから、家に帰ってからまとめて鑑定しようと思う。
「やっぱり魔石って、結構強い魔物じゃないと上質なものは出ないんでしょうか?」
どれもこれも似た感じだったので、二人に聞いてみる。この森以外の場所にも二人は行っているから、違う魔物の魔石も知っているだろう。
「そうねえ。ここの魔物もそうだけど、簡単に倒せる魔物はどれもこんな感じの魔石ね」
「そうなんですね」
上質な魔石が高価なのには理由がある、ということだ。こんなに簡単に良い魔石が手に入るのなら、もっと安く売っているはずだ。
「イヅルは、結界の魔法が使えるんだったな」
「はい」
パパさんに言われて頷く。
「魔石が欲しいのはアイネの為か?」
「僕がそうしたいだけです」
だから正確には、アイネの為ではない。
アイネにどうにかしてほしいのだとは言われていない。ただ僕が勝手に、力になりたいだけだ。
「昔オレがあちこち旅してた時、聞いたことがある。魔石は作れると」
「え……作れる、ですか?」
それは人間が、ということだろうか。
「ああ。魔物から取るか、鉱山から取るかだけだとオレも思っていたんだがな。ただ、優秀な魔法使いでもついぞ作れなかったらしい」
「その、方法とかはわかりますか?」
「オレは魔力はからっきしだからな。とにかく魔力を一ヶ所に集中するとか何とか言ってたと思うが、そのくらいしか知らん」
「…………」
魔力を一ヶ所に集中する。
いや、でもただ集めただけではそのままだ。
例えば水の魔法だったら?
手のひらに水球を出す。集める。凝縮する……?水をギュッと、丸くなっている水をどんどん、次々。途切れることのないように水を出して、凝縮して、出して、また凝縮して。それを繰り返していく。
手のひらの水球はもごもごと動くだけで一見変化はないようだけど、魔法の放出を続けるとどんどん密度が高くなっているような感覚はする。
どのくらい、それを続けただろう。脂汗がすごいし、疲労感も半端ない。
——あ、出来たかもしれない。
ころん、と手のひらに落ちる感覚。
見ると、出し続けていた水球は消えて、薄い水色の石が手のひらに転がっていた。
その石の大きさは、この辺りの魔物から出てきた魔石と同じくらいに小さい。けど、なんていうんだろう。純度が高いような感じがする。
いやでも、とにかく……とにかく疲労感がすごい。貧血のような眩暈のような、ぐらぐらしてとてもしんどい。
「イヅル、魔力切れじゃねえか?魔力ポーションはあるか?」
ぜいぜい言ってたらパパさんが原因を教えてくれた。けれどそれに返事をする気力もない。
この途轍もない疲労感が魔力切れという状態なのだろうか。でも僕は魔力は相当多いはずだ。あれほどある魔力がなくなるなんてあるんだろうか。
とりあえず、自分のステータスを見てみる。
月立 壱弦 ツキタチ イヅル
十七歳 男
体力 120/145
魔力 21/15152
スキル 隠蔽∞
鑑定∞
全魔法∞
無詠唱∞
錬金術∞
弓A
運∞
固有スキル
精霊の愛し子
異世界人(全言語自動翻訳)
精霊の加護(みんなイヅルが大好きだよ!)
ものすごく魔力が減ってる!
いくら優秀な魔法使いでも作れないはずだよ。これだけの魔力を消費するなんて。
慌てて魔力ポーションを出して飲むと、体が徐々に楽になっていく。
なるほど。魔力が切れるとああなるのか。
魔力が0になった時なんかは、どのくらい具合が悪くなるのか考えたくないな。
これからは魔力の残量には気を付けよう。
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