第14話 思い立ったが吉日だよね①

 カリカリに焼いたトーストにバターを乗せるだけで、何故こんなにも美味しいのだろうか。

 朝食である。

 異世界に来る前、現代日本にいた頃は、朝食は母親が作ってくれていた。

 母さんがご飯を炊くのを忘れていた日以外は基本的に朝はご飯派だったから、一週間のうち五日ほどは朝はご飯を食べていた。ご飯を炊き忘れている残りの二日がパンだ。

 でもこちらに来て急に一人暮らしをすることになると、朝はパンが増えた。大体一週間のうちの半分くらいはパンを食べている。

 勿論ほかほかのご飯を朝からほくほくと食べたい気持ちは山々だけど、一人分のご飯を炊くというのも難しいもので。小型の炊飯器は家にはあるけど、つい手軽なパン食になってしまっている。

 誰かが作ってくれたご飯は美味しいんだな、としみじみ思う。

 それはそれとして、トーストはトーストで本当に美味しい。


 ちなみに僕が作るポーションはカ○リーメイトみたいなので、ポーションを飲んでいればもっと手軽に色んな味を食べれるしお腹もきちんと膨れるわけだけど、それだけではやっぱり味気ないから基本的にはちゃんと自炊している。

 でも忙しい時とか寝坊した朝とかは楽で良いと思う。だから家には色んな味のポーションをストックしておきたいところだ。


 ここ数日は更に追加でいくつかポーションを作ったり、精霊さんと遊んだりとのんびりしていたけれど、その間に少しだけ変化があった。

 見慣れたおじいちゃん騎士さんが家を訪ねてきて、監視期間はつつがなく終了したと教えてくれた。特に問題はなかったらしい。

 ただこれからも抜き打ちで様子を見たりすることはあるし、そのうち一度領主様との面談もあるそうだ。

 領主様は忙しい人みたいなので、いつ会うことになるかはまだ未定だけど。その辺りは決まり次第、連絡が来るらしい。

 僕が異世界人であることを知られているのかいないのかはわからないけど、とりあえず、こいつはやばい!って言われて捕まったり追い出されたりはしないみたいで良かった。

 この辺境の街は穏やかで住みやすいから、出来ればここでスローライフをしていたい。


 そういったわけで、一安心。

 結構作ったポーションを、この間行ったお店でまた買取をお願いしようとやってきた。アイネさん、パパさん、ママさんはお元気だろうか。まあ、一週間も経っていないしそこまで大きな変化はないだろうとは思うけど。

「こんにちは」

 中に入って声を掛ける。

「こんにちは」

 あれ?似てはいるけど、アイネさんの声じゃない。

 見ると、先日アイネさんがいた場所には十三、四歳くらいに見える女の子が座っていた。

 顔立ちがママさんそっくりの美少女で、少しつり目だ。髪色は見事な白金で、ポニーテールにしている。

 アイネさんの妹さんかな。

 ちゃんとご挨拶しておこう。

「はじめまして。イヅルといいます。先日こちらのお店でポーションを買い取ってもらえて、今日もお願いに来ました」

「ご丁寧にどうも。両親は今出掛けていて、姉はさぼってるんですよ。あたしは鑑定のスキル持ってないので、姉を呼んで来ても?」

「ええと、はい。大丈夫なら」

 目力の強い、はきはきと喋る子だなあ。つり目美少女……ツンデレ属性だろうか。

 それにしてもアイネさん、さぼりか。


 妹さんがアイネさんを呼びに行っている間に、テーブルにポーションを出しておく。

 先日に比べて今日は種類が多いから、一本ずつ出して置いておくことにする。

 追加で作ったりもしたけど、持ってきたのはすべて体力回復ポーションだ。全部同じ本数の方がわかりやすいかと思って、販売用のものは十本ずつ。

 品質Dで味のないものはいっぱい出来てしまったけど、とりあえず持ってくるのは十本だけにした。買い取ってくれるなら、今後分割して持ってくれば良いかなと。

 味がついたポーションはすべて品質C。味は五種類で、醤油ラーメン味、パンケーキのチョコレートソースがけ〜バナナを添えて〜味、本場アップルパイ味、ふかふかたまごサンド味、スパイス香るキーマカレーライス中辛味だ。

 このうち、醤油ラーメン味は販売用ではないから、五本しか持ってきていない。

 やっぱりこのテーブルには全部乗らないから、ひとまず一種類一本ずつ出しておくのが良いね。それにしてもすごく作ったな、ポーション。

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