第13話 実験と検証⑤

 出来上がったポーションは、すべて体力回復ポーションだ。

 結構試しながら作ったけど、味のつかなかったものもある。それに、醤油ラーメン味は売り物にはしない。

 その為、今日作った中で味付きのもので売り物になるのは、パンケーキのチョコレートソースがけ〜バナナを添えて〜味だけだ。

 たぶん味のないポーションも普通に効果はあるものだし、買い取ってもらえるとは思うけど。

「もう少し、味のあるものを作って持って行った方がいいかな?」

 アイネさんのことを思い出す。

 あの時はパンケーキのバター乗せ味のポーションだったけど、とてもお気に召したようだった。今度持って行くものがパンケーキの違う味だけ、というのも寂しい気がする。

 リクエストされたものは色々あったけど、味を鮮明に思い浮かべられるもの、となると限定されてくる。

 パンケーキのベリーソースがけのように、パンケーキ本体を想像することが出来ても、ソースが想像出来ないだけで普通の味なしポーションになってしまうから、その辺りの基準は結構シビアなのかもしれない。

 なんとなく作る前に、これは作れる、これは作れない、という直感のようなものはあるけど。今回試してみて、その感覚は間違っていないことも判明した。


「とりあえず、ママさんのリクエストのアップルパイはたぶんいける」

 薬草はお馴染みラチカ草で大丈夫そうだし、毎年青森に住む親戚がアップルパイとりんごジュースを送ってきてくれていたから。

 やっぱり本場、名産地のりんごは本当に美味しかった。アップルパイもりんご本来の味を活かした感じで、甘いけどしつこくなく、そしてパイ自体もサクサクで。あのよく食べていたアップルパイは、確か下はタルト生地になっていた。だから味は勿論のこと、食感も良くて飽きが来ない。ホールで出されても食べきれる勢いだ。

 うん、これは間違いなく作れる。


 あとは食事系のポーションもいくつか欲しい。

 ……今食べたいものでもいいかな。




 というわけで、アップルパイの他は某大手コンビニのたまごサンドと、某有名会社のレトルトキーマカレーを作った。

 たいへん美味だった。

 ちなみにすべて体力ポーションで作っている。

 鑑定による味の名前は『本場アップルパイ味』と『ふかふかたまごサンド味』と『スパイス香るキーマカレーライス中辛味』だった。

 どれも精霊さんには大好評で、もはや当たり前となった精霊王様献上品もきっちり確保され。大量のポーションを難なく抱えて、満足げに精霊さんたちは帰っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る