第12話 実験と検証④

 さてと、ついにやりますか。

 先日買ってきた薬草の中に、これは醤油ラーメン味いけるのでは?というものがいくつかあった。薬草を掛け合わせるにはまだまだ知識が足りないから、勿論単品で行う。

 手元にある薬草の中で体力ポーションを作るのに適しているものは、一つしかなかった。

「ええと、これだったかな」

 買う時には鑑定したけど、色々買ったからぱっと見ではどれだかわかりにくい。間違っていたら大変だから、ちゃんと鑑定をかける。




モリリモ草

品質 C

体力回復ポーションによく使われる薬草

気候の暖かい穏やかな地域によく自生している

少し香ばしい味がする為、そのまま料理に使われることも多い




「うん。ちょっと香ばしくて料理にも使う。これなら甘い薬草より、食事系ポーションに近いんじゃないかな」

 しかもなんと、品質はCだ。

 そのわりにお値段はお手頃価格というありがたさ。普通に料理にも使われるくらいだから、手に取りやすい価格なのかな。

 このモリリモ草も手順どおり、よく洗ってから乾燥、それから魔力を注いで煮詰める。

 醤油ラーメンの想像は余裕だ。もう食べたくてたまらないほど。あのお店の醤油ラーメン、本当に美味しかったんだよね。あの味をまた食べたい気持ちでいっぱいだ。


 十分に煮詰まったポーションをこす。

 香りは、うん。これはかなり良い感じなんじゃないかな。

 食欲をそそる香り。まさに醤油ラーメン。


「なんだかいいにおい」

「いままでとちがうやつ」

「おなかがすくやつ〜」

「ぐうぐうです」

「なあに?これなあに?」


 パンケーキ味のポーションに夢中になっていた精霊さんが、ふらふらと吸い寄せられるようにこちらに来た。

 甘いもの以外も、許容範囲なのかな?

「これはね、醤油ラーメン味……になっていればいいなあっていう体力ポーションだよ」


「ほう!」

「あたらしいあじ」

「まだみぬせかい」

「なんと……」

「それならさましてあげる!」

「よき香りです」

「まちどおしい」

「さめた、さめたよー」


「冷ましてくれてありがとう、精霊さん」

 正直、ものすごく出来上がりが気になっていて、なんならすぐに試飲したいくらいだから、ありがたい。自分で魔法で冷まそうかなとちょっと思ったほどだ。

 まずはしっかり、出来上がったポーションを鑑定する。




体力回復ポーション

品質 C

普通に体力が回復するポーション

醤油ラーメン味




「出来てる!」


「わー」

「できてる?できてる?」

「やったのー」

「さすが愛し子さま!」

「わくわく」

「どきどき」


 まずは一口、試飲してみる。

 一口目はスープの味だ。決して教えてはもらえなかったあの味。懐かしい味。レシピを知らなくてもはっきりイメージさえ出来れば作れるんだな。

 二口目は麺の食感。正確にはポーションを飲んでいるだけのはずなのに、何故かラーメンをしっかり啜って食べているかのような不思議な食感があった。

 これは……すごい……!

「精霊さん、さっきもちらっと話したけど、今回のは醤油ラーメン味になってるんだ。甘くないポーションだけど、試飲してみる?」


「たべるー!」

「もちのろんろんよ!」

「しょうゆ、しょうゆらーめん」

「たべたぁい」

「食べないという選択肢があるとでも?」

「あたらしいあじ」

「とっても良い香り」


 ノリノリだった。

 でも一応味の違いはさっくり伝えてから、取り分けてあげる。思っていた味と違うと、がっかりするかもしれないしね。

 これまでのお菓子の甘い香りとは違うポーションに、精霊さんも興味津々のようだ。かなりそわそわした様子で、みんなで試飲をはじめた。


「こ、これは!!」

「なんと」

「うまー!」

「このようなものがあるとは」

「パンケーキも好きだけど、こっちも好き」

「からだがぽかぽかする〜」


 良かった、お口に合ったようだ。

 しかし飲めば飲むほど思うけど、本当によく食べていたあの味そのままだ。レシピを知らなくても味の記憶さえ鮮明なら再現出来るってすごい。

 ラーメンのスープはそのお店にとって秘伝だ。スープは命、とも言うし。

 でもまあここ異世界だし、これはあくまでもポーションであってラーメンじゃないし、親戚がここにいるわけじゃないから、売る目的じゃなくて僕が個人的に楽しむ為に作るくらいなら、親戚も許してくれるかな。

 あと、パパさんには差し上げたいけど。

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