第11話 実験と検証③

 まずは一つめ。唯一成功したのではと思えたポーションを鑑定する。




体力回復ポーション

品質 C

普通に体力が回復するポーション

パンケーキのチョコレートソースがけ〜バナナを添えて〜味

(バナナのタイミングやチョコレートソースの量はお好みと任意)




「出来てる!」

 同じ薬草から違う味を作ることは可能のようだ。良かった。流石に薬草によって作れる味は一つだけ、っていう感じだったら、薬草探しだけで大変だしね。先日ラチカ草で作った二回目のポーションは、恐らく無意識のうちにパンケーキのバター乗せ味について想像していたから同じ味のものが出来た、ということだろう。

 それにしても、説明書きがちょっとお洒落っぽくなっているのは何でだろう。謎だ。

 試飲してみると、想像そのままの味。美味しい。

 精霊さんの分も取り分けてあげると、今まで大人しかったのが嘘のようにきゃあきゃあ騒ぎながら飛び回った。まさに狂喜乱舞。


「まってたー!」

「きゃー!」

「おいしそうな香り」

「うまい」

「ふっかふか〜」

「バターも良かったけどこちらもなかなかですな」

「まさにしこうのあじ」

「ありがとう……ありがとう……」


 精霊さんの喜びようはなんというかとても素直で、嬉しいなあと思う。

 美味しく出来て良かった。


 次、二つめのポーションの鑑定をしよう。

 味の想像があまり出来なかった、パンケーキのベリーソースがけの方だ。




体力回復ポーション

品質 D

少し体力が回復するポーション




「味がついてないし、品質も上がってない」

 同じ品質のラチカ草で作ったのに。味がつくと同時に品質も上がるのかな。

 でも品質Bの薬草で作った時はそのままの品質だったから、その辺りは使う薬草とかにもよるのかも。


 続けて、三つめも鑑定する。

 甘味のある薬草で、醤油ラーメン味を目指したものだ。これに関しては味の想像はばっちりだったけど……




体力回復ポーション

品質 D

少し体力が回復するポーション




「やっぱり薬草の元々の味とかけ離れたものは、どんなに想像しても作れなさそう」

 つまりこれまでのことをまとめると、同じ薬草から違う味のものは作れる。味の想像がきちんと出来ないものは作れない。味の想像が出来ても薬草本来の味とかけ離れたものは作れない。ということだ。

 醤油ラーメン味を作りたかったら、その味を作れそうな薬草でやればいい。

 うん、でも醤油ラーメン味だし、出来れば体力回復ポーションで作りたいな。食事系ポーションだしね。


 ちなみにこの世界に、薬草はたくさん種類がある。

 この世界から見た異世界、召喚された人や落ち人によって持ち込まれたハーブや野菜やらの他に、元々あった植物もあるしそれらも品種改良されたりしているから、それはもうすごい数だ。

 転移陣などの魔法のおかげで遠くの国からでも輸入は容易いから、本当に多種多様。

 だからこそ錬金術師たちは、いくつもの薬草を掛け合わせて、より効能のよいポーションを作る。大抵そのレシピは秘密とされている。

 僕みたいな初心者や副業でポーションを作っている人たちは失敗しないように一種類だけを煮詰めて作るけど、プロたちは自分だけのレシピを研究して作るのがセオリーなのだ。


 とにかく薬草には山ほど種類があって、掛け合わせてもポーションは作れる。

 つまり、たぶん、作れない味のポーションはない!

 あ、僕が想像出来るものに限るけど。


「ふふふふふ」

 にやにやが止まらない。

 例えば作るのがとても大変な料理でも、ポーションなら手軽に作ってすぐ食べられる。出掛けていてもポーションさえ持ち歩けば、食べたいものを食べられる。

 控えめに申し上げなくても最高じゃないですか。


「愛し子さまたのしそーう」

「なによりですなあ」

「ぼくたちもうれしい!」

「おかわりよろしい?」


「ありがとう。お店に持っていく分を先に瓶に詰めるから、残りは飲んでいいよ」

 とはいえ、精霊さんが興味津々なのは味付きポーションだけだ。味なしの方には見向きもしない。

 そういえばいつだったか読んだ本とかでは、精霊は嘘をつけない、とか書いてあったりしたけど、それって実際どうなのかな。精霊さんはみんな言葉も態度もわかりやすいから、案外信憑性のあるものだったりするのかな。


「やったー!」

「わあい」

「ありがとう、そしてありがとう」

「愛し子さまだいすき!」

「ねえねえ、精霊王さまにも!」

「つめてつめてー」


「また精霊王様に持って行くんだね……」

 精霊さんはポーションじゃなくてその味が好きなようだから、持って行くのも味付きポーションの方だけだろう。

 精霊王様用に三本瓶に詰めて、お店に持って行く用に五本瓶に詰める。残りは精霊さんのおやつだ。


「あのね、あのね」

「お礼入れてたからね!」

「ありがとう」

「きゃー!」

「またもってくるね!」


 精霊さんが指差した方を見る。

 買ってきた薬草を入れていた籠の隣に、見覚えのない籠があった。そこには薬草がこんもりと入っている。

「こんなにいっぱい……ありがとう、精霊さん。お礼は気にしなくていいからね。作るの、全然手間じゃないから」


「ぼくたちがお礼したいのー!」

「おいしいものをありがとう」

「また次もたべたい!」

「という打算もあるのです」


 なるほど。精霊さんは、僕ならこの貰った薬草を使ってまた何か美味しいものを作ってくれると思っているのか。

 うんうん。精霊さん、したたかで可愛いなあ!

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